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王都で過ごす優雅なる日々

 亡者の門から3日、何の障害も無く王都に着いた。あれから3日はそれまでの7日の村道、林道と打って変わって、舗装された石畳を敷く綺麗な街道となっていた。さすが王都近郊といったところか。




 王都に着いたお嬢様方は父親であるゴルトベルガー伯爵の屋敷に逗留するらしいが、身元不明の俺は一人王都の宿で待たされた。使いが来るまで待て、決して屋敷には近づくなと言われている。

 ちなみに宿は一行から離れる前に執事のクリストフさんに指定され、アルノー君に付き添われて連れていかれ、宿泊費もアルノー君が預かって、俺の手を介す事無く宿屋に支払われた。

 宿への道すがら、アルノー君に襲われる事は無かったが、「平民が調子に乗るなよ」的な悪言(あくごん)を散々浴びて辟易した。なぜ俺の案内が相性最悪のアルノー君だったのか。きっと屋敷ではお家騒動の決着と後始末で無茶苦茶忙しい事が予測され、俺に構う余力が無かったのだろう。そして、そこで戦力的に一番味噌っかすだったのがアルノー君だったと。たぶん、そんなところだろう。




 それにしても、俺は使いが来るまでこの宿で待機していなければいけないらしい。いつ来るか分からないのに待機というのが一番困る。宿に聞いてみると、なんと宿代は一ヶ月分も支払われていた。う~~~ん、2,3日という事は無さそうだが、それでも無いとは言い切れない。貴族に宿代まで払ってもらって、すぐ来いと言われて居ませんでしたはかなりマズい気もする。

 平民と貴族の関係って俺には分からないからな。という事で宿の人に相談したら、ちゃんと毎晩帰ってきて、外出は行き先を宿の人に伝えておけばいいんじゃねぇ、怖かったら昼も1回戻れば、と言われた。よし、怖いので昼も戻ろう、基本的には。


 考えてみれば、初めての王都で長期に宿を確保出来て、しかもほとんど空き時間というのはありがたい。給与支給のまま自宅待機といったところか。その間に今後の身の振り方も含めて色々情報収集が出来る。よくあるラノベの様に、いきなり毎日魔物と戦って稼いだりしなくて済むのは、本当にありがたい。


 それに俺が泊まらせてもらっている宿の名前は、“王都の出口亭”と言う。ここは何とも普通の宿屋で、広くはないがほどほど清潔な部屋と、まずまずな食事が出る。客層も貴族や無法者もおらず、行商人や貴族の使用人といった普通の人々。そして最大の特徴は、名前の由来にもなった立地にある。ここは街の外壁の門の近くで大通りに面する、所謂(いわゆる)繁華街にある。その分、王城や貴族街からは遠いが、情報収集には最適だろう。




 そこで俺はこの国の常識や地理について調べていった。


 まずこの国は農業大国であるらしいカウマンス王国という。北は山岳の王国ラウエンシュタイン、南は海沿いの公国マニンガーと接する。東はノルデン山脈、西はオルフ大森林で直接他国とは接していない。

 カウマンス王国は国土的には南北の国2つを合わせたよりも大きいらしいが、街や村とそれを繋ぐ街道以外は未開の森林や原野が点在し、そこには魔物が住んでいて時々人里まで出てくる事がある。南北の国とは小競り合いが絶えないらしいが、本格的な戦争に発展する様子はなく、商人等はある程度自由に行き来しているらしい。

 ラノベにありがちな覇権主義の帝国に攻められてるとか、狂信的な宗教国が近くにあるとかはなくて良かった。


 次にお嬢様も使っていた魔法だが、一般人には縁遠いものらしい。使用には才能と家庭教師等による教育が必要で、貴族と大商人、それに一部の機会を持った幸運な者だけが身に付けているとか。きっと日本で言えば弁護士以上に希少な存在、だからと言って一生で一度も見た事が無い程ではないと言ったところか。もし俺が身に付けようとすれば大金と時間が必要そうで、それが用意できても才能が無ければ無駄になるので、今すぐにどうこうと言う話でもないだろう。

 また、魔法の品だがこれも似たようなもので、貴族や大商人は持ってるらしいという事で、決して一般的ではない様だ。ちなみにこれらは現代の魔術師に作られることもあれば、ダンジョンから出土する事もあるらしい。


 そう、この国にはペルレ大迷宮と言われるいわゆるダンジョンがある。これは王都から3日くらいのペルレの街にあり、起源不明、目的不明、全体像不明で地下に大きく広がっているらしい。詳細は不明だが魔物がいて、宝が出るらしく、一つの産業になっている。俺も男の子なので興味はあるが、実際問題どうなのだろう。先日怖い思いをしたばかりだしな。

 ちなみこの国で魔物と言えば、その定義はふわっとしていて狼は動物で、それより大きくて凶暴なダイアウルフは魔物といった具合に慣習に従って分類されている。特に魔物は魔石を宿すとかは無い模様。はっきり言って王都に暮らす一般人からすると、王都の外にはそういうのが出るらしいよ、くらい無縁の存在だ。

 またラノベでありがちな猫耳獣人とかは一般的でなく、魔物と同一視されている。エルフやドワーフもいるらしいが滅多に見かけない様だ。




 そんな事を調べながら現代知識チートで商売を、とマヨネーズを試作してみたが、何だか危険な感じがしたので廃棄した。高くついたが食中毒とか怖いからね。ちなみ唐揚げとか石鹸は普通にあった。

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