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JD死霊術師による異世界冒険記  作者: 清水薬子
生と死の狭間で
21/74

これはクマった

第2部始まりました。これからファンタジーと冒険が幕を開ける!!

 ディーン村の南東に位置する広大な森。

 針葉樹が群生し、鬱蒼と茂るその森は薬草やキノコが名産品として有名である。


 タイガ森と呼ばれるこの樹林地帯は独特のモンスターが生態系を築いている。

 ディーン村で家畜として飼育されているカウカウというモンスターはタイガ森にのみ生息しているトンテキを品種改良したものだとスコルは言っていた。


 少し離れた位置にいるトンテキがふごふごと鼻を鳴らし、地面の匂いを嗅ぐ。

 嗅覚が発達した鼻は地面に絡み合った匂いを解き、目当ての匂いをみつけた。

 木の根を蹄で引っ掻き、白い塊をほじくり出す。

 むしゃむしゃと咀嚼すると、カーブした尻尾がぴしゃんぴしゃんと腿を叩いている。


「ヒヒン、ヒヒン」


 上機嫌に嘶き、鬣を揺らしながら次の木の根へと向かう様を見送る聖騎士くんとサヤ。

 どうみても猪の外見なのだが、尻尾と鬣と鳴き声は馬のそれである。

 さすが異世界、常識が通じないぜ。

 そんなことをしみじみと思いながら、小声で聖騎士くんに話しかける。


「トンテキが離れていきますよ」


 見ればわかる、と言いたげな視線が返答だった。

 最初は釣れない返事を律儀に返してくれていたが今では視線だけで済ませてくるようになった。

 考え方を変えれば言葉など必要ないほどわかりあえたってことだよね?

 聖騎士くんは立ち上がり、さっさと歩き出す。

 サヤは慌ててそのあとを追いかけた。

 2人の動きに合わせ、近くの石から|クライピオン(泣蠍)が逃げ出す。

 風で木が揺れ、微かに木漏れ日が差し込む道を歩きながら、再度聖騎士くんに話しかける。


「あの、この道さっき通りませんでした?」


 サヤの記憶が正しければトンテキの毛皮に見覚えがあるのはこれで二度目であり、さらに言えば特徴的な大石を見るのは三度目である。

 聖騎士くんは立ち止まり、ぎろりと睨む。

 彼の方が身長が高いため、必然的に見下している姿は中々に高圧的である。

 この睨み方は今頃気づいたのか間抜け、という意味合いだな。

 空を睨み、忌々しそうに舌打ちをしていることから道に迷ったと結論づけた。

 モンスターとして進化した木の群生地を避け、背の高い草をかき分けて進むうちに進行方向が逸れることはよくある。

 何層にも重なる針葉樹が太陽を隠しているため、正確な方向や時間感覚が麻痺しつつあるなか更に状況を悪化させるものがあった。


 チラリと視界の端にその存在を捉える。

 サヤの視線に気づいたのか、緑と茶色に支配されたこの領域に不釣り合いな黄色味がかった白が姿を隠す。

 着かず離れずの距離で追跡してくるその獣は精神的に2人を追い詰めている。


「あのモンスター、初めて見ましたね。名前とか能力とか知ってます?」

「アイスベアの類いだろう。たしか氷の吐息ブレスと爪で攻撃してくるはずだ」


 忌々しそうに聖騎士くんは舌打ちする。今日だけで20回は聞いたな。もっとカルシウム摂取してくれ。

 木の根を飛び越え、森の中を歩くこと数十分。ひらけた場所に出た。中央の大きな木の周りには他の木が生えておらず、背の低い草花が群生している。一際背の高い樹木の下には何者かが焚き火をしているようだ。


「人がいますね」


 遂には視線すら向けなくなった聖騎士くんの背中を追いかける。焚き火のそばにいた人物はこちらに気づくと立ち上がり、こちらを警戒しているようである。

 近づくにつれ、その人物の異様な服装に視線が奪われる。もはや服というものと呼ぶことすら憚られる。ただのロープと言っても過言ではなく、重力に逆らいながら辛うじて重要な部分を隠している。豊かな胸囲から腰にかけて人体の黄金律が体現されている。赤色の髪の毛はウェーブがかかりながらも風にゆらめいている。


「休憩中失礼する。ディーン村に向かいたいのだが、道を教えてもらえるだろうか」


 まじでこの人に話しかけるんですか聖騎士くん?明らかにマトモじゃない服ですよ?


「あら、道に迷ってしまったのね。ここから北西に五分ほど歩けば看板があるわよ」


 腰をくねらせ、前屈みで胸を強調する。今にも見えそうだから即刻やめていただきたい。


「でもぉ〜まずあのクマさんどうにかしないとまたここに戻ってきちゃうわよ?」


 ガサガサ、という音とともに白い巨熊が木々の隙間から姿を現わした。後ろ足で立ち上がり、双眸でサヤ達を見下す。首元に輝く白色の宝石が煌めき、巨熊は吠えた。




なんてえっちなお姉さんなんだ。これはブクマ数増大まったなしの書籍化電撃決定の未来が見えますね。


次回、言葉の壁を超えて!


言葉なんて通じなくても、きっと仲良くなれるはず!

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