やれやれ、やっと着いたか。
「おお、武者修行の旅ですか。この辺では見ない服だと思ったのですが、
ひょっとして海の向こうから、
南のマニンガー公国を通って、この国にいらっしゃたのでしょうか。
この国に海は無いですが、マニンガーの港には人も物も色々集まるらしいですからね。」
この和やかに話す中、クルトの手当てをしながらそわそわしていたヴァルブルガが、近付いてきて声を掛けやがった。
「アリス殿と言ったか。
その変わった剣も魔法も凄いが、その服も凄いな。
戦闘中にスカートがヒラヒラして、中の凄い下着・・・、いたっ。」
俺は最後まで言わせず、ヴァルブルガの後頭部を叩いた。何でお前は思った事をそのまま口に出すんだ。まあ、この辺の女性の下着と言えばハーフパンツの様な丈のドロワーズが基本だろうから、そう思っても仕方ないか。
「み、見ました?」
アリスはスカートを押さえて、恥ずかしそうに俺を上目遣いで見てくる。くっ、なんて破壊力だ。だが俺は感情を(たぶん)出さずに冷静に答えた。
「いえ、見てません。部下が失礼な事を。
ところでアリスさんは、これから?
ペルレじゃなくて王都に行く途中でしょうか。」
嘘です、バッチリ見ました。ありがとうございます。
「う~~~ん、私も街まで一緒に行っていいですか。」
まあ、そうだよね。見知らぬ土地に来たら、少しでも縁が出来た相手を頼るよね。俺としては巻き込まれない様、早く別れたい気持ちもあったが、まだ道中トロールみたいなのに出くわす可能性もあるから、これはこれでいいかとも思う。
「ええ、喜んで。
貴女が一緒に来てくれるなら心強いです。」
荷物の整理をした俺達は、捨てていくのももったいないのでトロールから手早くとれる皮や牙だけ取って森を出た。そして森を出た俺達はそのまま街道をペルレへ向かう。その夜、俺達は街道脇の空き地で野営した。
野営中、俺はアリスに不審に思われない範囲で、こちらの世界の常識を教えておいた。ずっと面倒を見る気はないが、別れた途端に騙されて奴隷になったりしたら寝覚めが悪い。ただ、一番大事な身分とか治安に関する部分はピンと来ない様で、少し心配になる。
アリスは俺に「実は身分を隠した貴族だったり、大商人だったりしませんか」なんて言っていたが、残念ながらそのパターンではないです。俺が転移してきた時もそのパターンが良かったなぁ。
トロールに遭ってから2日後、王都を出て4日目の昼にペルレに到着した。あれから魔物や獣とも、野盗の類とも遭遇することは無かった。まあ、王都-ペルレ間は割と治安も良く、それが普通なハズなんだが。
ペルレの街は俺がこれまでこの世界で見た中で王都に次ぐ大きな街だった。街を囲う壁も王都に匹敵する程大きい。それに壁の上にも兵士が立って、心持ち王都よりも警戒が厳重な気がする。まあ、街中にダンジョンなんて物を抱えているんだから、警戒が厳重なのも道理か。
「んああっ、おっきい~~~。あむっ。」
ちなみにアリスが今、食べているのは今回の積み荷の林檎だ。
「そうですね。私もここは初めて来ましたが、王都の次に大きいです。」
半袖だから夏服かなぁ。巨乳という事は無いが、普通にある方だろう。汗のせいか、ちょっと透け感がある。というかあのミニスカートはヤバイ。この国であんなに足を出している娘は見た事ないぞ。この昼の時間、街に入ろうとするのは俺らの様な遠方からの旅人ではなく、近隣の村の農夫という感じの人々だが、皆アリスの足をチラチラ見ている。
「あ~~~っ、何かレンさんの目がエッチですぅ~~~。」
「そ、そんな事無いですよ。いや、ちょっとここは暑いですね。」
舌なんかチロっと出しやがって、エロ可愛いなぁ~~~っ、おい。
「むっ、ご主人様。見たいなら私がいくらでも。
さ、流石に人前は困るが。
あいたっ。」
俺はヴァルの頭を叩いた。昼間から何言ってやがる。
「あはっ、レンさんとヴァルさんて仲いぃ~~~。」
くそっ、完全に遊ばれてるぜ。それにしてもこの娘、こんな服で街中をウロウロして大丈夫か。ちょっと悩んだが俺は彼女の足が出ない様、ヴァルブルガの外套を彼女に譲った。「え~っ、足出さないと可愛くないですよぉ~」とか言っていたが、昨夜の治安の話などをもう一度して、人前では足を出さないよう説得した。なんで俺がそこまで面倒を見なきゃいけないんだか。
外壁のところで荷台の林檎を見せると、街へは割と簡単に入れた。やはりダンジョンがあるせいで、周囲の農村では賄いきれない程の人口を抱え、外から食料などの物資を運ぶ商人は歓迎されるらしい。
やれやれ、無事に着いて一安心だな。あとは、積み荷を捌いてダンジョンの情報を集めるか。




