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19.ルーク、兄のたくらみを無自覚に粉砕してしまう。


 パーティーを組むことになったルークとルードはそのままダンジョンへと向かった。


「2人いれば、多少・・の無理はできるので、本当にありがたいです」


 ルークは無邪気にそう言った。


「ああ、そうだな」


 ルードは適当に相槌を打つ。

 しかし心の内では、どうやってルークを陥れてやろうかと機会を伺っていた。


 ダンジョンの中にはモンスターが大量に生息している。それゆえ、頻繁にモンスターと遭遇して戦う2人だったが、難なく倒していく。

 ルードも、戦闘力でルークには劣るとはいえ、聖騎士のクラスを授かっただけのことはあり、Cランクのモンスター相手に引けを取ることはなかった。


 そしてあっという間に第一層の端までたどり着いた。


 普通、ダンジョンの端には、次の階層へつながる階段などが設置されていることが多いが、今回は違った。

 代わりに、地面に大きな穴が開いている。これを通らなければ、次の階層に進むことはできなさそうだ。


「クエストの要件はモンスター30体の討伐だったよな」


 ルードが確認する。クエストを受注したのはルークで、ルードはその場に居合わせなかったので、クエストの詳細は知らなかった。


「はい、兄上」


「となると、今回はこの辺りで引き返してもよさそうだな」


 二人は既に20体以上のモンスターを倒していた。帰路で残りの10体ほどを倒してクエスト達成するのは容易に思えた。

 しかしルークには、まだ帰路に就く気などさらさらなかった。


「兄上、せっかくここまで来たのですから、下の階層まで行きませんか?」


 ルークがそう提案する。


「しかし、下の階層に行くと、しばらく帰ってこれないだろう」


 大穴はかなり深いように見えた。降りるのは可能だが、おそらく登るのは不可能だ。それゆえルードはこれ以上進むことにあまり乗り気ではなかった。

 ダンジョンである以上、必ず帰る道はあるが、これまで来たのと別のルートを行くとなると時間がかかるのは間違いない。


「大丈夫です兄上。記録によれば、第二階層からでも1時間ほどで外に戻ってこれるはずです」 


 このダンジョンは既に何人かの人間によって調査が行われている。それゆえ、ダンジョンの全容がある程度分かっていた。


「1時間くらいなら、来た道を帰るのとそう変わらないか……」


 ルードはしぶしぶルークの考えに従うことにした。



「では、行きましょう、兄上」


 そう言ってからルークは穴の中へと飛び込んだ。ルードも少し遅れてそれに従う。


 ――それが、ルードにとっての不幸の始まりだった。


 †


 しばらく二人は穴の中を落下していく。そして、地面へとたどり着く直前、二人を空気が包み込んだ。


 あっという間に減速し、ふわっと地面に着地する2人。


 ダンジョンの第2階層に足を踏み入れたのだ。


 そしてルードはすぐさま異常に気がつく。


「おい、なんか、体が痛いような……」 


 最初は気のせいかとも思ったが、すぐに痛みが強まって確信に変わった。


「いやいや、痛い痛い!!」


 ルードは痛みにもがき苦しむ。

 体がピキピキと痛む。


「兄上、このあたりには毒のガスが蔓延しています」


 ルークは、さらりとそんなことを言った。


「毒だと!?」


 ルードは必死の形相で確認する。


「このダンジョンの第2階層のモンスターたちは毒ガスを吐くんです。だからみんな

このダンジョンの攻略を嫌がってて」


「そんな大事なことを今さら!?」


 ルードは思わず声を上げる。

 そんなルードとは裏腹に、ルークはこの状況を楽しんでいた。


(これが毒の痛みか……モンスターに攻撃されるのとはまた少し違う痛みだ……)


 毒攻撃を受けると、結界が残っていても痛みを感じる。

 常に痛みを感じられるのだから、ルークにとってはご褒美以外の何者でもない。

 そして、ルークはそれによってルードも悦んでいるはずだとそう勘違いしていた。


――一緒に苦楽を共にしよう。


 ルードのその言葉で、ルークは兄が自分と同じタイプの人間なのだと思っていたのだ。


 だが言うまでもなく、それは勘違いであった。


「痛い痛い!!早くここを抜けよう!」


 ルードは痛みから逃れるように歩き始めた。


 様子を見てルークは、


「兄上、踏ん張っていきましょう!」 


 無邪気にそう言ったのだった。




 それから痛みに耐え続けながら、ダンジョンを進み、1時間後2人はようやく外に出てくることができた。


「……死ぬかと思った」


 ルードは、膝に手を突き、うつむきながらそうつぶやいた。


「充実したダンジョン攻略でしたね、兄上」


 ルークは満面の笑みを浮かべてそう言った。

 ルードは改めて、弟の異常さを思い知らされた。


(このドM野郎と一緒にいたら俺の身体がもたねえ!!)


 だが、ルークは兄が本気で苦しんでいるなどとはつゆ知らず、


「兄上、午後もまたダンジョンに潜りましょう!!」


 そんな提案をしてくる。

 その言葉を聞いて、ルードは飛び上がる。

 1も2もなく、


「わ、悪い。俺は用事を思い出しちまった」


 そう言い残して、全速力でその場から逃げ出したのだった。


「あ、兄上! どうされたんですか!?」


 ルークのその問いかけに、ルードが答えることはなかった。


 去っていく兄の背中を見て、ルークは呆然とする。


「急にどうしたんだろう??」


 ルークは、自分が無自覚に企みを潰していたなどとは思いもよらなかったのであった。


お読みいただきありがとうございます!


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本当に……本当に執筆の励みになります。


何卒、よろしくお願いします!

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