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勇者&盾役vs謎の魔物軍勢


意気揚々とスタンピートを鎮めに来たまでは良かった。

……だが、これは完全に想定外だ。

もはや、ファクスの視線を逸らしたところでどうこうできる数では無い。



「多いとは思っていたが……ここまでとは」



「ふん、あんなの俺が全部止めてやる! ……アーサー、俺が食い止めてる間に援軍呼んでこい」



「その間にお前は死ぬだろうが。見殺しにはできねぇよ」



こいつは俺の実力を知らない。

だからこそ、身を挺して俺だけでも逃がそうとする。

ファクスは、そういう奴だ。



「安心しろ、お前たちは少し先を行くだけだ。皆平等に死ぬ。人間は今日で終わるんだよ!」



「……終わらねぇよ。お前は誰だ」



「俺を前にしてその余裕か。ハッタリか、それとも……いや、そうか。そっちに勇者を超える戦力が控えていることは掴んでいる。今の問答も時間稼ぎのつもりか」



「俺を超える戦力? 何のことだ?」



「俺、だと? ……そうか、お前が今代か。魔力に違和感を感じるとは思ったが。おい、お前たち!」



「はっ。【石化光線】!」


「【岩の拳】!」


「【氷塊落とし】!」


「【闇鍋レーザー】!」 



……いつの間にか、包囲されていたのか。

全方位からの遠距離攻撃。

……こいつら、そこそこやるな。

主犯格の魔族を筆頭に、数匹「Bランク冒険者アーサー」の実力を明らかに上回る魔物がいる。

少なくとも「Bランク冒険者アーサー」ではこの集中砲火を止めることができない。

隠すのもここまでか?


……いや、ファクスならまだいける。

これが勘の鋭い女性陣なら終わっていたかもしれんな。



「うおおぉぉ! 【スラッシュ】!」



かなり威力を強めた初級剣技。

こんな技を普段から使っていたら、Bランクであることをたちまち疑われてしまうだろうな。



「ファクス! 怯えるな、今の攻撃は幻覚魔法だ!」



「な……!? そ、そうか。どうりで。確かにそれならBランクのお前が止められてもおかしくねぇ」



「そうだ。だからBランクの俺でも止められたんだ!」



ふぅ、危なかったぜ。

こいつが鈍感で良かった。



「……ならば、これはどうだ?」



「!?」



主犯格の魔族の大魔法か。

ここまでの威力だと「幻覚」じゃ誤魔化しようがない。

相殺した時に生じる爆音を説明できないからだ。


今度こそ終わったか。

……あー、もう、面倒になってきたな。

こいつらみんな細切れにして、憂さ晴らしといくか?



(そうするか。いくぜ、相棒!)



「輝け! エクスカリ……」

「うるせぇぇぇぇ! 邪魔ださっさと退け!」


「は?」



突然、体が傾く。

俺がファクスに突き飛ばされたと気付いた時には、ファクスは既に魔族の魔法の餌食になっていた。



「馬鹿野郎ォォォォォ!! 何やってんだお前ェェェェェェェェ!!」



永遠にも感じる攻撃が終わった。

……俺は、とんでもない過ちを犯してしまったのかもしれない。

勇者である俺は絶対に負けない。

確かに俺は無傷だ。

だが、その慢心が、一般人であるファクスを殺した。

何を、やっているんだ。



「……ほら、な。止められんだよ、俺なら」



「もういい、喋るな!」



かなり出血しているが、ファクスはかろうじて生きていた。

短時間で決着をつければ、こいつはまだ助かる。



「……待ってろ、すぐに終わらせる。5対1、ちょうどいいハンデだな」



「俺たちの後ろが見えないのか? まだ魔物の軍勢は大量に控えているぞ。俺たちの戦いに巻き込まれないよう、待機させているだけだ」



「加勢しないなら何の意味もない」



気持ちが昂る。

今すぐ、この魔族を殺したい。

仲間を傷つけられるということは、これほどやり切れない気持ちになるのか。


仲間?

……そうか。


俺はいつの間にか、あいつらを育成する対象ではなく、対等な「仲間」として認めていたんだな。



「魔力を喰え、エクスカリバー!」



いつもの倍以上。

もっとだ。もっと輝け!



「はぁぁぁぁぁ!」



「!?」



俺は一瞬で主犯格の魔族の元まで距離を詰め、剣を振るう。

魔族は咄嗟に首元に腕を上げた。


……いい判断だ。

首をぶった斬るつもりだったのだが。



「だが、腕一本は貰った!」



俺は剣の軌道を変え、関節に刃を突き立てる。

高位の魔族の体は鉱石のように硬く、まともに刃を立てても殆ど攻撃は通らない。

しかし、関節や急所となると話は別だ。



「がぁぁぁぁ!?」



「叫んでるヒマはねぇぞ!」



連撃に次ぐ連撃。

俺は着々と魔族を追い詰めていた。

俺がめぐるましく位置を変えるせいで、部下らしき魔族も下手に援護はできない。

……否、させない。

当然、俺は主犯格の魔族を味方の魔法の射線上に誘導しながら戦っているのだ。



「クソ! あの女だけじゃなく、お前も異常かよ!」



「あの女? 心当たりがねぇなぁ!」



「もういい! お前ら、俺ごとやれ!」



「なっ……!?」



横目で部下達が魔法の詠唱に入ったのが見えた。

……まずい。

もし広範囲魔法を撃たれたら、俺はともかく後ろで倒れているファクスが巻き添いを食らう。


後ろで……ん? いない?


ファクスの奴、どこいった???




「アーサー、ボーッとしないで! 【火柱】! 【雷柱】! 【光柱】!」



どこか聞き覚えのある声と共に、魔族達が強烈な魔法の餌食となった。

部下らしき魔物達は全員、もはや原型を留めていなかった。



状況が読めないな。

……一体、後ろで何が起こっているんだ?



ファクス、お前船降りろ(幻聴)

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