まさかの夜間外来
母親に付き添われ、大学病院に向かいました。タクシーの運転手さんが夜間外来専用の出入り口を把握してくれていたので、車が行けるギリギリのところまで連れて行ってもらうことができました。夜間用の出入り口は場所もわからなかったので非常に助かりました。
戸惑いつつも病院内へ入ると、守衛室のようなところにおじさんが一人いました。どうやら電話で対応してくれたのはこの人のようです。
電話で連絡した旨を伝え、診察券を渡してから待合室のようなスペースで待機することになりました。そこには他にも何人かの人がいて、待つこと数分。その数分すらも気が遠くなるほど長い時間に思えました。
ようやく通された診察室にいたのは若い男の先生。午後に抜歯手術を受け、夕方ごろから出血が止まらないことを伝えました。しかし、その先生は口腔外科が専門ではないため、出血していることは確かだけれどどこから出血しているかわからないとのこと。
その先生では処置ができないということで、口腔外科の先生に来てもらうことになりました。
止血用の綿がないため、怪我をした時に使うような大きめのガーゼを渡されて、綿の代わりに噛んでいるようにと伝えられました。このガーゼが思いのほか大きく、奥歯で噛んでいても口に収まりきらないサイズでした。
巨大なガーゼを咥えて帰ってきた私に母親は面食らったようですが、私はそれどころではありません。ガーゼを噛んでいても、ちょっと力を緩めた瞬間にじゅわっと血が染み出す感覚が手に取るようにわかるのですから。
唾液と血が混じり合っていたこともあるのでしょうが、口に収まりきらなかったガーゼがじわじわと赤く染まっていくのが視界の端に入り余計に不安を大きくさせました。
そして、待つこと更に10分ほど。ようやく名前を呼ばれ、看護師さんに誘導されて今度は別の診察室へ向かうことになりました。
夜の病院は暗く、昼間と違った静けさが印象に残っています。今ならホラゲみたい! と色々周りを見たりするのでしょうけれど、その時はそんな余裕もありませんでした。
私が通されたのはその日抜歯手術を受けた口腔外科の診察室でした。
ベテランと思われる先生が対応してくれて、まず最初に歯に張り付いた血の塊を吸引器で取り除いてくれました。
舌を動かすたびに触れていたぶよぶよした塊がなくなっただけで、随分と気分が違います。その後、生理食塩水で傷の周りを洗い流してくれたのですが……血の味がしない液体が口の中にあることに感動を覚えるくらい私の感覚は参っていました。
「んー……、骨の中から出血してるみたいだね。縫ったところ一旦開けるよ」
そう言うなり、先生は器具を準備して糸を外しにかかります。その間にも血は喉の方へ落ちてきて、身体が血を受け付けなくなった私は半泣き状態で処置が終わるのを待ちました。
「痛いの?」
「いいえー……。でも、精神的に辛いです……」
そんな受け答えをした覚えがあります。
糸を外して開いた傷の中へ止血剤を入れてもらい、再度縫い直してもらって処置は終了。止血剤を入れてもらう瞬間にキーンとした痛みがあったものの、一瞬の出来事でした。
帰り際、「たぶん必要ないと思うけど……」と看護師さんが多めに止血用の綿をくれました。
夜間の診療の支払いはできないため、翌日の会計と合わせて支払うことになると伝えられました。
この時点で請求額がいくらになるかは教えてもらえなかったため、特別料金の5,000円が加算されるのか否か、不安なまま帰宅することになったのです。
帰宅後、出血はしっかり止まっていました。お土産でもらった綿は今でもほとんど手つかずのまま置いてあります(笑)
食欲はなかったのですが、抗生物質は飲まなければいけないということで薬だけ飲んで歯みがきもそこそこに布団に潜り込んで朝を待ちました。
その日かかった治療費:760円
今思えば当然のことなのですが、必要な処置であったため特別料金は請求されませんでした。往復のタクシー代が2,500円くらいかかったので、私にとってはそちらの方が痛手でした(笑)
後日お医者さんに聞いたところ、圧迫止血というのは15~20分で止血できるもので、30分以上出血が続く場合は異常だと判断して良いとのこと。
とはいえ、じわじわと微量の出血をすることはありえるという話だったので、私のように何度綿を変えても綿が真っ赤に染まるレベルの出血であれば病院に連絡、と考えていただければ大丈夫かと思います。
親のトゲトゲした言葉に惑わされず、早めに病院に相談しておけば私もここまで苦しむことはなかったのかな、と今更ながら思っています。