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スラッシュ/キーダー(能力者)田母神京子の選択  作者: 栗栖蛍
Episode4 京子【06関東編・陰謀】
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357 浩一郎のこと

 廃墟の中に忍が居ると言って、綾斗(あやと)が京子と二人で向かった。

 後を追う二人に付いて行きたかったが、美弦(みつる)は怪我を理由に止められてしまう。


 松本との戦闘で負った打撲(だぼく)が動くたびにギンと響いた。

 こうして立っている分には平気だが、再び戦闘となれば集中を欠いてしまうだろう。


 だから久志(ひさし)たちと外に居るよう言われて「分かりました」と答えるしかなかった。

 残ると割り切ると、今度は本部で溜め込んだ諸々の話が喉の奥から()い上がって来る。綾斗の九州行きの件もそうだが、今はやはり浩一郎の事だ。


 本人は彰人(あきひと)が気付いていないだろうと言っていたが、(かん)の良い彼が本当にそうだとは考えにくい。


 桃也(とうや)がマサと朱羽(あげは)にテントへ行くよう指示の電話をする横で、美弦は向かいに立つ彰人をそっと伺った。

 さっきの報告で省いてしまったその事実は、本来伝えるべき事だ。

 今話さなければ先に浩一郎がここへ到着してしまう──反応が少し怖い気もするが、美弦は意を決して「あの」と切り出した。


 「どうしたの?」と答える彰人と目が合うが、思わず続く言葉を飲み込んでしまう。


「えっと、あの──」

「言い(づら)い話なら、何となく想像は付いてるけど?」

「そうなんですか?」

「うん──まぁね」


 彰人は苦い顔をする。


「本部からの報告に、キーダーが4人居たって書いてあったでしょ? 美弦ちゃんと、大舎卿(だいしゃきょう)平野(ひらの)さん以外に誰が居るかって考えたら、想像したくない事ばかり浮かんで来るよね」

「────」

「僕の父親の事だよね?」

「彰人さん……」


 呆れ顔の彰人に真相を射貫(いぬ)かれて、美弦は「はい」と向こうでの話をした。本部での戦いに、地下牢に居る筈の浩一郎が銀環(ぎんかん)をして現れた事だ。


「浩一郎さんもこっちへ向かってる筈です」

「ええっ」


 その事実に、周りで聞いていた三人が一斉に声を上げた。サードである桃也も初耳だという顔をしている。

 当の彰人は押し黙っているが、普段一切漏らす事のない気配を衝動のままに(くす)ぶらせていた。


「想像したことが無いと言えば嘘になるけど、本当にそんな事になるとはね」


 怒りさえ含んだ彰人の小さな声が、鼓膜(こまく)の奥まで入り込んで来た。







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