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第二話 勇者の秘密

日が昇り、その光でフロウは目を覚ました。

勇者はすでに起きており、先日言った町に向かう準備をしていた。

「おはようございます、フロウさん。よく眠れましたか?」と勇者は言う。

「ああ、まあな」と短い言葉だけを返す。

フロウは体を起こすと、周りを見渡した。

昨夜は暗さでよく見えなかったが、かなり奥の方まで平原が広がっており、周りには木があまりなく、動物たちが草を食べていた。

空には少し灰色っぽい雲が奥の方からこちらの方へ近づいていた。

「フロウさん、昨日預かっていたこれをお返しします。」と勇者はバックから短剣を取り出し、それをフロウに返した。

「そのまま預かっててもよかったのに。お前律儀だな。」

「いやいや、そんなことありません。そもそも仲間の武器を取り上げる方がおかしいです。」

(”仲間”....か)

「出かける前に一つ聞きたい。なぜ我を仲間に入れた?」

「それは、あなたが言ったからーー」

「違う、そういうことではない。なぜ、我を仲間だと思うのかと聞いている。」

フロウは間を開けず、話をつづけた。

「昨日も思っていたんだが、なぜ我の武器を預かっただけで安心して寝れる?ほかに武器を隠し持っていないか不安ではないのか?自分が殺されてしまう不安は一切なかったのか?」

尋問するかのようにフロウは勇者に問い詰めていく。

「そもそも、どうして一人で旅などしている?勇者となればいくらでもパーティーメンバーをそろえれたであろう!それなのになぜーー」

「フロウさん。」と言葉と同時に勇者がフロウに殺気を放つ。

まるで「黙ってろ」と言うかのように、戦った時のような殺気であった。

少しの沈黙の後に、勇者は言葉を発した。

「すみません、今聞かれたことについては後で話します。とりあえず雨が降りそうなので早く町に向かいましょう。」

空を見ると、先ほどまで奥にあった雲がフロウの頭上にまで来ていた。

「ああ、わかった。先を急ごう」

そういうと、二人は歩き始めた。少しだけ間隔をあけながら...



曇り空の下、二人は黙々と町に向けて歩き続けた。

会話は一切なくただ気まずい空気の中、町の入り口手前についた。

「フロウさん、いまから町に入ります。<変身魔法>で人間に化けてください。そのあと、ギルドでパーティー登録をするのでついてきてください。」

「ああ、わかった。」

すると、フロウは、衣類はいかにも冒険したての軽装で身長170cmぐらいの黒髪、短髪の男に化けた。

そして、緊張しながらも町の中へと入っていった。



町の中に入ると、いくつもの視線を感じた。が、すぐに自分への視線ではなく、勇者への視線であることに気が付いた。ただ、その視線はあこがれや尊敬などからくる視線ではなく、まるで不気味なものを見るかのような視線であった。

そのことは無視して、勇者は冒険者ギルドへと向かった。

ギルドの入り口につくと、中から少しにぎわった声が聞こえた。

(ここが”ギルド”か...たしか冒険者の組合所で、冒険者が人の依頼を受注・達成報告をし、金銭をうけとるとこだったな)

「ではフロウさん、入りますよ。あ、入る前に言っておきます。ここでのもめごとは面倒ですから何があっても黙ってついてきてください。」

「待て。どういうーー」

フロウが何か問いかける前に、勇者は冒険者ギルドのドアを開けた。

ドアを開け、全員がこちらを見た後、さっきまでにぎわっていた声が一気に静まり返る。

「おい。シオンが来たぞ。」「あいつ、よくここに来れたな。」「まあ、勇者様様なんだから魔王を倒すために金が必要なんだろ。金なんてたくさん持ってるに違いないのにな」

ギルド内にいる冒険者たちからこそこそと話をされている。

それを無視して、シオンは受付へと向かう。フロウはドア付近から動くことができなかった。

「すまない、あそこにいる者をパーティーに加えたいのだが」

シオンは受付係にそういうと、受付係はだるそうに答えた。

まるであまり関わりたくないかのように。

「はいはい、パーティー登録ですね。この紙に記入してくださーい。」

そういうと、受付係は紙とペンをシオンに放り投げるかのように渡した。

(なぜだ、勇者とはみんなのあこがれではないのか?なぜあんなにも嫌われている?奴が何かしたというのか?)

そう思って立ち尽くしていると、一人の男がフロウに話しかけてきた。

「おい、あんた。勇者のパーティーメンバーになろうとしているのか?」

話しかけられた瞬間、魔物だと気付かれたのかとフロウは警戒した。

(がどうやら、我が魔物だと気付かないようだ。とりあえず黙っているとなにか疑われそうだな)

「ああ、そうだが。それがどうした?」

「それならやめといたほうがいいぜ、なんたってあいつはーー」

とその時、

「ここにあなたの名前を書かないといけないので書いてください。」

と勇者がペンと紙をもって、いつの間にかフロウの近くにいた。声には少しだけ怒りが含まれていたような気がした。

話しかけた男もその声に臆し、その場から少し離れた。

周りの人たちもその声で、こそこそ話していた会話をやめた。

「あ、ああ。名前を書こう」

フロウは少し震えた手で名前を書き込んだ。

その紙を勇者に渡すと、勇者は受付係に紙を渡し、ギルドの外へと出た。

フロウも連れられるかのように、ギルドの外へと出ていった。



「フロウさん。もう遅いですし宿に1泊しましょう」

そういうと、二人はすぐに宿へ向かい二つのベットがある1室を借りることになった。

部屋に入る前に飯屋で軽く食事を済ませ、あとは部屋に戻り寝るだけだった。

フロウは部屋に入るまでずっと考えていた。

なぜあんなに嫌われているのか。我に会う前に何があったのか。

だけど答えが出ないままであった。

部屋に入ると、フロウは変身を解いた。紳士のような黒と赤の服に身長170cm、銀髪、短髪へと戻った。

そして、勇者に話しかけた。

「なあ、我の質問にあとで答えるといったな?」

「はい、そうですね。」

勇者は答える。

「では今から質問したら答えてくれるか?」

「........]

「無理に答えろとは言わない。答える気になったら教えてくれ。」

「.......はい。」

そういうと、沈黙が続いた。

沈黙から5分くらいして勇者は言葉を発した。

「......今なら質問に答えることができます。ただ、僕は真実しか言いません。一切のウソはないです」

覚悟が決まったかのような顔でフロウに言った。

「わかった。では質問だ。まず、なぜ我を仲間にした?」

「.....僕のあるスキルでパーティーメンバーが必要なんです」

「あるスキル?」

「そう、そのスキルとは<不死身>というもので、パーティーメンバーが死亡状態でないとき、自分が死んでも10秒後には復活するというものなんです。」

「なるほど、だから我をパーティーメンバーに加えたかったのか」

「.......そういうことです。」

「では、次の質問だ。なぜ、人をパーティーメンバーに加えない?いや、正しくはなぜ”新しく”人をパーティーメンバーに加えない?」

そのとたん、勇者は度肝を抜かれたような顔をした。

「......なんで前にパーティーメンバーがいたことを知っているんですか?」

「あくまで予測だ。まず最初にダンジョンであった時のことだ。あの時、お前は『”今は”一人で旅をしている』と言ったな。まずそこで引っかかった。まるで昔はパーティーを組んでいたみたいな言い方でな。」

「........」

「次に、お前にスープを作ってもらった時のことだ。そうだ、お前は今レベルはいくつだ?」

「......57レべです」

「そうだ、57レベで一人旅をしているには、料理が下手すぎる。前までは他のメンバーが料理を任せていたのだろう。」

「でも、それだけでは確証がありませんよね。」

「ああ、その通りだ。だが、決定的なものがあった。」

「決定的なもの.......?」

「それが、料理の時の容器の数だ。なぜ一人旅なのに我の分の容器もあった?」

「あ.......」

「そういうことだ。一人で旅をしているには、矛盾が多すぎたんだ。だから、我はパーティーを組んでいた時期があったと判断した。」

言い当てられ、観念したかのように勇者は話し始めた。

「......さすがですね。そうです私にはパーティーを組んでいる仲間がいました。」

「....そのメンバーはどうした?」

「殺されたんです。何者かに」

「.......」

「あるダンジョンを攻略した後、僕は一度その何者かに殺されました。意識が薄れていく中で、仲間がその何者かと戦っているのを見たんです。そしてスキルの<不死身>で生き返った後、仲間が倒れているのを見ました。近寄ってみると、ほぼ死にかけで、意識が少しだけある状態でした。」

「そうか、意識だけ残しておいてくれたのか...」

「そういうことです。早く楽になりたいはずなのにっ.......!意識を保つのも苦しいはずなのに....!ぼ、僕なんかのために10秒、、、”10秒”も意識を保ってくれたんです!」

ぽつぽつと涙をこぼしながらシオンは答えた。

「......結局、生き残ったのは僕だけでした。殺した犯人はわからないままです。」

「.......」

「そこからなんです。こんな目を向けられるようになったのは。殺した犯人なんていなかったんじゃないかって。賞金や持ち帰った宝に目がくらんで仲間を殺したんじゃないかって。そんな噂が王都中、いや世界中に広まりました。」

(なるほど、だからーー)

「そんな噂が流れると、パーティーを組んでくれる人がいなくなったんです。だから一人で犯人を捕まえてやろうと、でも犯人捜しを続けていくうちに資金も底をついちゃって...」

「そこで我のダンジョンを攻略しに来たのか」

「そういうことです。......あなたを利用しようとしたことは謝ります。すみませんでした。」

シオンは深々と頭を下げた。そして、頭を上げまっすぐとこちらを見ながら話した。

「そして、どうか力を貸していただけないでしょうか。僕は仲間の仇がとりたいんです。それができずに死ぬわけにはいきません。失礼なのはわかっています。それでもどうか....」

「.......少し、いや一晩考えさせてくれ」

「......わかりました。ではそろそろ僕は寝ますので」

そう言うと、シオンは眠りについた。

空はまだ雲が覆っていたーーー。














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