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治療行為です

 すいません。俺が悪いんじゃないんです。向こうの体温が上がって来て、そろそろ目を覚ますかなぁ~と俺が緊張していたところで、半覚醒になったんだと思うんです。そこで両手両足でガッチリ俺にしがみついて、ヤバイ殺される、と思ったところで逃げ出せなくなって。それで向こうが動き出したんです。




「すいませんシたー。でも」


 俺は暗闇の中、土下座した。


「もういいわ。私も溜ってたから」


「へっ、何で?」


「人間の国に攻め込んだ魔族はほとんどが男。一人を相手すると俺も俺もと群がって来てボロボロにされるから、ずっと我慢してたのよ」


「そ、そうスか。大変でしたね」


「それより、何で私を助けたり、手当てをしたのよ。私はアンタを殺そうとしたんだし、私の仲間は人間を沢山殺してるのよ」


「野生のおっぱいが魅力的だったからだ(ふっ、傷付いた女性を助けるのに理由が必要か?)。シマッタ、口と心の中が逆になった」


「男は馬鹿ばっかかーっ」


「いや、違うんですよ。川に落ちるまで敵同士だったのは間違いないですよ。でもここは魔物の溢れる迷宮で、我々は遭難者なんですよ。なら、迷宮を出るか、味方に合流するまで協力したいなと。あと、どちらかの味方に合流した場合、もう一方の命は取らないと約束したいなと」


「ふむ、一理あるか」


 そういう猫女の瞳に僅かな光が灯る。


「あの、ちなみにこの暗闇でも目が見えるので?」


「ああ、問題ないが。そういえば、石橋の上でわざわざ火種を巻いていたが、ひょっとして他に光源がないと人間は目が見えないのか」


 ちなみに猫女のおっぱいはプリプリ露出している。タンクトップを足の傷を縛るのに使ったからだ。俺は暗闇の中でおっぱいから目を逸らして言った。ちなみに探知スキルの視覚の解像度は必要に応じて変えている。どこの解像度を上げているとはあえて言わないが。


「ええ、全然見えてません」


 猫女が体を揺すると、野生のおっぱいが揺れる。俺の目が吸い寄せられる。探知スキルに目は関係ないが、ついそういう反応をしてしまう。


「ウソね」


「くっ、なんて孔明の罠」


「まあ、いいわ。私はミーナ。アンタは」


「レンです、よろしくお願いします」




 俺とミーナは地下河川を上流へと辿っていた。魔族は体が頑健なのか、足にかなりの傷を負っているのに俺と同じ速さで歩いている。因みに川にも洞窟にも魔物がいるところがあるので、それは俺の探知スキルで迂回してまた川岸に戻り進んでいる。


「えっと、そもそも何でノルデン山脈を降りて人間の国に攻め込んで来たんですか」


「…道が開いたからよ。誰の者でもない土地が見つかれば、そこを自分の物にしようとするのは当然でしょう」


「道? ここは我々人間の土地なのですが」


「だから滅ぼして手に入れようとしてるの。私達の国アヌビシアは既に氏族ごとに領域(テリトリー)が決まっていて、でも氏族の者が増えて来るとそこで暮らせない、行き場のない者が増えて来て。それで獅子王パンセラウィレオ様はその者達を率いて新しい土地を手に入れようと決断されたのよ」


「ああ、土地が欲しいという普通の侵略ですね。ちなみに話し合いで移住とかは」


「最初に領域の支配者が誰かはハッキリさせる必要があるわ」


「そっかーっ、因みにあなた方の種族は魔族でいいんですね」


「何言ってるの、あなた達の言葉で我々を魔族というのでしょう。ダークエルフからもらった異世界言語の魔法、ちゃんと効いてるでしょう?」


 うん、さっきから情報量多いな。歩きながら色々と聞いていくが、ミーナ側は俺達の事にあまり興味が無いのか、聞いてるのはほとんど俺になった。ちなみにダークエルフは彼らの土地では元々あまり見なかったが、再侵攻前に現れて言葉の魔法や黒い武器を提供されたらしい。

 なお、ミーナはダークエルフにもあまり興味がないようで、詳しくは知らないようだった。彼女から得られた情報は、彼女の猫人の集落の中やその周辺の森の採取物や獲物等で、他の魔族についてもあまり知らない。もうちょっと周りに興味を持てよ。いや、完全にこっちの勝手な都合だが。

 それしても彼女達が住んでいた土地はノルデン山脈ではなく、その向こうの平地なのか。結構広い土地のように思える。それに黒い武器を提供するダークエルフか。こっちではダークエルフの話など全く聞いた事がないが、そいつらも魔族なのだろうか。う~ん。


 しかし、この先どうするか。ドウドウと水が流れ落ちる音がする。俺達は音のする方、河川の上流に近付いて行く。そこには高さ五十メートル近い滝になっていた。滝の左右は急峻な岩場だ。だがミーナは何事も無いかのよう登っていこうとする。


「うぉい、平然と登ろうとするなよ。怪我してんだろ」


「何よ、登んなきゃ進めないでしょ。これくらい平気よ」


「いや、俺は無理だって」


「はぁ? 人間ってドン臭いのね。じゃあ、協力はここまで。じゃあね」


 そう言うとミーナ、するすると崖を登っていく。


「おーい、置いていくなよー。寂しいだろー」


 だが、ミーナは俺の言葉を無視してドンドン上がって行った。ガックリ。俺は膝を付いて俯く。どうしたものか。五メートルかそこらなフリークライミングでもいけるかもしれないが、五十メートルじゃ確実に途中で体力が尽きるか、ミスって落ちるだろう。

 しかし、俺がそう考えている内にミーナが降りて来た。ちなみに俺は地面を向いて俯いたままだが、周囲は探知スキルで認識してるので分かってしまう。ミーナが俺の傍まで来て、俯く俺の肩に手を置いて言った。


「仕方ないわね。手伝ってあげるから、行くわよ」


「ミ、ミーナ。ありがとうッス」


 俺は俯いていたので、驚いたフリをした。なんか、その方が流れが良い気がしたので。俺の前には偉そうに腰に手を当てて、ふん、と胸を反らすミーナがいた。ありがとうございます。それからは俺は、ところどころでミーナに手を引っ張られたり、下から押されたりして滝を越えたのだった。

ここまでお読み頂きありがとうございます。


本投稿の「くっ、なんて孔明の罠」は、「くっ、なんて巧妙な罠」の誤記ではありません。

ご興味のある方は「孔明の罠」をググってみて下さい。


今後ともよろしくお願い致します。

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