値切ろうぜ。
俺はまず、一気に値を下げに掛かった。
「なあ、アルミンさん。
あんたもクルトとヴァルは手放したいんだろう。
だったら俺に二人で金貨30枚で売らないかい。」
「いや、それではこちらが大損してしまいますよ。
それにこの娘の武器や鎧はサービスしますから、
それで金貨40枚は如何でしょう。」
思った通り、おまけで誤魔化そうとしてきた。だが、古い剣と臭い革鎧なんてほとんど価値は無いぜ。少し、他の方面から揺すってみるか。
「でもなぁ~、クルトとかすげ~飯食いそうだしなぁ~。
そっちも飯代に困ってんでしょう。」
「いえいえ、それ程でもありませんよ。
それに奴隷にはカブとイモを、水でふやかして食べさせとけばいいんですよ。」
「でも、俺は旅に出るつもりなんだが、
そいつの為にカブやイモを山ほど持って移動するなんて嫌だぜ。
荷馬車も余分に用意しなけりゃいけないだろうし。」
「ああ、でしたら商会の古い2輪カートをお譲りしましょうか。
そいつに自分の分の食料を牽かせればいいんです。
それも付けて金貨40枚でいいですよ。」
しめしめ、さらにおまけを着けてきた。しかし、奴隷の腹は水で誤魔化してきたのか。まあ、定石か。俺はさらに叩き込む。
「あっ、だったらついでに古いのでいいから荷車もくれないか。
ロバ1匹でも引けるくらいのヤツ。」
「ええっ、あったかな~。」
「奴隷なんて高い買い物なんだから、もっとサービスしてよ。
そうだ、ロバも一頭付けてよ。どうせロバなんて金貨2枚もしないでしょ。」
俺は値段を下げずに、おまけをもっと要求した。
「いや、さすがにそれは。」
「そっか~。やっぱり無理だよね。
俺もよく考えたら、一度に奴隷二人なんて無理があると思ってたんだ。
じゃあ、一回仕切り直しで。」
「待って下さい。少し歳を取ったロバで良ければ付けますよ。」
「いやいや、あまり無理させても申し訳ないし。
一度、お互い冷静になった方がいいんじゃないですか。
今日連れて帰っても、受け入れ準備も出来てないし。」
「で、では今日はお会計だけして、
後日お受け取りに来るという事でどうでしょうか。」
「う~ん、それじゃあ今日払う意味がないし。
そうだ。今日から二人は使いますが、夜はあと2週間こちらに泊めてもらえませんか。
そちらの負担は同じでしょう。それなら、今日払いましょう。
まあ、ロバや荷馬車を見てからですが。」
「…。」
そうして俺はロバと荷馬車を確かめた後、奴隷二人とロバ1頭、二輪カート、荷馬車1台、ヴァルの剣と鎧、二人とロバの2週間分の宿泊と食費、荷馬車を預かってもらう権利を金貨40枚(400万円)で買ったのだった。アルミン氏、ちょっと顔が青い。ダイジョブっすか?
俺は二人を購入すると、今日は一人で店を出ると登録証をもう一度見た。奴隷の購入と言っても紙の契約書しかない。俺はそれを一瞥して鞄に仕舞うと、布問屋のヴィルマーさんの所に向かった。俺はアルミン氏と奴隷購入の条件を詰めながら、今後の方針を煮詰めていた。
ヴァルブルガの購入によって彼女の母国、北のラウエンシュタイン王国との貿易は、直近では無くなった。二人を買わなければ良かったとも言えるが、やはり資金力が乏しい今はお値打ち価格は見過ごせなかった。使いこなせればいいんでしょ、厳しいのは分かってるよ。
「林檎だな。」
「林檎?」
俺はペルレ大迷宮のあるペルレの街に向かう事に決めた。まだ迷宮に入ると決めた訳ではないが、一度街までは行ってみる事にしたのだ。やっぱりこんな世界に来たのだから、ダンジョンなんていう物がどんな物かは見てみたい。
とはいえ、ふらっと物見遊山で行く程、余裕はないし効率も悪い。そこで俺は布問屋のヴィルマーさんに、何を持っていったら売れるだろうかと相談に来たのだ。
「あの街はもともと農耕に適した土地ではなく、迷宮があるだけの岩場だったのだ。
まあ、岩場だから迷宮が作り易かったのかもしれないが。
農耕地も作られているが、あの街の人口に対しては全然足りない。
幸いあの街に金があるから足りない物は買い集められる。
パンも肉も、酒も。だが、果物などは後回しになりがちだ。」
「だから林檎だと。」
「そう。大儲けは出来ないが、売れない事は無いし、
たぶん幾らかは儲けも出るだろう。」
いいな、それ。難しい商売ではなさそうだし。
俺はヴィルマーさんの所を辞すると、林檎の相場と仕入れられそうな数を調べに動いた。ロバの引く荷車に一杯の林檎だ。それと、クルトの蕪と芋も買わなければいけない。何、焦る事は無い。まだ、“王都の出口亭”の宿代も2週間分は払い込まれているし、クルトやヴァルも商会に同じだけ泊まれる。準備の時間は十分にあるのだ。




