部室での会話
僕の子供のときの話なんだけどね。
彼は何気ない様子で語った。
僕はさ、子供のときはとても寂しかったんだ。
友達はいないし、両親は仕事とか色々で遊んではくれなかった。一番悲しかったのは友達が集団下校の時に僕だけのけ者にしたときと、従兄弟のお姉さんが弟に優しくしたときかな?
彼はいつもこんな感じで唐突におかしな事を言う。
ある時さ、お父さんの知り合いの、いつも家にお父さんと一緒に遊んでる人が、一人で僕のいるアパートに来たんだ。
それでね、僕をケージの中に入れたんだ。貴方を愛してるってね。
僕は意味がわからなかったよ。愛って何ってね。彼女は僕に繰り返し愛を語ったよ。
私はいつもの彼の話とは何か違うことに気がついた。
それでね暫くしたときに彼女に頼んだんだ。それなら全部滅茶苦茶にぶち壊して見せてってね。痛くするあの人をやっつけてってね。
その後からは痛いことは無くなったかな。
久しぶりに会ったお母さんが僕を見つけた後、泣きながら僕を出してくれたんだ。そしてね栃木に引っ越してきたってわけ。
この大学は埼玉にあり、そこそこ有名な私立校だ。彼は栃木から通っている。
僕のお父さんには僕とは腹違いの妹がいるらしくってね。彼女には会ったことないけど、色々な噂を聞いてさ。僕のお父さんは行方不明らしいよ。まぁ、震災があった所だからそのせいだと思うけどさ。
彼は何気ない様子でカップ麺を啜る。
もしかしたら、もっと前から行方不明なのかなって。
彼の声は大学の小さな部室に響いた。
僕は人の顔の区別が小さい頃から出来なくてさ。もし、危ない人がいたら守ってもらおうと思ってね。
冗談だよ。僕がホラー好きだからってホントにこんなことあるわけないでしょ。
彼は後輩を驚かしてるときと、同じ笑顔で私に笑った。
この旅行サークルで彼と同じ風呂に入ったとき、彼の右肩には気持ちの悪いあざがあったことを思い出した。
まるで、タバコを押し付けられたようなあざを。
僕の経験