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ダーミッシュ商会

「次からは、もっと気を付けるよ。」


 だが、まあ喧嘩したい訳でも無いので、少しは引いておく。掘削だけなく破砕にもクルトを使って、選鉱の方にもっと人手を回すか。だが、破砕中は俺が見張ってないと、砂みたいにされそうだからな。まあ次回、いろいろ指示の加減を試してみるか。

 エゴンさんは鼻を鳴らすが、そのまま仕分けを続けた。そうやって分け終わると、左の山と右の山の大きさは3:1くらいになった。


「左の山なら20㎏で金貨1枚。右の山は30㎏で金貨1枚だな。」


「全部で300kg近くあるんだ。全部買い取れるかい。」


「ふん・・・。金貨10~15枚(100~150万円)と言ったところか。

 ピーターから飾りボタンの注文はあったが、こんなには使わないな。


 俺が手元で寝かしといてもいいが、

 前に言ったダーミッシュ商会を紹介してやるから、買い取ってもらったらどうだ。


 明日残りを持って来るなら、ここに呼んでやるよ。

 俺も金を預けてるから、金を持って来てもらおうと思ってるしな。」


「ああ、それで頼むよ。」


 この辺の話は採掘前からの既定路線である。金細工師の店1つだけでは、鉱石の需要もそんなに無い。今回の探索でそれなりに投資もしたし、ノウハウも溜った。1回で終わらせるのは勿体(もったい)ないから、しばらくこれで儲けたい。ならば自分で客を探すより、大きな商会に買い取ってもらうのが手っ取り早いだろう。

 ヴァルヒ商会が主に食品の大手商会なのに対して、ダーミッシュ商会は金属卸(きんぞくおろし)の大手商会だ。ペルレで使われる鉄や銅、錫や貴金属を鍛冶師や金細工師に(おろ)したり、大迷宮がある以上、他の街より需要の多い武器やその他の金属製品等もペルレ外から仕入れて来て売ったりしている。

 採掘前にもこの商会とはコンタクトを取りたかったが、エゴンさんに現物が無いと話にならないだろうと言われて、諦めた。その後、少し話して今回採掘して来た鉱石の配分をエゴンさんに60㎏程度、残りをダーミッシュ商会にという事にした。兎に角、取引の本番は明日だ。




 エゴンさんの店を出た俺とヴァルブルガは、ペルレの大通りに出て昼飯を食べる事にした。俺はトビアスのオッサンの屋台を探した。屋台は大体(だいたい)いつもの所に出ていて、いつも通り結構並んでいる。早く並ばないとまた品切れになってしまう。

 そそくさと並んだ俺達だが、隣の屋台を見て俺はちょっと引いた。カブトムシの幼虫の様な虫が、丸まって数匹串に刺されて焼かれていた。ペルレでは虫食も結構一般的だが、俺は令和日本人の感覚を持っているので遠慮したい。こういう屋台で売っている様な安い虫は、初心者冒険者によって2区で採取されるているらしい。買い叩かれてあまり儲けにはならないので俺はやるつもりはないが。

 何とか俺達の番が来た時には肉巻(フレイシュフォンル)が残っていたので、虫の串焼きを食べずに済んだ。トビアスに謎の金属について聞こうとも思ったが、まだ俺達の後ろにも人がズラリと並んでいるので止めておいた。端に寄ってトビアスの屋台が売り切れになるのを待つ。さて、何と聞いたものか。知っているなら聞きたいが、知らないなら藪蛇になるし俺が持っている事も知られたくない。




「トビアスのオッサン。」


「おお、レンだったか。アントナイトは見つかったのか。」


 帰り準備を始めたトビアスに、俺は声を掛ける事にした。いきなり、アレを聞くのも何なので他の鉱石の()()を聞いてから、自然な流れでそっちに話を持って行こう。


「ああ、お蔭さんでね。」


「そいつは良かったな。」


「だが、あまり高値にはならなくてな。

 人を集めた割には、大して儲かってない。」


「そりゃ、初めから分かってた事だろう。」


「そうなんだけどな。

 なあ、他にも銀とか金とかが出る場所は知らないか。」


 まあ、これはジャブだ。そんなの簡単に教えないだろうから。それからアレに繋げよう。


「知っとるぞ。」


 おいっ、知ってのかよ。


「おいおい、そいつを教えてくれよ。」


「そりゃ無理だ。引退する時に情報は売っちまったからな。

 今じゃ、クラン『強欲地下妖精(グリード・コボルト)』や、

 『黄金王(ピグマリオン)(アーム)』が(かこ)ってる。」


「そりゃそうか。じゃあ、あそこで他の鉱石は出ないのか。

 あるいはアントナイトでももっと価値の高い奴とか。」


「いや、あそこはアントナイトしか出ないぞ。


 そう言えば色の薄いのが出た事があって、商会にもっと出ないかと随分せっつかれたんだが、

 その後は全然出なかったんだよな。」


 やっぱり、前も出ていたんだ。だが、全然出ないって。今回、1㎏くらい出ていたが、それぐらいじゃ売買が成立しないって事か。


「ふ~ん、どんなのかまだ持ってるかい。

 それに全然ってどれ(くらい)出たんだ。」


「いや、何のかんの言って商会が持ってっちまった。

 量は全部で300gくらいじゃねえか。

 もともとあそこは幅10mくらい掘ってたんだが、それを20mまで掘ったんだぜ。」


 商会は欲しがっていたが、出なかったって事か。価値はアントナイトよりずっと高そうだな。俺は1回で1㎏出たが運が良かったのか。それともたまたま、あとちょっとで出る所で諦めたと言う事か。あの広さはそのせいか。何にしろ、トビアスのオッサンはこれ以上知らないだろう。

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