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やったか!?

前回のあらすじ


やめて、私のために争わないで!!

誰かが傷つくのはもう沢山、実家に帰らせて頂きます!!


第13話『君への想い』

私の魔法でおちゃのこさいさい★ちょちょいのちょいでぐるっと解決!!

「やったか!?」


 崩落寸前で塔から脱出したサヤは額の汗を拭う。残暑の残る日差しを浴び、首元をパタパタと仰ぐ。

 崩落した塔は大量の砂塵が舞い上がっている。砂塵が落ち着いた後も物音はせず、クライピオンの鳴き声が聞こえるだけだ。

 あの崩落ではどんな魔法を使おうと助からないだろう。

 規格外な戦闘を繰り広げた2人を思い出し、鳥肌が立つ。勝てる自信が一切湧かない。例え見ず知らずの他人であろうとさすがに人の死を喜ぶのは不謹慎だったな、と反省し2人に黙祷を捧げる。

 そして気づいた。


「あ、結局スコルさんから話を聞き出せなかった。それに本も……」


 頭を抱え、地面に崩れ落ちる。

 見聞録と題された本、そしてその手がかりを唯一知るスコル。その生存は絶望的である。加えて本も崩落に巻き込まれた。奇跡でも起きない限り本も無事では済まないだろう。

 このまま日本に帰れないのか。視界が歪み、鼻の奥がツンと痛む。ええい、泣くな。泣いても解決しないんだ。袖口で目元を擦り、頰を軽く叩く。スコルから話を聞くのは無理だろう。だが本は無事かもしれない。塔の中に手がかりがあるかもしれない。とにかく探そうと意を決し、顔をあげた。


「あああああああああ!?」


 あり得ない光景を目撃し、叫び声をあげる。

 白い装束を纏った男だ。たしか聖騎士。普通にこっち見てる。


「あ、足がある!目がある!血がない!生きてる?生きてる!ひええ、生きてる!!」


 混乱のあまり、サヤは男の様子を声高らかに叫んだ。脳内では足のないテケテケや目元が窪んだ子供の幽霊やらを思い出している。明らかに傷1つ、汚れひとつない男の生存を疑うサヤ。そして紛れもなく生きていると脳が理解しているが、未だに気が動転していた。


「煩い」


 聖騎士は盛大に顔をしかめ、ぴしゃりと言い放つ。ようやく理性が出勤したサヤは口を閉じ、服に着いた土を払いながら立ち上がる。気まずさに視線を左右に動かしたが、聖騎士の視線に根負けして見据える。ふと、目の前に立つ男の外見に違和感を覚える。ジロジロと眺めていると聖騎士もこちらを凝視した。男の瞳がキラリと瞬く。

 男の瞳が光った瞬間、蛇に睨まれた蛙の如くサヤの体が硬直した。それに対する聖騎士の行動は早かった。

 予備動作もなく反応されるよりはやくサヤとの距離を詰めた。

 肩を掴み、腹に膝蹴りをいれる。くの字に折れたサヤの横に回り、その背中を肘で殴打した。地面に倒れたサヤの腕を馬乗りになりながらひねりあげるとたまらずサヤは悲鳴をあげる。


「貴様、なにをしたッ!!」

「な、なんの話ですか……」


 とぼけるな、と剣を首にあてる。

 切っ先は皮膚を押し下げ、あと僅かでも力を入れれば血が出るだろう。それでも尚説明しようとしないサヤに業を煮やし、腕をさらに捻る。


「いたいいたいいたたたた折れる折れる本当に折れちゃいます!!」

「なにをしたか答えろ!」

「わかりませ、あ、ホントなんです!いたいいたい」


 痛みに脂汗を流しながらサヤは叫んだ。先程から叫び続けた所為で声が掠れている。男は腕を少し緩め、低い声で尋問する。


「正直に答えろ、どうやって魂を汚した?」

「質問がわかりません!!」

「そうか、残念だ」


 ごきん、と鈍い音が響く。

 男は一切の迷いなくサヤの肩を脱臼させた。

 痛みに暴れる体を押さえつけ、もう片方の腕を掴む。


「どうやって魂を汚した?」

「知ら、ない!!」


 無言で右肩を掴み、腕を捻る。サヤは引きつった叫び声をあげ、痛みを覚悟した。男は脱臼する角度、その寸前でピタリと止める。


「どうやら本当に知らないようだな」


 腕を離し、サヤの上から退いた。恐怖から解放されたサヤの両目から涙が落ち、地面に吸われていく。痛みで呼吸は浅く、汗は服の色を変えている。


「無駄に痛みを与えてすまなかったな。ついでにもう一つ質問に答えていただきたい」


 男の唐突の謝罪にサヤは困惑して顔を上げる。目の前にレイピアを突きつけられる。


「このレイピアに見覚えは?」

「ないです……」

「協力感謝する。せめてもの礼だ、今楽にしてやろう」


 慌てて飛び起き、続けて命乞いしようとするも首に突きつけられた剣によって封じられる。それでも震える唇を開いて男に質問する。


「なんで、殺そうとするんですか?」

「あの老人と共にいたからだ」


 聖騎士は教義に従って私刑を執行する武闘派団体だ。2親等まで平然と宗教裁判にかけるなら、共にいたサヤを処刑しない理由がない。

 瞳は一切揺らがず、明確で強い意志を感じる。その答え、想定内だが想定外だ。

 どうする?どうすれば助かる?

 度重なる精神的疲労と痛みによる肉体的疲労がサヤの脳を狂わせた。

 一か八か、かけるしかない。

 成功は限りなく低い、だが失敗しても死ぬだけだ。やるしかない!!


「さて、神への祈りは済んだか?そろそろ斬るぞ」

「聖騎士さん、取引しませんか」

「断る」


 あまりにも早い一刀両断、サヤでなければ今頃絶望で気を失っていたところだ。

 肩を掴まれ、首に剣が押し当てられた。

お願い、私の話を聞いて聖騎士さん!

私、悪い死霊術師じゃないの。ホントだよ?


見逃す代わりに俺の妻になれ?


次回第14話『一つ屋根の下で』

私たち、話し合えばきっと分かり合えるはず!

らぶ&ぴーす★

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