5『現の夢』
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その日のイベントは終わり、頼先生に魔力量変動の秘密はそのままに学校から帰宅した。
「観、夕飯は何が食べたい?」
「そうだなー、カニクリームコロッケなんていいかもな。」
「あーー、いいね、カニクリームコロッケなんて久しぶりだなー。」
そんなことを俺の家で話していると、玄関のドアが開く音がした。
「ただいまぁー、お腹空いたーー!ご飯出来てる?」
そんなことを言いながら味が帰ってきた。
「おかえり〜味ちゃん、出来てるよ。」
「あ、そうか今日料理当番、信だったんだ。やったー、お兄ちゃんが料理当番だといつも食欲無くなっちゃうから〜。」
「それどういうことだよ!俺も頑張ってるんだぞ、褒めてくれよ!」
「じゃあ、この間の夕飯は何!?
魚まるまる1匹半焼きででてきたじゃない!」
(確かにちょっと下手だけど、、)
「、、、、精進します。」
信の作った夕飯を食べ終えたあと、俺達は3人とも一緒のソファーに深深と座り込んだ。
「あー、美味しかったな〜信の作る飯は美味いな〜。」
「ホントそれー、美味しいからダイエット中だってのにいっつも食べすぎちゃうんだよね〜」
「お前は年がら年中、信の飯じゃなくても俺たちよりたべるだろうがっ!」
「ありがとう、そんな褒めても何も出ないよ、
ところで昧ちゃんは中学校はどうだった?まぁーもう3年生だからそんなに変わらないだろうけど。」
「あ、そうそう仲良い友だちと同じクラスになれたの〜、2年の時は知り合い居なくて苦労したわ〜」
昧は鋭い蹴りを俺にいれながら信に話した。
「てか痛ったっ!お前今年は空手部主将だろっ!?武道未経験に蹴り入れんなよ!」
「太ってるなんて言った、お兄ちゃんが悪いでしょっ!」
「言ってねぇし!」
俺は昧に蹴られながらも、、こんな日々が続いていることに感謝した。
2人さえ笑っていればそれでいい、、と考えることはこれで何度目だろう、
何かを悩んでも、結局はこの結論に至ってしまっている。
これから先もこの2人を守っていきたい。
俺は小さい頃誓ったことをもう1度、神にでも祈るように誓った。
「お兄ちゃんなにニヤニヤしてんの?ちょっと自分の兄として恥ずかしいから止めてくれない、正直ドン引きしてる、」
「そんな言うっ!?」
「そうだ、2人こそ高校どうだったの?」
俺の言葉を華麗にスルーしらそう昧が言った。
「そうだねー、いろんな人がいたよ。観とも同じクラスになれて、友だちも何人かできたし、スタートは順調って感じ。」
「へぇー、2人とも同じクラスになれたんだ、良かったね〜。お兄ちゃん1人だと不安で授業が真面目に受けられなくなりそうだったから良かったはっ!」
「うぅー、兄をそんなに思ってくれてたのか〜、お兄ちゃん嬉しくて涙腺崩壊モンだよ〜」
「キモイっ、触んないで!」
「言ってることと違くなっい!」
「でさ、、いい感じの子いた?」
「ん?いい感じの子って?」
「ほら〜、可愛い子はいた?ってことよ〜」
「あーそういう事か、ませてるなぁ」
「いいじゃんもうお年頃よっ!あたしだって〜」
「そうだなー、顔がっていみなら結構可愛い子は多かったよ。」
「ホントっ!どんな子かみたいな〜、あっ!
でもお兄ちゃんストライクゾーン東京ドーム1個でも足りないからな〜、」
「そんな広くねーよっ!
信っ!可愛い子多かったよなっ!」
「そうだね比較的多かったよ、特にローエルさんとかねっ!」
「ホントっ!信が言うならほんとなんだっ!」
(俺への妹の信頼がすごい薄い、、)
「あ、そうだ、信今日はうちで寝てけば?」
「あー、そうだね、2人の邪魔じゃなきゃね。」
「なにいってんの信、私たちの仲じゃな〜い
そういうことなら早めにお風呂沸かしてくるね〜。」
「センキュー、マイシスターっ!」
そう言って昧が風呂場に行くと、ソファーには俺と信の重さだけがかかる
「ありがとね、観。」
「っ!?急にどうしたんだよ気持ち悪いぞ、」
「2人には貰ってばっかだよ今も昔も。」
どこか遠くを見るような目をしながら信が言った。
「何言ってんだよっ!昔から2人に支えられてるのは俺の方だよ、ほんとにどうしたんだ?大丈夫か?今日は早めに寝た方がいいんじゃないか?」
「アハハっ、そうだね、今日は早めに寝るよ。」
喜びとも悲しみともつかない笑いを自らの端正な顔に張りつけ信はリビングを後にした。
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「逃げなさい!」
けたたましい表情をした目の前の美麗な女が誰かに向かって叫んでいた、
「はやくにげるんだっ!」
次はその隣の美丈夫の男が切羽詰まったように誰かに吠えていた、
何度も何度も何度も、何度も、、、、
その誰かが自分であることに気づいたのはその声を何十回か聞いたあとだった。
だが、何故2人が自分に向かってそんなことを言っているのかは分からない。
まだ、何度も何度もその女と男はこちらに向かって叫んでいる。
するとその2人の後ろから眩い光がさした。その光に目を閉じると、
次に視界が捉えていたのは、
ドス黒い炎に包まれたその2人の身体だった。
2人の身体は一瞬で灰燼と化し、先程見た美しい顔の影すら見せない。
何が起こったのか一瞬分からなかった。
だが直ぐに、思考が追いつく。『何か』が2人を焼き尽くしたのだと。
そして次に、視界が捉えたのはその灰燼の先から歩いてくる『何か』だった。
すると刹那、身体が思考よりもはやく動いた。自分の中の何かが動かしたのだろう。僕はその場から立ち去ることに全ての力を注いだ。
ただただ何かが危険であるとドアを殴るように何かがノックしてくる。
走った。
走った。
走り続けた。
だが、遅く、僕の身体も燃やされていく。
途中に、灰燼と化した2人の姿が脳裏を駆けた。
どこかあの2人は懐かしい印象をあたえる人達だったなぁぁ、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
ぁぁ、そうか、
あの2人は『母と父』だ。
ドス黒い炎に包まれながら、
意識はゆっくりと水中から浮力に押される物のように引き戻されていき意識が覚醒し始める。
、
、
、
「あぁ、寝ていたのか」