一話 ベルリンの最期
ベルリンに最期の時が迫っていた。
一九三九年に戦端が開かれた第二次世界大戦。最初はドイツ軍優勢であったこの戦争も、連合国の圧倒的な物量には勝てず、ドイツ軍は各地で敗退を続け、一九四五年になると、戦局は絶望的なまでにドイツ不利となっていた。
四方からは米英蘇をはじめとする連合軍が迫っている。
ヒトラー総統は既に、ベルリン死守命令を出して、自身は民衆とともにベルリンに残り断固として戦うと決定した。
同年四月十八日。その日から、ヒトラーの総統地下大本営のわずか数十数百メートルの位置に、ソ連軍の砲弾がしきりに落ちるようになった。これはソ連軍がベルリンの目と鼻の先に迫っていることを意味する。
ヒトラーはこれに狼狽した。直ちに作戦会議が開かれ、事態の打破が図られた。ヒトラーは各地に点在しているドイツ軍集団の一つ一つを目ざとく見つけ、それらに航空機による補給を行い、次いでソ連に対する反抗を命じた。しかし、それらは軍としての力を失い撤退しつつあり、航空機が投下した補給物資を手に入れたのもドイツ軍ではなくソ連軍であった。
総司令官のジューコフ大将を擁するソ連軍大集団は、四月二十五日になるとポツダム郊外にまで達した。
ジューコフはベルリンへの突入を命じた。戦車六千両、火砲数千門が一斉に火を吹き始め、ベルリンの町はさながら、ぼろ雑巾のようになりつつあった。