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聖教会

追加でお話を投稿しました。

神の使徒になったことがないので書くのにすごく苦労しました。

塔から出るのは構わないが国から出るのはやめろ。他の国は作ってないんだ。

 ディーン村へお使いに行った次の日、サヤは今日も今日とて書物庫で魔法陣を書く。スコルは机の引き出しを開け、一冊の分厚い本を取り出す。聖書とだけ簡素に題された本を開き、机の上に置く。


「さて、サヤ。昨日話した通り、教会について説明しよう」


 スコルに話しかけられ、サヤはペンを置いた。顔を上げ、スコルの前に置かれた本を見る。


「ではまず、世界の成り立ちについて語ろうかの」


 スコルは本に指を置き、声に出しながら読み上げる。


『原初、ただそこには光と闇と大地があった。


 光から神が降臨し、次いで人を呼び寄せた。

 人は神に従って村を築き、町に発展し、やがて王国を作り上げた。

 ある時、闇から悪魔が生まれ、悪魔は人を襲った。

 人と悪魔は激しく争った。

 しかし強靭な悪魔と違い、人は無力であった。

 人は悪魔に蹂躙され、多くの人間が生き絶えた。

 終わりの見えぬ戦いに人は怯えた。

 人間は創造主たる神に縋った。


「死にゆくことは恐ろしい。見えぬ未来が悍ましい。どうかその慈愛で我らをお導きください」


 神は人の訴えに応えた。


「我が子よ、恐れることはありません。全ては私の意思によるもの。私は我が子を守るもの。我が子の魂をこの腕で包みましょう」


 神はその威光で大地を包んだ。

 天は蒼く染まり、光は遍く命に降り注いだ。

 人の魂は天となった神の腕に抱かれた。

 故に人の魂は死した後も神と共にある』


 サヤはふむふむと話を聞いていた。大人しく聞いていたが一つ、結論を導き出す。


 神、悪魔ほっとくんだ……。なんか、こう神様的パワーで悪魔を滅ぼしたりとか勇者生み出すとか人に力を与えるとかじゃないんだな。まあ、きっと神様は人間の力を信じてとかそんな理由があるだろう。

 スコルは聖書から顔を上げ、顎髭を撫でる。


「教会、まあ聖教会という名前が有名じゃな。この辺りは最も信仰されている宗教としても有名じゃ」

「他にもあるんですか?」


 ふむ、と考え込み別の本を引っ張り出す。


「各地の妖精や伝承と結びついた自然信仰などもあるが聖教会の教義も信仰することが多いの」

「妖精!やっぱりいるんですかそういうの?」


 瞳を輝かせ、若干身を乗り出しながら期待するサヤ。脳内ではデフォルメされた可愛らしい姿の妖精が花の周りを飛びまわっている。


「おるぞい。妖精と契約できればより強力な魔法を使えるようになるじゃろうな」


 気まぐれなヤツじゃから大変じゃがの、とカラカラ笑いながらスコルは取り出した本を開く。頁には瓶とその半分の大きさしかない翅の生えた人間が描かれた挿絵が描いてある。スコルは翅の生えた人間を指差す。この小さな翅の人間が妖精ということなのだろう。可愛い、いつかお近づきになりたい。そんな決意を胸に秘める。


「話が逸れたの。まあ、聖教会の教義がわかっているようじゃし問題はないようじゃな」


 妖精に持っていかれていた思考を戻し、昨日のことを思い出す。


「そういえば教会は治療とかもおこなうんですか?」

「そうじゃ。治療代とお布施で成り立っておるからな」


 治療代とお布施で成り立つのなら、治療を断ることがあるのだろうか?神母は神託を理由に断っていたが、どうなんだろう。


「教会が治療を断ることってあるんですか?」

「よくあるぞ。犯罪者じゃったり背信者に対して治療を施すことは絶対にないの。あとは神託かのう」


 スコルは神託とサブタイトルがつけられた頁を開く。


「生死に関わる重篤な病に対し、稀に神が教会にお告げを出すんじゃ。詳しい内容は神父や神母しか知らぬがのう」


 なるほど、と納得し昨日の少女に思いを馳せる。金の用意が出来たというのに治療を断られるのはサヤには分からないほど辛い思いをしただろうな、なんて考えているとスコルの表情が曇っているのに気づいた。

 サヤと目が合うと、慌てたように笑って繕った。


「さて、昼飯の時間じゃ。今日はサヤが買ってきたカウ肉のステーキじゃ」


 戯けたように笑いながら扉をあけ、キッチンへ向かう。部屋を出る時、ぼそりと何か呟いたのをサヤの耳は捕らえた。


「神託に委ねる、なんて馬鹿げた話じゃ……」

分からない点があったら感想でもツイッターにリプでもダイレクトでも聞いてくれるとうれしい

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