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スラッシュ/キーダー(能力者)田母神京子の選択  作者: 栗栖蛍
Episode4 京子【06関東編・陰謀】
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351 まさかね

 つい数時間前まで戦闘音と光に(あふ)れていた廃墟周りの戦場は、全てが息絶えてしまったかのように静かな闇に包まれていた。

 観覧車は相変わらず不自然に光を灯し、数台のゴンドラが戦闘の衝撃で下に落ちている。


 曳地(ひきち)久志(ひさし)、マサと朱羽(あげは)の二組がそれぞれに辺りの捜索へ散っていた。アルガスの施設員にも何人か負傷者が出ていて、颯太(そうた)銀次(ぎんじ)はテントでの対応に追われている。元々トールの颯太に薬の影響が出るのかと心配したが、思ったほどの症状はないらしい。

 (しのぶ)の姿も見付けることが出来ず、京子は近くに居た桃也達と合流した。


「これでアルガスが勝利したわけじゃねぇよな?」


 ぽっかりと空いたフィールドの真ん中で、桃也が病院から戻ったばかりの彰人(あきひと)を相手に両腕を組みながら(うな)る。


「敵の大将の首を取るまでは油断できないよ」

「まさか朝まで隠れてるんじゃねぇだろうな」

「それもあり()るだろうけど、たとえ最小限の範囲で空間隔離(くうかんかくり)を張ったとしても、耐久時間に限度はあるよね」

「だよな」


 桃也と忍は境界線の外には出られないルールだ。アルガスの勝利条件は、忍の死か降参だ。朝7時を迎えると引き分けになってしまう。


「タイムリミットを過ぎての休戦は避けたいよね」


 彰人が風の音に耳を澄ませて辺りを見渡す。荒れた廃墟は最初ここへ来た時に見た原形を留めてはおらず、京子たちの足元も戦いの衝撃で土がボコボコと盛り上がっていた。


 そんな時ふと3人のスマホが同時に震える。

 一通のメールが伝えたのは、アルガス本部での松本の死だ。


「松本さん……? 本部に行ってたの?」


 綾斗との戦いの後から姿が見えなかったが、外へ出ていたというのか。


「元々薬の影響で弱ってたみたいだし、あの戦闘で限界がきたのかも」

「そう言う事なのかな。けど、向こうに美弦(みつる)が居てくれて良かっ……あれ?」


 メールに一通り目を通した所で、京子は末尾に添えられていた被害報告の欄に眉を(ひそ)めた。

 敵の数が『1』というのは松本の事だろうが、何故かキーダーの数が『4』になっているのだ。


「4人も本部にいたの?」

「一人は大舎卿(だいしゃきょう)だろうな。暫くこっちで見てないだろう? 平野(ひらの)さんも応援に来て貰ってる筈だぜ」

「平野さんか。それと爺に美弦……あと1人は誰かが他支部から応援に来てくれてるのかな?」

「…………」


 珍しく怪訝(けげん)な顔を見せる彰人とは対照的に、桃也は「後で聞けばいいだろ」と特に気にもしていない様子だ。


「僕の考え過ぎってだけなら良いんだけど」


 彰人は納得のいかない様子で「まさかね」と呟いた。







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