発覚
さて……煽りに煽ったはいいが、如何せんピンチは少しも切り抜けられてない。
俺がようやく奴にダメージを与えることの出来る武器を作り出せたから、むしろここからと言った感じだ。
シーガは強い。これは覆せない事実であり、その強さはおそらく……俺を超えてる。
俺より素早く、俺より重い攻撃で襲い掛かってくる。
だが、さっきのやり取りで、俺には少しの余裕ができ、シーガには少しの苛立ちを与えることが出来た。
精神面では、俺が勝っている。
「殺す……僕の腕を斬り飛ばしやがって……!」
苛立ってる今がチャンスだ。何とかして奴の動きを止めるか、倒すかして、トンズラこいてやる。
ただこいつには多分ブランシュの時みたいな待ち伏せ作戦は通用しない。だから決着はここでつけるしかない。
そして、じっくりやりあったらまず勝てない、ただでさえ今の俺には体力がないというのに、長期戦とか不利でしかない。
「来いよ、相手してやるぜ、ちゃんとな!」
「上等だ、僕も、少しちゃんと戦おう……この飛ばされた腕は僕の戒めだ、油断はもうしない!」
そう言って、奴は床に転がっていた鉄パイプを一つ拾い上げた。
「ちっ……」
不味い、俺は思った。
普段の剣であれば、あんな鉄パイプ苦もなく切ることが出来るんだが……如何せん俺が両手に握りしめているのはシーガの腕を斬り飛ばすために作り上げた専用武器。鉄を斬ることが恐らくできない可能性がある。
だが、切れる可能性の方が高い。やつ自身ロボットだ、素材が鉄のようなものであれば、鉄だって切れるはず!
「行くぞ、ダメロボット!」
「来い、雑魚!」
俺は一足飛びでシーガに近づき、そのまま両手の剣を振り下ろした。
だが、シーガはそれを片手の鉄パイプで弾き飛ばす。
俺はその後も各方向から攻撃を繰り返すが、シーガの反応速度がそれを遥かに凌駕し、鉄パイプ一本でその攻撃を捌ききる。
ある時は俺より早い動きで攻撃を躱し、更には反撃も加えてくる、むしろ攻撃しているこちらが押されているのでは、と錯覚するほどの強さを感じた。
だめだ、これじゃあ埒が明かないし、負ける。
「やったことは無いが、やって見るしかない」
俺は、左手の剣のみを『シーガの喉へ突き刺した剣』に変化させるイメージを作り出す。
イメージイメージ言ってるけど、俺の想像を超えるものは作れないし、下手すりゃ頭がパンクする。
一回だけ本当に考えすぎて倒れた時もあった。だから俺は毎日色々考えることで、いざという時のイメージ力を上げているんだ。イメージ力ってなんだよ。
俺は再度シーガに突っ込んだ。
激しい打ち合いがまた始まる。
本当に片手だけとは思えない。俺の両手の剣を本当に軽々とあしらっている。
「吹っ飛べ!」
隙ができたと見たか、シーガは攻撃に転じた。ここだ、ここで、書き換える!
左手に貯めたイメージを解放。今この時を持って左手の剣は、元の剣に戻った。
やつの鉄パイプの一撃に合わせて、俺は剣を振るう。
音を立てて衝突した。そこから……!
「はぁっ!」
鉄パイプを、斬り飛ばす!
「なっ!?」
驚きを隠せず、つい声に出してしまったようだな。
自分の武器を折られて、体制を崩している、今が最大のチャンス。
余る右手の剣で、奴の首を体から離して……!
「き、消えた!?」
一瞬、瞬きのほんの一瞬だった。
また俺はシーガを見失った。
これはもう、超スピードとかじゃ言い表せない、そうか、やつの力の一つは……!
俺は後方に向けて後ろ蹴りをする。
ガツンと、何かに衝突した。
俺が何度も蹴られた足だ。シーガのキックを、俺はようやく止めることが出来た。
「なるほどそういう事ね完全に理解した」
(ちゃんとわかってる)
「どうやら、バレてしまったようだな」
俺とシーガは、一旦離れた。
「瞬間移動の類だな、お前がしていることは」
「正解だ、まぁ気がつくのが遅いぐらいだが」
あっさりと認めるもんだな、でも確かに、それを知ったところでどうなるっている話だ。
対策のしようがない。つまりあの男は好きなタイミングで俺の背後に回ることが出来るってことだからな。
……ん? 好きなタイミングで?
疑問を覚えた。微かな疑問だが、この考えに間違いがなければ、これはいい情報、有効に活用できるはず。
さぁて、それじゃあもう少し情報をいただこうかな。
「それ逃げろっ!」
「ひゅえっ!?」
「ま、またか!?」
俺は目を瞑って小鹿のようにぶるぶる震えていた弟子一号を脇に抱えて、またもや全速力で先程開けた穴に向かって走り出す。
「目開けていいぞ! よく耐えた! さすが俺の弟子だ!」
「う、嬉しいけど……ギャー!? なにあの人!? 腕がないよ!?」
「そいつから目を離さないでくれ! 『見えなくなったら』俺に知らせろ、いいな!」
「え? 分かった!」
よし、頼むぞ俺の背後はお前に任せた!
「何をしているシーガ! 早く追え!」
「林田……真希ィ……!」
怒りのせいでレオルドの声に耳を貸していない、という訳では無いようだ。
確信に変わった、今、あいつは『追えない』または『攻撃出来ない』!
「あ、あれ? なんであの人追ってこなないの?」
「説明は後、とにかくこっから生きて帰るぞ!」
行ける。
俺の考えは『あんなテレポートみたいなチート技、そうポンポン打てるわけがない』というものだ。
発動条件、デメリット、何でもいい。何がなければそんなのマジでただのチートだ。
そこで俺は今まで瞬間移動されたと思われる機会を思い出してみた。
そして見つけたのは疑問と思わなければ、疑うことすら出来ない一つの真実。
「あいつは……それをした時、一定時間動かなかった!」
正確には、蹴りを繰り出してそれで終わり。ある時は煽り時間を稼いでいた。
せっかく背後に回ったんだ、蹴り飛ばしたならさらに追い込んで俺をボコボコに殴ればいい。シーガのような強くて速いなら、尚更だ。
それなのにあの男は、決して俺を追い込まず、そこに突っ立っていただけだった。
だが、それも時間の問題、時間が空けばシーガは全速力で俺に突っ込んでくるはず。
俺も全力で走って逃げなければならない。その為にこの弟子一号に『見えなくなったら知らせろ』と言ったのだ。
さて、俺またこのシャッターを潜ることになるな。
今回は待ち伏せなし、全力逃走だ。
「何をしてる! 早く追わんかシーガ!」
レオルドご立腹。ざまぁねぇな。その期待、もっと身近なやつにやるべきだったんだよお前は!
約五秒! 俺はシャッターの穴を潜ろうとしたその時……!
「ロリを……盾にするなんて、この外道がァァァァァァァァ!!!」
え?
シーガの叫びを耳にして、俺達はシャッターの穴をくぐり抜けて、夜の街に逃走することに成功した。
背後には、誰もいない。
次回少し遅れます、はいいつも通りです。




