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スラッシュ/キーダー(能力者)田母神京子の選択  作者: 栗栖蛍
Episode4 京子【06関東編・陰謀】
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355 長官としての振る舞い

 廃墟へ向かう京子たちの背中を見送って、桃也(とうや)は「情けねぇ」と自嘲(じちょう)する。

 こんな時だからこそ仲間の能力を理解して采配(さいはい)を振るのが務めだと思うのに、うまく立ち回ることが出来ない。さっき彰人(あきひと)に『私情を混同させるな』と忠告されたばかりだ。


「桃也は良くやってると思うよ。さっきだって、ちゃんと綾斗(あやと)くんに「ありがとう」って言えたでしょ? 成長してる」

「お前、俺で楽しんでるだろ」

「それは否定できないね。君の事見てると飽きないし」

「…………」


 ムスリと黙る桃也に、彰人がにっこりと目を細めた。

 けれど綾斗への本音を吐露(とろ)して『お父さんみたい』と言われたのは、あながち間違いではなかった気がしてくる。本人と話して、妙に納得してしまった。

 京子の指輪の事も、並んで歩く二人の距離が近く感じてしまうのも、些細(ささい)な事ばかり気になって仕方がない。

 久志(ひさし)の言う『時間が解決してくれる』は、まだ遠い先のような気がした。


「けど二人で行かせて良かったの? 確かに大勢で行くのは避けた方が良いけど、綾斗くんだってまだ本調子とはいかないでしょ? あの男に会えば、戦闘は避けられないよね」

「京子が負ける訳ねぇだろ? それでも危険だってのは分かってんだよ。だから俺が──」

「それは分かってるって言えないからね? 代替えが効く仕事をやる必要はない。君にしか出来ない事を選ぶべきだよ」


 彰人が桃也の意思をきっぱりと否定した。

 アルガスの次期長官だという肩書は想像以上に重い。現長官の宇波(うなみ)が『最前線に立てた方がいい』と言って後継者に桃也を選んだことには納得したが、命を賭けて戦うことが出来ないのなら、力なんて元からない方がと思ってしまう。


「少しは慣れてよ。長官としての振る舞いは、これからずっと君に付き(まと)う事だからね。誰も君に死んで欲しくないんだから」

「俺は死なねぇし、他の奴らにも死んで欲しくなんてねぇよ」


 自分が死ぬつもりはない。そんな命に、今回はアルガスの命運がかかっている。

 「慎重にね」と(さと)す彰人の視線に走り出したい気持ちを(おさ)えて、「あぁ」とぶっきらぼうに返事する。

 遠くにバイクの音が響いたのはその時だった。






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