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よくも抜け抜けと

「よくも、そんな事が。


 ああ、もうこうなっては仕方がない。

 責任を取って結婚するなら、俺も文句は言わん。」


 マルコは頭を抱えて、そう言った。


「ふん、誰が結婚なんかするか。」


 俺の言葉にマルコはブルブルと震えながら、怒声を発した。


「年端もいかない生娘を傷物にしたんだぞ。

 もう他の男には(とつ)げん。娼館にでも行けと言うのか。」


 そして低い声で続ける。


「なら、相応の詫びはしてもらうぞ。

 レオナの一生に相応しい詫びをな。」


 俺はヘラヘラと毛布に向けて問いかけた。


「生娘はともかく、年端もいかないのか?」


 すると毛布から凄く機嫌の悪そうなヴァルブルガが出て来てマルコを睨んだ。


「ッヒィ。」


 マルコは顔を青褪(あおざ)めさせて悲鳴を上げた。ヴァルには朝、マルコが動き出してから叩き起こして、小さく体を丸めて毛布に入ってもらったので、機嫌が悪いのかもしれない。




 そしてマルコを空き家の納屋で縛られたレオナの所に連れて行き、全てゲロった事を話すとガックリと膝を突いて、この事はユリウスさんには言わないでくれと懇願して来た。

 実は、ユリウスさんからは旅の間にゆっくり篭絡すればいいと指示をされていたが、ライマンまで5日間、レオナにアプローチさせていたのに全く(なび)かないので、痺れを切らせて独断で強引な手を指示したという。


「おらぁ~よぉ~、会頭のマリウスさんが見習いの時から商会で働いてるのによぉ~、

 未だに御者なんかやってよぉ~、詰めが甘いって言われてよぉ~。」


 いや、甘いだろ。寝てるのレオナだって確認する前にイキり散らして。ちなみにマリウスさんはユリウスさんのパパだ。


 マルコは独断で失敗したとなればユリウスさんに商会から追い出されてしまう、だからレオナ共々このまま連れて行ってくれと言うので、二度とこんな事をしない事、旅の間俺の言う事には絶対服従する事を条件に同行を許可した。

 まあ、レオナはともかくマルコは連れて行かないと、御者が足りなくなるんだけどね。なお、カリーナにもバレた事は内緒にして欲しいとの事だった。

 ちなみにレオナは、ああ見えて本当の年齢は18歳だという。なんという合法ロリ。だが、カリーナにバレてないフリをする事になったので、手を出すわけにはいかない。…大っぴらには。




 ライマンを出て3日、俺達は無事オーフェルヴェック伯爵領の領都シェードレに到着した。ライマンが川沿いにあるのに対して、シェードレは周囲を見渡せる丘の上にある。外壁の大きさはペルレに負けるが、ライマンよりも高く、そして周囲を威嚇する様に黒かった。壁上にも王都以上に見張りの兵士がいる。

 これはシェードレがマニンガー公国との国境紛争の軍事拠点でもあるからだろう。


 『南の商人街道』上にあるシェードレと次の街テンツラーの間は荷馬車で5日の距離だが、テンツラーはマニンガー公国のパラディース子爵の領都であり、このるシェードレとテンツラーの間に国境がある。

 国境付近には多数の男爵領、子爵領があり、これらが紛争が起こる(たび)に所属を変える。この貴族達を率いて戦っているのがオーフェルヴェック伯爵とパラディース子爵というわけだ。

 ちなみ先の貴族家は同じ一家が長年治めているのではなく、所属が変わる度にそれぞれの国から別の一家が配置される。同じ話をどこかで聞いたな。


 なお、カウマンス王国とマニンガー公国の間には東西に長く横たわる中央高地と呼ばれる高地があり、『南の商人街道』はこの高地を避けてノルデン山脈との間の平野を行く。何故なら高地は急峻ではないものの、森が深く魔物も多いからだ。この平野が多数の男爵領、子爵領に分割され、両国に取り合われている。




 兎にも角にも、シェードレに入った俺達はヴァルヒ商会の馬車と別れ、ダーミッシュ商会の倉庫へと向かった。そこで荷馬車を預けるとその晩、俺達は商会に薦められた宿に泊まった。

 シェードレでもライマン同様、商売は出来ないので消耗品の買い物だけをして出発する事にした。また国境線の情報を集めたところ、今はシェードレから街道を2日行った辺りにあり、国境紛争は1、2か月前を最後に起きていないそうだ。

 まあ、これまで以上に何が起こるか分からないので、食料や野営用の薪は多めに購入し、ついでに干し肉ばかりでは飽きるので生きた子豚も一匹買っておく事にした。ぷひっ。




 シェードレを出て2日。国境付近まで近づいた事で、いよいよの緊張感を持って進む俺達だったが、午後になって俺の探知スキルは西からやってくる集団を探知した。

 俺の探知スキルの欠点だが、単独もしくは少人数なら脅威から逃げたりやり過ごしたりできるが、荷馬車を連れている等の小回りが利かず足が遅い状態では探知しても逃げようがない。しかもここは近くに逃げ込める様な森も無く、地平線近くまで草原が続いている。さてどうしたものか。

 相手は騎乗しているらしく、なかなかスピードが速い。数は騎獣が6に騎手も6か。こんな所に遊牧民がいるとは思えないので、十中八九、カウマンス王国かマニンガー公国の騎士だろう。厄介な予感しかしない。よし、どうせ逃げられないならこの場でお茶にしよう。




 俺達が街道脇に荷馬車を留め、お茶の準備をしていると6騎の騎兵がやって来て、先頭の騎士が口を開いた。


「お前達、こんな所で何をしておるか。」


 俺は言ってやった。


「はい、騎士様。

 ここらで一休憩しようと、お茶の準備をしておりました。」

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