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JD死霊術師による異世界冒険記  作者: 清水薬子
海鳴りの狭間に君の歌声を
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不法侵入

 スオーン町の古民家をアメリアから借りること数日、カインからの嫌がらせじみた扱きもようやく慣れてきた。最近では棒で叩いてくるようになったのでやっぱりあいつは刑事告訴しなければならない。とめないでくれ、法治国家に生まれたからには逃してはいけない悪と言うものがあるのだ。そう!例えば人の肩を外したり、フラグ建てて死んだり、痛かったら手をあげてくださいねと言っておきながら手を押さえつけたりする所業は罰さねばならないのだ。うん、私は正義。誰が見てもはっきりと分かるね。

 そんな極悪非道の主たるカインは聖教会から呼び出しがあったとのことで外出中である。ディーン村で落ち合うはずだった聖騎士がようやくスオーン町に到着するらしい。

 勿論この隙に逃げ出せば酷い目にあうのでそんなことはしない。だが用心深く人を信じることをしないカインはしっかりと人の衣服に探知魔法陣を設置している。

 なかなかに厄介な仕掛けが施されている魔法陣である。仕組みは簡単なので解除は可能であるが、カインに察知される警報機能が作動する。移動すれば察知される。絶えず一定の魔力を流さないとカインに脱いだことを察知されるという代物だ。三重の察知の構え。油断も隙もない。

 もしかしなくても私、監禁されてる?これは大変だ、カインの刑期を一年でも重くするためにしっかり記憶しておかないといけないな。


「しかし暇だな」


 予備の魔法陣も書き終わり在庫の紙は切れている。カインが出発した後に気づいた為買い出しを頼むのは帰ってきてからになりそうだ。やることがないのでベッドでゴロゴロする。

 やることないというのも久しぶりかもしれないな。異世界きてからなにかしらやってたもんな。魔法の練習とか魔法陣書いたりとか扱かれたり。日本にいた頃は期末試験の対策に追われてた。無駄な努力でしたね、とても悲しい。


 ぽかぽかの陽気にうつらうつらとしてきた時、突如響いた扉のノック音に驚く。来客か、応対したほうがいいだろうか。


『なるべく他の人との接触は避けろ』


 そういえば死霊術師に狙われているんだったな。来客には悪いが居留守を使わせてもらおう。暫く無言でいると、扉から女性の声が響いた。記憶が正しければこの古民家の大家、アメリアのはずだ。


「アメリアです、このドアを開けてもらえませんか?」


 さて、どうしたものか。居留守に気づいているのか、なかなか帰る気配がない。一定のリズムで尚もノックが響く。


「やはり留守のようですね」


 居留守がばれている訳ではなかったようだ。胸をなでおろす。留守だと知った今、大人しく帰るだろう。あと少し大人しく辛抱すればいいだけだ。音を立てないように起き上がる。

 耳鳴りがしそうなほどの静寂が辺りを支配する。可笑しい、扉の前から動く気配がない。ガチガチと扉から鍵が差し込まれる音がする。軋んだ音を立てながらドアノブが傾き、扉が開く。部屋に舞う埃が外の光に照らされる。

 ドアノブに手をかけ、体を滑り込ませたアメリアは後ろ手に扉を閉める。ほっとした表情を見せ、部屋を見渡した。サヤと視線が合うと仰天したものに変化する。努めて冷静に、刺激しないように声をかける。


「あらこんにちは、アメリアさん。何か御用で?」

「いらっしゃったんですか、これは大変失礼しました。頼まれたものをお持ちしたのですが、返事がなかったもので合鍵を使って勝手に上がらせていただきました」


 手に持った籠に掛けられた布を退け、中身を見せてくる。食料品や日用品が見えた。アメリアは微笑みを浮かべている。とりあえず話を合わせておこう。


「それはそうだったんですね。それはそうとセシルくんはお元気ですか?」

「ええ、最近は歌を歌うのが好きなようでよく強請られますわ」


 微笑みを崩さず、机の上に籠を置く。視線は揺れ、部屋の中を観察しているようだ。サヤの視線に気づくと慌てて一礼し、胸に手を当てて自己紹介する。


「私としたことが自己紹介がまだでした。私はアメリアと申します。この前お会いした子がセシルですわ。以後お見知り置きを」

「それはご丁寧にありがとうございます」


 アメリアの自己紹介に対して本来ならば名前を名乗るのが道理だろう。だが、これでも死霊術師に追われている身だ。名乗ればこの夫人を危険に晒すかもしれない。

 アメリアはカインに頼まれたと言っていたが、この前カイン自身が買い出しに行ってきたばかりだ。戸棚には食料がまだ豊富にある。


「お客様のお名前を伺ってもよろしいですか?」


 アメリアは立ち去るそぶりもなく、会話を続けようとしている。侵入前の言葉や態度から確信する。間違いない、アメリアはなにかを探しに此処に侵入してきたんだ。布に刻まれた魔法陣を破壊する。これでカインに知らせが行くだろう。


「それは貴女が知らなくてもいいことです。要件がお済みでしたらどうぞご退出を」


 会話を断ち切り、退出を促す。アメリアは唇を噛み締め、拳を握った。やがてため息を一つつき、肩をすくめる。


「なるべく穏便に済ませたかったのですが、そうはいかないようですね。残念ですわ、サヤさん」

アメリアさんの昼間の夜這い、これはえっち

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