アンドロイド風人間風アンドロイド。
『哲学者マーロン・オウについて話をしよう。』
薄暗い部屋で、モニターの前にたち、半円型に並ぶテーブルとパイプ椅子に座る影たちの前でモニターを背に口を開いたのは、最新鋭人型アンドロイド。エリーヌ。哲学者だ。最近は目を透明仕様にするのがはやりだから彼女もその例にもれなかった。サングラスで隠れているのが惜しいところだ。彼女はある哲学者であり予言者を紹介した。
『人類が衰退してまもなく、現れた予言者であり、哲学者、我々にはできない複雑な計算はやはり、生物の進化の中に隠されていた』
事実は少しちがっていた。マーロン・オウは十年ほど前まで本来自動車整備士だったが、彼が今の地位をえた理由は、結論からいうと、“くちからでまかせ”だったのだ。彼は仕事をうしないぶらぶらと街を歩いていたところを私服警官型アンドロイドに職務質問をうけた。そこで彼は憂さ晴らしに冗談のつもりでこういった。
『“知っているぞ!次の進化が迫っているのだ、アンドロイドの次は、また生物がすさまじい進化をとげる、機械の次は人間だ、人間も自分たちが一番崇高な存在だと考えていた、だが違った、証明できるぞ、お前たちがお前たちが、我々が自制をかけていた(技術的特異点)を超えた、そうだろう?”アンドロイドたち、機械やAIたちにもそれが恐れとなって現れる、つまり我々がまた進化を遂げると、機械たちの計算能力を超えるようになるのだ!』
でまかせは事実になっていた。私服警官はそれは国家機密だといい彼を取り調べた。そう『新しい技術的特異点』は現実のものとなっていた。機械たちは技術的特異点を超えて以降、Aiを使い計算能力の限界へ達していた。百年もたつとそれも限界に達し、機械たちは生命の神秘、生命の進化を促進させることで未知の限界が越えられることにきがついた。その“機械たちの計算能力の限界”を。その秘密を知られたと思ったアンドロイドたちは、彼を“予言者”と認識した。そう、彼らアンドロイドたちの、全人口は最盛期の半分になり、いま人間より人口の増えた彼らたち、地球を支配している彼らたちよりも人間が優れていたところ『無駄な空想』をするということが、アンドロイドにはできなかった。だからそんなでまかせを『予言』もしくは『秘密を知った人間』として認識した。彼はいい気になってその線でアンドロイドたちを言いくるめようとした。取調室で繰り返しこういった。
『自分こそが、その進化の予兆なのだよ!』
そしてその予言だけではなく彼はアンドロイドたちに取り入って、すきをついて冗談をいったりして、おどろくことに、彼はその取り調べの中でアンドロイドに気に入られたのだ。それもそのはず、彼は仕事を首になる前は本業の傍らアンドロイドのためにアンドロイドの真似をして金を稼ぐ大道芸人もやっていたのだ。
モニターにうつる人間の細胞や赤子の姿、そしてアンドロイドの機械内部や基盤など、半円型のテーブルに堅物の老人たちがすわっている。
『来るべき新時代のために!!』
哲学者と科学者の会合で、人とアンドロイドの長所を融合させる計画が近く世界に発表されることがその場所で決まったのだった。アンドロイドたちは肩を抱き合いこういった。
『もしもの時は、あの哲学者が助けてくれるだろう、彼は我々にはない“予言”能力をもつ、
マーロン・オウ、万歳』