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18.苦楽をともに

 その日もルークはギルドに来てクエストを探していた。


「ルークさん、こちらのクエストはいかがですか」


 ルークはいつも受付のお姉さんに、なるべく難しいクエストをお願いしますと依頼していた。

 しかし、ルークでも手こずるようなBランク以上のクエストはそうそうない。


 したがって紹介されるのは大抵Cランク以下のクエストだ。


 ただ、今日のCランククエストは、いつもとは少し訳が違った。



「Cランクなんですけど……実は人気がなくて。だから報酬を倍増してるんですけど、それでも受けてくれる人がいない案件なんです」


 報酬が倍でもやりたがる人間がいないクエストとなれば、何かしの事情がある。

 それはルークが望むところだった。


「僕がやります!!」


 一も二もなく即答するルーク。


「ルークさんならそう言ってくださるんじゃないかと思ってました」


 お姉さんは満面の笑みを浮かべてクエストの説明を始めた。


「クエストは、とある鉱山ダンジョンにいるモンスターの討伐です」


 ダンジョンとは、時折発生する異世界空間の総称である。

 中ではモンスターが大量に跋扈し、その奥には極めて強力な「ボス」と呼ばれるモンスターがいる。


「今回のクエストでは、ダンジョンの中層にいるモンスターを30体ほど倒していただきたいのです」


「話を聞くとさほど難しそうには聞こえないのですが、なぜみんなクエストを受注したからないのですか」


「それが、ダンジョンの中層では毒の霧が蔓延してるんです」


 毒の霧は冒険者たちに最も嫌われるものの一つだ。

 毒の霧は冒険者たちの防御の要である結界では、防げないことが多い。

 毒の霧があると、結界がある状態でも、常に痛みを伴う。

 それゆえ、冒険者たちには嫌われているのである。


「おすすめは白魔道士のクラスを持つ人と一緒に攻略することですが、スプリングスティーン領では白魔道士は貴重ですから。すぐに見つかるかわかりませんが……」


 お姉さんは丁寧にもそう教えてくれるが、ルークは仲間を募集するつもりなどみじんもなかった。


「たぶん白魔導士がいなくても大丈夫です!!」


 ルークは満面の笑みを浮かべてそう言った。


 †


 ギルドの建物を出て、ダンジョンへと向かおうとしたルーク。

 だがそこで声をかけてきたものがいた。


「ルーク!」


 声の主はルードであった。


「兄上?」


 ルードは修行していた最中に突然いなくなった後である。

 ちょうど、ルークはお礼を言わなければと思っていたところであった。


「兄上、こないだは稽古をつけてくれてありがとうございました。おかげで新しいスキルを覚えることができました」


 ルークが無邪気に言うと、ルードは顔を引きつらせながら笑った。


「それはなによりだ……」


 ルードの中では苦い出来事だったので、その話はなるべくなら触れられたくないものだった。


「ところで、ルーク。実は一つお願いがあるんだ」


「お願い、ですか?」


「俺とパーティを組んでくれないか?」


 ルードの提案に、ルークは目を丸くする。


「兄上がパーティメンバーになってくれるなら百人力ですが……」


 ルークは、兄が実家を追放された自分のことを気にかけ、面倒を見てくれていると考えていた。

 実際、意図してのことかはおいておいて、ルークは兄のおかげでスキルに目覚め、今では立派にクエストをこなせるようになっていたからだ。


 だが、ルークは自分が兄に対して何もできていないことを気にかけていた。

 自分が得るばかりで、何も与えていないではないかと。そう考えていたのだ。


 だから、


「兄上がパーティメンバーになってくださるなら本当にうれしいのですが……しかしさすがに申し訳ないです」


 ルークは兄に対して、これ以上・・・・迷惑はかけられないと思っていたのだ。


 だが、ルードは跡取りとしての自分の地位を守るために、なんとしてもルークとパーティを組んで、ルークを陥れる必要があった。

 だから、必死に食らいつく。


「俺はお前とパーティが組みたいんだ」


「しかし……」


「ルーク、お前と、苦楽を共にして成長したい」


 ――と。

 ルードのその言葉に、ルークは背筋に電撃が走ったような錯覚に陥った。


「苦楽を……共に」


 苦しいこと――痛みを伴う戦い。


 それはルークが何より望んでいたことだ。

 それを理解してくれる人物が現れた。

 それはルークにとって、なにより


「そうか、兄上も……僕と一緒なんだね・・・・・・・・


 何やら得心した表情を浮かべるルーク。

 ルードからすると、口から出たでまかせの言葉だったのだが、なぜ弟の琴線に触れたのか理解はできなかった。

 だが、潮目が変わったことだけはわかった。


「兄上、ぜひ一緒にパーティを組みましょう」


「おう! 俺たちは今日からパーティメンバーだ!」


 シメシメと内心で笑みを浮かべるルード。


 それに対して、ルークもルードが仲間になったことを心から喜ぶ。


(……さて、どんなに苦しい戦いができるかな……?)


 …………兄は知らなかった。


 弟が真正のドMであることを――――


 †


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― 新着の感想 ―
[一言]  だが、ルードは跡取りとしての自分の地位を守るために、なんとしてもルークとパーティを組んで、ルードを陥れる必要があった。 ↑これだと弟と同じМになっちゃうと思うの。自身を陥れる変態な訳だか…
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