第6話~え?何この言葉?~
俺は突然王様の横に出てきた言葉に驚いた
「広背筋?」
なぜ急に広背筋なんて言葉が出てきたんだ?
「?どうしたのだアオイよ?」
ボケッとしてると王様が話しかけてきた
「ハッ!あ、あぁいえその申し訳ございません。何でもない、です。ハイ。」
「さっきも言ったがそう固くなるでない。多少の無礼は気にせん」
俺が緊張していると思ったのか王様がそんな風に言ってくれた。
確かに緊張してるけど、でもごめんなさい王様。
俺は今あなたの隣に写ってる「広背筋」と言う言葉が気になってしょうがないんです…
「あ、ありがとうございます」
「よいよい、所でファングベアを倒したのだから何か褒美を取らせんといかんが、そなた何か望みのものはあるか?」
「ほ、褒美ですか?」
急に褒美といわれても思い浮かばなくてストロフさんの方を見てしまう。
「陛下、恐れながらアオイ殿は実は遠い国から来たもので途中で荷物を全て失くしてしまったそうなのです。出来れば報酬金の方がよろしいかと。」
「ほう?そうであったか。それは災難であったな。では褒美として…」
「お待ちください陛下!」
急に鎧を着た1人が喋りだした。
「どうしたのだ?エラルド?」
「陛下、話を遮る無礼をお許しください。恐れながら、あの者に褒美を与えるのをお待ちいただきたいのです」
「どういう意味だ?」
王様が訝しげな目でエラルド将軍って人を見ている。
「恐れながら私にはあの者が本当にファングベアを1人で倒したとはどうにも信じられないのです。我が精兵でも犠牲が出るというのに、しかも武器を持たず拳で倒したと言うではありませんか!余計に信じられません!」
その言葉を聞いていた周りの人達もざわついた。
確かにBランクの狂暴な魔物をこんな奴が1人で倒したと言われても信じられないよな俺もそう思うもん。
ってかやった本人がいまだ信じられないんだし…
「エラルド将軍そうは言っても冒険者ギルドでも倒したことが証明されましたし、そのようなことを申されても…」
「だとしても私は自分の目で確かめられない限り信じる事は出来ん!それにもし本当に倒したというのであれば一度手合わせしてみたいと思うのが武人だ。陛下!どうかあの者との模擬戦のお許しをいただきたく存じます!」
「模擬戦とな?」
「はい、私と闘いあの者が負ければ嘘の申告をしたという事になりその時には厳重な処罰を。勝てば事実ということになりその時は意見を覆した事により私目が罰を受けます!」
いやいやいや、何言ってるのこの人?
模擬戦?嫌だよ、やりたくないよ!
バカじゃないの?!断るに決まってるでしょ普通!
何度も言ってるけど俺武人じゃないし!
「ふむ、確かにそなたの言う通り一理あるな。だが良いのか?そなた自分が負ければ罰を受けると言ったが?」
「それだけの覚悟を持たなければこのような事は言いません!」
「フフフ、お主らしいな!アオイよ悪いなエラルドがこのように言っているのだがどうであろう?一度手合わせ出来んか?」
「え?いや、あの…」
「アオイとやら、そなたも武人の端くれならこの勝負受けてくれるであろうな?」
だから武人でも冒険者でもないから!
ただの整体師ですから!
「あの、私は武人では…」
「エラルドもうよい!そこまで言うのであればそなたの願い、聞き届けよう。誰かすぐに準備をせい!」
ちょっと、王様ぁぁぁ~!?
何勝手に決めてるんですかぁ?!
俺の願い聞き届けてくれないんですかぁ?
俺は涙目になりながらストロフさんの方を見ると俺の肩に手を当てながら首を横に振っていたよ…
えぇ?死んだじゃん…
その後そのまま練兵場みたいな所まで連れてかれ練習用の防具みたいなのをつけられるが、その防具がどう見ても剣道着のような物だった。
違いとしては全部が革製で軟らかい素材だったことと頭を守る物がない位だ
あの偉人はこんな物まで再現していたとは格好いい武将と思っていたが今は恨みしかない。
エラルドさんっていう人もつけ終わったみたいで木で出来た大剣を持ち構えていた。
俺はというと正直剣道を授業で少しやった位で上手く扱える自信なんてない。
弓矢なんてまず無理だしこれなら何とかと思い先っぽが丸い布みたいなのがついた棒を持った。
「2人とも準備はいいか?」
王様が問いかけた
因みにここには王様の他にも王宮にいた人達の他に練兵場にいた兵士の人達もいて多くの人が見物していた。
「いつでも大丈夫です!」
と、エラルドさん
「アオイよそなたもよいか?」
「……は、はい…」
俺は自信なく答え、ただただエラルドさんを見ているだけだった
ここまで来たらもう逃げようがないからだ…
「ではどちらかが1本をとるまであるいは倒れるまでとする!始めよ!」
その瞬間エラルドさんは物凄い速さで俺に近づいたかと思ったらすでに大剣を振り上げて俺に当てようとしてた!
「うわっ!」
やられると思い無意識に目をつむりながら持ってた棒を頭上に水平にした。
タイミングが良かったのかたまたま防ぐことが出来、カァァンと乾いた音が部屋の中に響いた。
「ほぅ手加減したとはいえこの一撃で決めようと思ったが防ぐとは多少は出来るようだな!」
目を開けるとエラルドさんがニヤッと少し笑いながら言ってきた。
いや、たまたまです!
その場から離れたエラルドさんが距離を置き俺の様子を見ている。
俺もエラルドさんの事を見るがその時またあの言葉が出てきた。しかも今度は2つも…。
「大胸筋」「腹直筋」そして光っている部分がある!
だから何でそんな言葉が急に出てくるんだ!?
さっきまで出てこなかったのにどうして急に?
…待てよ?もしかして出ている筋肉が弱点って事なのか?で光っている部分を狙えばいいのか?
でもそうだとして、当てられるわけないしどうすればいいんだよ…
そんなことを考えていたらエラルドさんがまた俺に向かい攻撃してきた!
「えぇ!ちょっ、ちょっと待って!」
上から振り下ろされる攻撃を俺は間一髪横にずれて避けることが出来たが、それを見抜いていたのかすかさずエラルドさんが大剣を横薙ぎに斬ってきたがしゃがんでギリギリかわせた
だがそれと同時に尻餅をついてしまいすぐに動く事が出来ない
エラルドさんも待ってくれるはずもなくそのまま俺に向かって剣を振り下ろしてきた。
~あ、やられる~
一瞬全てがスローモーションのように見え今までの事が走馬灯のように走ってくる
あぁ俺はこのまま死ぬんだ、異世界で死ぬなんてと思っていたら、剣が俺の頭に当たる瞬間。
無意識に俺は持っていた棒の先をエラルドさんのお腹の光っていた部分に伸ばしていた
ドスッ
剣を振り下ろした勢いもついて棒はエラルドさんの腹直筋にきれいに当たり、棒の先からは当たった手応えを感じたが、エラルドさんは全く動かない。
俺とエラルドさんは目が合ったと思ったその瞬間
「ガハッ!!」
とエラルドさんが急に血を吐きその場に倒れてしまった。
周りにいた人達は何が起きたのか分からずシーンと静まり返っていたが、
俺も何が起こったのか全く分からずその場に固まっていた。
すると王様がハッと我に返り近くにいた兵士の1人に話しかけ倒れたエラルドさんの様子を見させた。確認した兵士が王様に向かい
「…気絶しています」
その言葉を聞いて
「勝者アオイ!!」
王様が高らかに宣言した
場内はどよめきと歓声がひろがり響き渡っていた
俺はその場に座ったまま動かなかった。いや、動けなかった。
~そんなあのエラルド将軍が倒れるなんて…
~しかもたった一撃だぞ!
~あいつ一体何者なんだ?
だからただの整体師です…
何かこの感じ前にもあったよな…
アオイの災難はまだ続く
大胸筋
前胸部に位置する厚い扇状形の筋肉
腹直筋
腹部の筋肉のうち前腹壁の中を走る前腹筋の一つ。
一般的に腹筋として知られている筋肉




