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魂の穢れ

こいつらいっつもピリピリしてんな。自律神経マッハで千切れそう(小並感

 鈍色の雲が空を覆い、視界の端では人々が建物の下から空を見上げている。ざあざあと窓に付着した水滴が重力にとらわれるのを眺めた。電柱に設置された信号が青色になり、車のタイヤは水しぶきをあげながら回転する。


「サヤ、今朝のニュースは見た?」

「殺人犯のエッセイでしょ。連日ニュースになってるから知ってるよ」


 運転席に座った母はウィンカーを出す。カッチカッチと車内に独特のリズムが響いた。シートから覗くウェーブのかかった暗めの茶髪をなんともなしに見つめる。母はチラリとサイドミラーを見ながら車を右折させる。


「人を殺した癖によくも平気でのうのうと生きていけるわ。殺された人が浮かばれないわ」


 車は直進し、再度ウィンカーを出して車線を変更する。信号が青色のままなので減速せずに滑らかにタイヤは白線を超えていく。


「こうするしかなかった、なんていくらでも言えるわ。死人に口なしだもの」


 急ブレーキが踏まれ、体が前につんのめる。シートベルトに圧迫され、首がガクンと揺れた。


「私、思うのよ。人を殺したのならどんな理由であれその命で償うべき!!」


 ハッと目を覚ます。眼前に広がる満点の星空と三つの月。変な空だな。月って三つもあったっけ?起き上がって周囲を見渡す。レイピアを手入れするカインがいた。パチパチと火の粉を散らす焚き火に照らされ、影が不気味に揺らぐ。

 私はまだ、異世界にいるのか。久しぶりに日本にいた頃の夢を見たな。すごく嫌な夢。首を振って耳に残った余韻を追い払う。地面に横たわっていたので体のどこもかしこも鈍い痛みを感じる。


「起こしたか?」


 レイピアの手入れが終わり、木の枝を折って焚き火に投げ入れる。横にピッタリと寄り添ったラッタットが耳を動かした。


「いや、たまたま目が覚めただけ」


 収納袋からパンを取り出し千切って口に放り込む。日持ちさせるため徹底的に水分が排除されたパン。日本のことを思い出すと小麦粉の味が少ししょっぱくなるね。


「そうか、目が覚めたなら丁度いい。あの半月が沈んだら出発する」


 生返事を返した。パンを食べ終わり、乾ききった喉に水を流し込む。一息ついて水筒を収納袋にしまって代わりに青漆の本を取り出す。カインがこちらをチラリと見る気配がした。

 スオーン町にいた時何度もこの本を開いた。なにも新しい情報は獲得できなかったが。ただ一つサヤは予感していた。それはとてもとても嫌な予感だった。外れることを祈り、頁を捲る。目を閉じ、溜息をついて地面に背中から倒れこむ。


「なにか変化はあったのか?」


 カインが少し体を傾けてこちらに問いかけてきた。予感は当たった。新しい頁が読めるようになっている。見えないというカインのために読み上げてやる。


「『死霊術師は死者の声をきく。死者の言葉をその口で紡ぐ。それは神への謀り、生命への不義理。爾今を既往で取り籠める禍根の罠。その声に耳を傾けるなかれ』」


 カインは静かに耳を傾けている。ただ死霊術師のことを述べられているだけで日本に帰る唯一の手がかり、送還の魔法陣は相変わらず黒い液体で汚染されていた。怒りを込めて本を閉じる。

 こんな本があったせいで私は異世界に召喚され、危険な目にあったんだ。そろそろ日本に帰る手がかりを掴ませてくれてもいいだろう。こんなにも努力しているのに手がかり一つ見つからない。


「カイン、魂の穢れをみる目、えっと神眼だっけ。それで私を見てみてくれない?」


 前にカインが私の魂が穢れていると言っていた。魂の穢れは転生の呪法を使ったという死霊術師の証だという。

 カインは訝しむ表情を隠さず、呆れながらも要求に応じてくれた。翡翠色の瞳が暗闇に煌る。


「念のために言っておくが魂の穢れは死によってでしか断絶しな…なるほどそう来たか。いやはや、お前は本当に型にはまらないな」


 勝手に一人で感心し、サヤを上から下まで眺め回す。ものすごく失礼な事を言っているが突っかかると話が脱線するので抗議の言葉を飲み込む。覚えてろよ、いつか後悔させてやるからな。


「私には見えないから教えて欲しいんだけど?」


 起き上がり、腰に手を当てて威圧してみる。カインは肩を竦め胡座を組み直す。まったく効果はないようだ。


「簡潔に言おう。初めて会った時よりも穢れている。そうだな、スコルピィほどと言えば分かりやすいか」


 まったく分からない。自分の基準で考えないでいただきたいものだ。それよりも気になることがあると切り出せば不愉快そうに眉をひそめた。すまないな、君のドヤ顔はキャンセルだ。


「私はその、えっと転生の呪法とやらを使ったこともないんだけど魂ってそんなに簡単に穢れるの?」


 うへ、口に出すと想像以上に厨二病がすごい。背中が痒くなってきた。


「さあな、そもそも死霊術師についてはお前が知っている以上のことは知らない」

「え、今まで行き当たりばったりで討伐してたの?」


 ああ、と返事が返ってきた。え、なにこいつ今まで事前情報もなく戦ってきたの?あの化け物シャーロットと?正気か?思わず後ずさってしまった。


「とは言っても聖騎士本部から二つ名や大まかな情報は必要に応じて渡される。全くの手がかりなしというわけではない」


 カインは立ち上がって服の土を払う。三日月が地面に触れている。そろそろ出発の時間か。前足と後ろ脚を交互に伸ばすラッタットの眺めながらカインの発言を思い出す。


『初めて会った時よりも穢れている』


 異世界に来てから魔法を習得した。魔法陣を描く練習をした。命を落としかけた。いずれもこの世界に生きていれば起こりうる出来事だ。ただ一つ、日本で聞いたことのある思想が頭をよぎる。確証はない、それでも確信を持ちつつある考えがある。

 死は穢れである。その死に触れる者は穢れている。かつて日本ではその思想に従って差別が行われていた、なんていう話を聞いたことがある。死に触れたから魂は穢れた。スコルピィ、シャーロット、アメリア。いずれもサヤの近くで死亡している。決めつけるには早計だろう、それでも無視しておくには辻褄の合う考えだ。


「ねえ、カイン」


 ブーツの紐を結び直しながら話しかける。


「準備しておけ、そろそろ出発する」


 背中に揺れる金髪は次の光に照らされてさらさらと風に弄ばれている。


「もしこの本を全て解読したら、私を殺すの?」


 此方に背中を向け、ラッタットの鞍に結び付けている手が止まった。顔をわずかにこちらの方に向ける。


「さあな、お前の貢献次第と言っておこう」

「そっか、じゃあ頑張らないとね」

設定の大洪水で読者の息の根を止める。


こんなにもいっぱい書いてるからせめて、せめて感想ぐらい書いてもよくない!?レビューはいいよ、書かなくて!!


めんどい人用の感想テンプレ


あああああ

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