六話 ベルリン防衛戦再び
同刻、ベルリンにも危機が迫っていた。
ボルマンを襲ったのと同じような、巨龍が三匹も街に出現し、その鮮血のような赤さの炎を廃墟と化した街々へと頻りに発していた。
ベルリン防衛軍は多くの火砲でもってこれを攻撃したが、これも全くの無意味であった。
「前線の部隊はどうなっている!何が起きているのだ!?何故ポリシェビキどもではなく龍が攻めてきたのだ!」
地下壕の会議室でヒトラーは怒鳴った。
「総統閣下。何故、龍が攻めてきたのかは分かっておりません。情報の収集を急いでいるところです。我が軍は必死に戦いを続けていますが、兵士の死傷、兵器の損耗は甚大です。ただちにベルリンから避難を。もうすぐ龍どもがここにもやってくるでしょう」
ハイリンチ大将が必死の形相を浮かべ言った。
「君は今なんと――?総統に向かって逃げろと言ったのか。誰であろうこの私に!」
「は、マインヒュラー」
「総統は逃げることはしない。それは国家、国民への冒涜だ!私は決してベルリンを離れぬ。たとえこの身が焼かれてもだ。君は考えたことがあるのか?ドイツ国家の終焉とは何たるかを。いや、君は考えていない。考えたならば正しい考えが常に君を導くだからだ。
そして勝利をいっぺんも疑ったりせぬ。それは弱者のなすことだ。
歴史は常に強者が作り、弱者は淘汰される。歴史とは常にそういうものなのだ!下がりたまえ。いいか、君はベルリンの防衛をつかさどる立場にない。たった今それがはっきりした。早く下がりまえ!」
ヒトラーの理性をかいたような激しい答弁が終わり、ハイリンチ大将はおずおずど場を後にした。
残された参謀たちにヒトラーは言った。
「無能な将軍どもは、いつも私の邪魔をしてきた。皆自らの保身のためにうそをつく。ロンメルもSSもハイリンチも。しかしそうはさせぬ。今この時より敵の火焔に対して火焔で反撃する!私が総指揮を執る!」
あっけらかんとする参謀たちをよそにヒトラーは言った。
「即座にドーラを用意しろ。強大な相手には強大な力でもって制するのだ。何?ドーラは連合国にとられないように廃棄しただと?ならば、マウスをだせ、一両しか用意できないのなら一両でよい。即座に用意を!」




