動き出す歯車
差し込む朝日を取り入れるために開けた天窓から白い羽に赤い嘴をもった鳥が体をすべりこませる。
鳥は首を傾げながら室内の様子を伺う。
3人の男がいる。金髪の男と黒髪の男、そして銀髪の男だ。彼らは腰までの長髪を後ろに纏めているため、動きに合わせてゆらゆらと揺れている。男達は白い装束を身に纏っていた。彼らの眼はなんとも美しく、引き込まれるような不思議な魅力がある。金髪と黒髪の男は銀髪の男に傅いていることから支配関係があるのだろう。鳥は銀髪の男が座るデスクに降り立ち、ちゅんと鳴く。
「おやおや、連絡ありがとう」
仕事を終えた鳥は自ら籠に入り、器用に閂をかける。銀髪の男は鳥の足に付けられた筒から紙を取り出し、目を通す。途端に若く端正な顔を歪めた。
「どうかされましたか、団長」
金髪の男が声をかける。3人の中では一番若く、腰に下げたレイピアがかすかに揺れ、金属音を立てた。
「あぁ、カイン。話の途中だったな、すまない。今密偵がネクロマンサーの尻尾をつかんだ様だが…」
団長と呼ばれた銀髪の男は言葉を切る。そして意を決した様に口を開いた。
「ディーン村の南東、森を抜けた先にある塔を工房としているらしい」
男達の間に緊張が走る。
「大規模出兵ともなれば村人達との戦闘も避けられない。どうする、団長?」
黒髪の男が最悪の可能性を団長に提示する。その男の眉間に刻まれた皺は相対した者に高圧的な印象を与えるだろう。団長は深呼吸し、天を仰ぎながら眉間を揉む。
「しょうがない、今回も単独で対処しよう。頼めるかい?」
話しかけられた金髪の男は一切の迷いなく応える。
「この命に代えましてもかのネクロマンサーを討伐してみせましょう」
頼もしいね、と団長は安心した表情で笑った。
「レオン、お前にはさっきまで話していたネクロマンサーの討伐を頼む」
レオンは静かに礼をする。長い付き合いのある団長にとって、答えはそれで十分だった。
一礼し退出した2人の背中を見守りながら、団長はため息をつく。
「どうしてこう、世の中はうまく回らないのかなぁ。私の言うことを聞いていれば幸せになれたのに、また判断を誤るなんてお前は愚かだよ」
手持ち無沙汰な手で伏せられていたプレートの角度をパタリと帰る。木目の色合いが美しいプレートには金色の字で団長の名が彫られている。
「なあ、スコルピィ。お前は実に馬鹿だ、あの頃から変わっちゃいない」
その男の名をクリストファー・ハルディーと言った。
まぁた新キャラですよ。そろそろ読者の脳内が混乱するじゃないか。
これから怒涛の展開だと思いたい。思ってる。なるんだこれから。
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