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太古の祭り

新章のトレーラーです

 月明かりに照らされ、村は異様な熱気に包まれていた。妹の背後には濡れ羽色の空が広がっている。祭事にしか纏うことの許されない伝統衣装。過去に村を襲ったというモンスターの翅を編み込んで作られた衣装は月の光を取り込んでぼんやりと光っている。その明かりに照らされた妹の顔を見つめた。その蒼い瞳には迷いがない。


「お姉ちゃん、私後悔してないわ」


 妹は笑った。その最後の姿を目に焼けつけるため、潤んだ眼を手の甲で擦る。


「でもね、一つだけ。一つだけ悔やんでも悔やみきれないことがあるの」


 目を伏せた妹の手を握る。姉にできることは妹を送り出すことだけだ。妹が安心して祭事を執り行えるように手伝わなければならない。


「この苦しみをこれからの若い世代に背負わせてしまうこと。全ては私達が解決しなくちゃいけなかったのに……」


 妹の視線が子供達の方へ向く。子供達は妹の華やかな衣装に目を輝かせ、口々に感想を言い合っている。

 年老いた村長が咳をする。そろそろ祭りが始まる時間だ。名残惜しさを感じつつも妹の手を離す。


「お姉ちゃん、後のことはよろしくね」


 頷き、口を押さえ涙を流しながら妹の背中を見送る。いかないで、と伸ばしかけた腕を引っ込める。妹の姿が見えなくなった頃、姉は目元を拭う。泣いている時間はない。踵を返してある男の元へと向かった。


「時間がないの、早く教えて」


 男は面食らった様子で姉の顔を見つめた。


「だが転生の呪法はまだ……」


 男の言葉を手で制する。男は沈痛な面持ちで姉の顔を見つめた。


「どうしてもというんだね。分かった、用意しよう」


 男は奥のカーテンに引っ込み物を引っ張り出す。


「大丈夫よ。その苦しみを次に受けるのは私。その次も私よ」


 胸をぎゅっと握る。誰かを失う悲しみも犠牲になる覚悟ももう誰にも背負わせない。


「さあ、用意できたよ。始めようか」


 巻物や魔法陣を手早く床に描き、中央の祭壇に横たわるように指示する。姉はその指示に従い横たわる。


「ありがとうございます、オリバーさん」

「感謝は成功した後にいってくれ」


 オリバーと呼ばれた男は銀髪を搔きあげ、呪文の詠唱を開始した。

オリバー!!!!!!!!

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