第一話 勇者と魔族
初投稿になります。ハクと申します。
投稿ペースは3日に一話を目安に頑張っていきます。
都合上、遅れたりする可能性があるので、ご理解していただけるとありがたいです。
我が名は「フロウ」 長年吸血鬼一族として生きてきた。
ダンジョンのボスになってからは、何年もの間一人で我がダンジョンを守ってきた。
が、その努力が今、全て水の泡になった。
「え、なぜか?」って?この状況を見ればわかる。だって今我は勇者に剣を突き立てられているのだから。。。
「おい。お前がこのダンジョンのボスだな」とのど元に剣を突き立てて勇者は言う。
勇者は全身身軽な格好をしており、「聖剣」というものを携えていた。
その剣をみると、フロウはその者が一目で「勇者」であるということが分かった。
「ま、待てっ!!わ、我とパーティーを組んでみないか?殺さないのであれば、仲間になって荷物持ちでも盾代わりでも何でもやろう。」
と苦し紛れに言ってみた。が、フロウは内心無駄だとわかっていた。
勇者と戦ったものの、圧倒的な差があった。
いや、ほぼ戦いとはいえるようなものではなかった。
こちらの一つ一つの攻撃をまるで一度見たかのように攻撃をよけていた。
今の我にはもう戦う体力はない。それにダンジョンのボスの経験値ほどおいしいものはないだろう。
「よし、それならーーー」と勇者が言うと、フロウは目をつむり覚悟をした。
と次の瞬間、勇者はありえない言葉を発した。
「その条件を飲もう。僕の仲間になれ。」
「えっ?」 唖然とした。こいつの言葉が一瞬理解できなかった。
だが、勇者は口調を変え、淡々と言葉を続けた。
「まず自己紹介をしないと、、、ですね。私の名はシオン。
勇者に選ばれ、魔王を倒すべく旅を続けてーー」
「いやいや、ちょっと待てよ。我は魔族だぞ。仲間にして何の意味がある。」
「あなたが言ったんじゃないか。パーティーに加えろって」
「いや、そうなのだがーーー」
「だが、いいのか?お前が許してもお前の仲間が我を仲間に加えることに反対するかもしれんぞ。」
「ーーああ、それなら大丈夫です。私は今はパーティーを組んでいませんから。」と勇者は言った。
「それならいいのだが、しかしーーー」とここでフロウは考えた。
(魔族を仲間にして戦うパーティーがどこにおるというのだ。前代未聞だぞ)
(こいつ本気で我を仲間に加える気なのか。それとも油断させてから我を殺す気なのか?いや、それならば今殺しておいた方がいいに決まっている。)
(魔族をパーティーに加えたことが他の人にバレれば、我だけでなく勇者もろとも何かしらの罰、いやあるいは死刑の可能性だってあるというのに)
(だが、好都合だ。殺されないで済むし、何よりーーー)
「よし、分かった。我が名は「フロウ」だ。勇者の仲間として何でもやろう。」
そう言うと、フロウは勇者の仲間に加わった。
「では、戦いで疲れているので、まずこのダンジョンを出て、
食事でもしながら話をしませんか?」と勇者は言う。
「あ、ああ。そうしよう。」
そう言うと、二人は少し間隔をあけながらダンジョンの外へと向かった。
外に出ると、まっさらな平原が広がっていた。
外は少し寒く、空にはいくつもの星が輝いていた。
「この景色を見たのも久々だな。」とフロウは呟いた。
「ではフロウさん、今から料理をするので少しの間待っていてください」
勇者はいつの間にか集めていた薪に魔法で火を付けながら言った。
容器に水を入れお湯になった後、小さいバックからいくつか野菜を取り出し、
それを剣を使って空中でさばき、容器の中にいれた。
そして、塩を加え、少しの間待ってから別の容器に分けた。
「フロウさん。これをどうぞ」
「えっ?今日のご飯はもしかしてこれなのか?」
「はい、そうですけど。もしかして野菜ダメでした?」
「いや、そういう問題ではーーー。まあ、作ってくれたからには文句言えんな」
とスープみたいなものをすする。だが、味はあまりしなかった。
(本当にこれが一人で旅を続ける勇者の料理なのか?)と疑いたくなるほどだった。
「ところで、一つお聞きしたいのですが。」と勇者は言う。
「なんだ。」とスープを食べながら答える。
「あなたは先ほどの戦闘中、一度も魔法を使いませんでしたよね。なぜあそこまで
追い詰められてもなお、魔法を使わなかったのですか?」
「戦闘で使えるような魔法じゃなかったんだよ」
「それって、一体どんな魔法なんでしょうか?」と問い詰めるように聞く。
ここで正直に言おうかどうか迷った。だがもし嘘をついて殺されてしまっては元も子もない。
そう考えるとフロウは正直に言った。
「我は二つの魔法が使える。
一つは<隷属魔法>。これは普通、相手の体を操れる魔法なのだが、我はレベルが足りておらず、相手の感情程度しか操れない。
もう一つは<変身魔法>。これは言葉の通り、変身できる魔法だ。だが条件があって、大きかったり細かかったりするほど、魔力を使わなくてはいけない。」
「なるほど。でもそれならば<隷属魔法>を使えば、相手の意思を失わせて戦うことを避けれたのでは?」
「いや、この<隷属魔法>にも条件があってな、相手の心が乱れているときにしか使えない。」
「だから一切魔法を使わなかったのですね。」
「ああ、そうだ。しかも<隷属魔法>は一定時間しか保てない。長く保てば保つほど魔力を消費してしまうからな。」
「なかなか使いどころが難しい魔法ですね。」
「ああ。お前はどうなのだ。」とフロウはスープを飲み干してから言う。
勇者は少し貯めてから言葉を発した。
「私は<光魔法>と<火魔法>が使えます。そして、今携えている聖剣は特殊で、魔法を付与することができるんです。」
(それだけの魔法と武器、そしてレベルの高さを持っていながら、なぜ我を仲間にしたのだろう)
と不思議に思った。が、特に何も言及はしなかった。
「すごいな。羨ましい。それだけの魔法と武器があればすぐに仲間だって集まるだろうな。」と少し含みを持たせてから言った。
そのとき、夜の暗さのせいか勇者の顔は少し暗そうに見えた。
「では明日は朝から王都へ向かおうと思いますので、お話はここら辺までにしておきましょう」
そう言うと、勇者は容器を片付け始めた。
「待て。王都だと?」
「はい。食料が尽きそうなので買いに行くのと、後はダンジョンの攻略結果を
王様に伝えに行くためにーーー」
「いや、そうではなく魔物が王都にどうやってはいるのだ?」
「あっーーー」とここで言葉が詰まる。同時に容器を片付けていた手も止まる。
「へ、変身魔法でどうにかなりません??」
「待て待て、変身魔法でどうにかなるものなのか?王都というのはそんなに警備があまいものなのか?」
「そしたらこうしましょう。まず王都による途中に小さな町があります。そこでパーティーメンバーの登録を済ませましょう。そこで、身分証の代わりとなる証明書が発行されるので、それを手に入れてから、王都に向かいましょう。小さな町ですから、王都ほど怪しまれることなく、メンバー登録ができますので。」
フロウは少し考えてから
「わかった。それでいこう」といった。
「では、また明日の朝にまた詳しく話そうと思います。」というと、シオンは寝る準備をした。
「あ、寝る前にあなたが持っている武器を預かってもよろしいですか?」
「あ、ああ。問題ない。」
そういうと、フロウは短剣を一つ勇者に渡した。
「ありがとうございます。ではこちらで預かりますね」
そういうと、シオンはバックに短剣をしまった。
その後、シオンはバックを近くに置いた状態で眠りについた。
勇者シオンが眠りについてからも、フロウは眠りにつけなかった。
いや、正しくは眠ろうとしなかった。
勇者がそばにいる状態で眠ることにフロウは不安を感じて仕方がなかった。
フロウは体を起こし、勇者の方を見つめた。
(こやつは、本当に眠っているのか?すぐ近くには魔物である我が近くにいるというのに...。)
(もしかして、本当は起きているのではないか?寝たふりではないのか?)
そう思うと、フロウは勇者に近づき、勇者をじっくりと観察した。
(一定の呼吸を繰り返している。寝たふりとは思えないほど寝息もゆったりとしている。これは寝ているな)
(しかし、なぜこやつはこんなにもぐっすり寝ていられるのか。我が殺さないと確信しているのか?)
いろいろ考え、フロウは腰に隠していた短剣を取り出した。
(こやつをここで殺せば我は自由になれる)
そう思い、短剣を振り下ろそうとした。
ここで昔フロウは言われた事を思い出した。
「ーーーいつか人と魔物が分かり合えたらいいなーーー」
フロウは勇者の喉元で手を止め、静かに短剣をしまった。
そして、何事もなかったかのように眠りについた。