表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/234

王都出立

 王都に来て4週間、お嬢様の護衛の報酬を貰ってから2週間が経った。俺はペルレに持っていく林檎を荷車に山積みにしてある。しめて金貨4枚分(40万円)、これがペルレで金貨4枚と銀貨50枚(45万円)にはなるはずだ。儲けは少ないが経費だけ掛けて移動するよりマシである。それとクルト用の(カブ)(イモ)を2輪カートに積み、俺達の食料として固く焼いたパンと干し肉も買ってある。

 王都を出るに当たって、ジークリンデお嬢様、いやゴルトベルガー伯爵に何か言っておいた方がいいかとも思ったが、屋敷に近づくなと言われていたので、代わりに宿の主人と給仕のロミーちゃんにペルレに行く事を伝えておいた。もし、俺に用事があるなら伝わるだろう。




 俺達は3人と1匹で王都を出発した。俺が先頭でロバのメリーさんを引き、その隣にはヴァルブルガ。メリーさんは林檎を積んだ荷車を牽いており、その荷車の後ろには紐で吊るした蕪が揺れている。そして最後尾のクルトは蕪を追って付いてくる。

 王都からペルレの街までの街道は石畳で舗装されている。ペルレまでの道中、1日目の終わりに俺達は街道脇で野営した。ここは街道を利用する商人や旅人が野営地として利用する為、広く切り開かれており、舗装こそされていないものの平らに踏み固められ何台もの馬車が停まれる様になっていた。

 今日は俺たち以外に野宿をする者はいなかったので、広場を独占し焚火を点けてそれを囲む様に毛布に包まって寝た。昼間は少し暑くなってきていたが、夜には少し肌寒くなるので毛布は必須だった。ヴァルが抱きますかと言ってきたが、交代で番をするのでしっかり見張っていろと言って一人で寝た。昨晩、王都の最後の夜は娼館に行ってスッキリしてきたので、まだそれ程 ()えてはいない。




 翌日、俺達はツェッテル川に掛かる橋の前までやって来る。川幅は10m程だろうか。だが、橋から川面までは結構高い。20mはあるだろうか。橋はしっかりとした石造りで、道幅も6mはある。そしてその橋の前にそいつはいた。


 クルトよりもさらにでかい、体長は3mはあるだろうか。もっとも座り込んでいるので、正確な大きさは分からない。その全身は茶褐色の毛で覆われ、僅かに見える肌は石の様な暗い灰色をしている。その口は体の大きさから考えても、まるで裂けているかの様に大きく、杭の様な牙が(まば)らに飛び出している。体の近くには人の身長を遥かに超える、丸太の様に太い棍棒が転がっている。


 俺は探知スキルの欠点を新たに見つけた気がした。だいぶ遠くからコイツの存在には気づき、なるべく音を立てない様に馬車とクルトを置いて、ヴァルブルガと二人で近づいた。だが、どれだけ先に気づいても、コイツは橋の前で寝てるし、この橋を避けてはペルレまで1週間以上回り道をする事になる。迂回できない場所に敵がいる場合、俺のスキルではどうにも出来ない。


「ヴァル、アイツが何か分かるか。」


「うむ。トロールだな。見たのは初めてだが、

 ラウエンシュタインでも山間の村では時々出るぞ。」


 あれがトロールか。この世界に来て約ひと月半、ゴブリンに襲われそうになった事もあるが、俺の視界に入る前に味方に倒されていて、日本と言うか地球にいない生き物を見たのはこれが初めてだ。やっぱりこの世界には本当に怪物がいるんだな~、と思った。


「強いのか。倒せるか。」


「トロールの討伐には20~30人は兵士を集めるが、父なら一人でも倒せるぞ。

 頑張れば私も、きっと。」


 うん、コイツ一人を当てるのは止めよう。だが、林檎が傷んでも困るので迂回はなるべく()けたい。クルトを当てるか。

 俺は馬車まで戻ると、馬車とカート、メリーさんを森の奥に止めて街道から隠す。いざという時は一旦逃げて、後から回収するつもりだ。

 俺はクルト、ヴァルを引き連れてトロールが見える所まで戻ってきた。俺はトロールをクルトに攻撃させ、俺自身もヴァルに護衛させて近付く事にした。クルトには適宜指示を出す必要があるからだ。


「クルト、その棍棒でソイツを殴れ。力一杯だぞ。

 動かなくなるまで、叩きまくれ。

 そうしたら芋を山ほどやるぞ。」


 クルトはしばらく眠るトロールと俺を交互に見てから、動き出した。


「オデ、コイツをぶっ叩く。

 オデ、イモ貰う。」


 特に足音を忍ぶ事無くクルトはトロールに近づく。その後ろから近づく俺とヴァル。


「ご主人様、私もクルトに加勢した方が良くはないだろうか。」


「ヴァルは俺を守る事に専念しろ。

 勝手に手出しするなよ。」


「そうか。承知した。」


 ラノベの主人公であれば、(みんな)で倒そうとか言うのだろうが、俺は弱いし命は惜しい。クズだチキンだと言われても、イザという時はクルトを生贄にしてでも逃げるつもりでいる。


 クルトが(いびき)をかくトロールに()(かぶ)った棍棒を振り下ろす。座り込んでいるから、クルトの棍棒がトロールの頭にも届くのだ。


 グシャ

ここまでお読み頂きありがとうございます。


よろしければ、ぜひ評価をお願いします。


また、次回投稿は8/1予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ