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スラッシュ/キーダー(能力者)田母神京子の選択  作者: 栗栖蛍
Episode4 京子【06関東編・陰謀】
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306 見知らぬ少女

 立体駐車場へ入って行く桃也(とうや)に気付いて、京子と綾斗(あやと)はふと足を止めた。

 何か急いでいるように見えた彼を追いかけようとしたが、『大丈夫』と判断したのは屋上に彰人(あきひと)の姿が見えたからだ。

 あの二人が一緒なら、余程のことが無い限りやられたりはしないだろう。


「京子さんは、もう少し休憩してから出て来て下さい」


 テントで水分補給をしながら申し送りをし、早々に戦場へ戻ろうと外に出た京子を、綾斗が仕事モードで注意した。外はまだ戦いの真っ最中で、飛んでくる光や音が焦燥(しょうそう)()き立てる。


「さっき観覧車で休んでたから平気だよ。まだ10時過ぎだし、戦えるって」

「まだ10時過ぎだから言ってるんですよ。先が長いからこそ、万全にするべきです」

「けど……」

「京子」


 (しび)れを切らせて、いつも通りの綾斗に戻った。ピシリという声が耳に痛い。

 桃也か(しのぶ)が降参しない限り、戦いは朝まで続く。日の出まではあと6時間以上で、気温も少しずつ下がってきていた。

 それでもまだ体力が残っている自信はあるが、綾斗は意見を譲らない。


「飲み物だけじゃダメだよ。無理しても続かないから、ちゃんと食べてから出て来て」

「あぁ……もしかして聞こえてた?」


 京子はそっと腹を押さえる。

 補給用のショートブレッドを閉じ込められている時に食べたが、少し足りないと思っていたのは事実だ。

 辺りの爆音に音を(まぎ)れさせたつもりでいたが、綾斗には筒抜けだったらしい。


「ゴンドラに居た時から鳴ってたでしょ?」

「……隠してたのに」

「興奮してると感覚が麻痺するから、減ったと思う前に食べた方が良いよ。ホルスも境界線の出入りは自由だって言ってるからね」

「……分かった」


 不本意だけれど、休憩と補給はキーダーになった頃から色々な人に言われて来た事だ。

 だから知識としては染み付いている。


「じゃあトイレも入れて五分で済ませる。それで良い?」

「もう少し伸ばしても構わないよ?」

「ううん、すぐ行くから。綾斗も気を付けてね」


 綾斗は出撃の態勢を整える。京子が伸ばした手を胸の前で受け止めて、絡めた指をぎゅっと握り返した。


「京子もね。向こうで待ってる」


 そう言い残して、綾斗は来た道をダッシュで戻って行った。

 思わず「凄い」と(こぼ)れてしまう程の圧倒的な気配を放出させる。


 いよいよ綾斗が松本と戦う時が来たのかもしれないと思いながら、京子はテントの横を通り抜けて、先に駅へ向かった。

 人気のない駅舎でトイレを済ませて出てくると、そこに誰かが居る事に気付く。


 避難し遅れた一般人だろうか。

 まだ若い、セーラー服を着た二人の少女だった。





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