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全ての人類に絶望を。  作者: うまい棒人間
狂ってしまった生き方と偏見と忍者とロリコン
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ブーメラン、乙!

「……林田真希、今ここで、お前を捕まえてやる」


 謎の黒髪の男は俺を指さしてそう言った。


「……初対面でそんなこと言われたの初めてだ」


 知るはずがない、本当に初対面だ。だって俺の反応速度、危機察知がこいつ相手じゃまるで働かない。そんな奴、俺は知らない。


 さっきの腹部への一撃と、顔面キックから、こいつの攻撃はなかなか重たいのが分かった。そして尚且つ速い。


 総じて強い。俺の蓄積ダメージも深い、不味い……ブランシュの時よりピンチだこれ。


「リンデンよ、今すぐ降伏するというのなら、攻撃はやめさせてやるぞ?」


 そんな俺に白旗で手を打った方がいいと、助言してくれるジジィの掠れた声が聞こえた。


「やだね、誰がお前なんかに白旗上げるかよ」


 一応返答はする。いつもなら煽りも入れるんだけど、今の俺には余裕が無い。


 そんな俺への降伏勧告より、興味深いことに気がついた。


「……お前、あのジジイの部下なのか?」


 このめっちゃ強い男、話が通じるか分からないが、とりあえず聞いて損は無い。


「そうだ、今は、な」


「今は?」


「それをお前が知る必要は無い、何故ならお前は僕にやられて、記憶を消されて元の世界に返されるんだからな」


 ……ほう?


「舐められたものだな……大人しくやられるほど弱いと思ってるのか?」


 イラッと来た、懲らしめてやる。


 さっきはこいつの攻撃で俺の武器が折られた。その上で今回の武器を決める、やつの動きは速い。対応するために小回りの聞く武器がいいな。


 普通の剣より、短めのをイメージして、その形を作る。小回りも大事だが重要視されるのは硬さだ。これ以上折られる訳にはいかない……!


 両手に剣を握りしめ、奴の攻撃を待つ。


 さっきは少し集中が足りなかった。集中しろ、それさえ出来れば見えない攻撃なんてない。敵の一挙種一動作、じっと見つめろ。


 推測して俺の大股十歩分ほど離れた先にいる謎の男は、右足を後ろに下げ、軽く膝を曲げた。徒競走でのスタートのポーズと似ていた。


 そして。



「……『ファースト・アクセル』」



 激しく強く地面を弾くように蹴りだし、まるでジェット機のように一直線に攻め込んできた。やはり速い!


 でも十分に対応できる範囲!


 一直線に攻め込んでくるなら、そのライン上に剣を出せばいい、あの速度じゃ急には止まれない。そのままスピード出し過ぎで真っ二つだ。


 タイミングを合わせ、俺は真っ直ぐ突っ込んでくる男に向かって剣を……!?


「なっ!?」


 今まで見えていた彼の姿が一瞬にして消えた。ブランシュのような気配遮断のような力を疑ったが、それなら確実に当たっているはず。


 速度が上がった? いや、それならば既に俺は殴られているはず。




「……遅過ぎる」


 その声と同時に、俺は背中を何者かに蹴られる感覚を覚えた。


 背骨がイカれるぐらいの一撃をモロにもらった。衝撃のまま一、二歩よろけ、また膝をついた。


「う、後ろだと……」


 有り得ない、速すぎる……。反応できない速度を体験したのは初めてだ。俺は今日で一体何回初めてを奪われるんだ……!?


 俺は後ろを振り向くと、そこにはちゃんと奴がいた。


 雑魚を見るように、膝をついている俺を見下している。


 俺は多分恨めしそうに、やつを見ているだろう。鏡はないけど、何となく分かる。



「全く……何故こんな雑魚に、僕が動かなければならないんです? ドクター?」


 興味を失ったと言わんばかりに、そんなことを言った……あぁん? 雑魚?


「それは、こいつが元々弱っていたからじゃろうな。そして『シーガ』よ、発言には気をつけろ。その言い方じゃとまるで儂の技術がこの雑魚を下回っていると、バカにしているように聞こえるからの?」


「ふふ、それなら良かったですよドクター。そういうつもりで言ったんですから」


「キサマ……」


 なんだ? このギスギスした空気は……?


 もしかして、このシーガって呼ばれてる男は、ブランシュのような厚い信頼で結ばれている部下じゃないのか?


 このこの俺考えと、さっきの「今は部下」というシーガの発言。


 切り傷と打撲の痛みの中で、俺はシーガは何かレオルドに従わなければならない理由があるのではないか、と思った。


 ……でも、だからどうしたと言うんだ。


 なんとかシーガにレオルドを裏切ってもらおうにも、

 ここでこいつに殺されちゃ話にならない。


 だから、逃げるにせよ裏切ってもらうにせよ。


「雑魚? たかが運良く三発当てた程度で調子に乗るなよ?」


 こいつを倒さなければならない。


「ふふ、済まないな、僕から見れば全ての存在が雑魚そのものなんだ。だから僕のいう雑魚という言葉は『平均』と変換してもらって構わないよ林田真希」


「……そうかよ」


「あぁでも、君は僕の攻撃を綺麗に三発もらいながらも僕を力を理解していない。なら君にお似合いの言葉がある。君は実に『馬鹿』だな」


「いいこと教えてやるよ、大口叩くのはな、勝ってからにした方がいいぜ。『馬鹿』に負けたとなりゃあ、言い訳ひとつ出来ないだろうからなぁ!」


 まだ足は震えている、でもそんなの関係ない。立ち上がり、シーガに向かって駆け出す。


 あいつは今武器を持っていない。この両手の剣を破壊する手段は、無い!


 一撃で決める、狙いは喉元。切り飛ばす右手に力が入る。


「……ふん」


 何もしない……? あと一歩でお前の喉に剣が届くという位置に俺が今いるというのに、シーガはただ突っ立っているだけだ。俺の攻撃なんざ、避けるに値しないと思っているのか?


「ッざけんなっ!」


 後悔すらさせない。俺はやつの喉元をめがけて、右手の剣を突き出した。


 奴はなんの抵抗もなく、俺の剣を受け入れてきた。




「……」


「嘘だろ?」


「遅い上に、脆いとはな」


 飛び散ったのは奴の首でも血でもなく。俺の剣の先。


 首の強度が、俺の剣の強度を超えた。


「ぐぅっ……!」


「本当に幻滅した。遅いから、攻撃が強いと思ったら、所詮この程度か……」


 一瞬のなぜ折れたのかと混乱した俺の隙を付かれた。


 シーガの拳が俺の腹部にまた直撃した。


「ごふ……」


 崩れ落ちることすらシーガは許さなかった。すぐさま俺が膝をつく前に俺の首を掴み、上へ持ち上げた。


 当然ながら息が出来ない。


 久しぶりだ、こんな絶体絶命のピンチは。


「残念だよ、林田真希。久しぶりの戦闘が、こんなにも雑魚なお前だったなんて」


 悪かったな……でも、お前こそ近づきすぎなんじゃないのか?


 既にブランシュとの戦いで傷を負ってるし、お前の攻撃でもうフラフラだけど。


 こんな所で死ねるかよ……!


 俺は左手の剣を俺の喉を掴むシーガの左手に当てた。


「切り飛ばしてやる……ってか? 先に言っておこう、それは本当に無駄だ。失敗とは、一度目は仕方なし、二度目は間抜け、三度目は本当に救いようのないやつがやる事だぞ?」


「し……るか……よ」


 確かに、同じ失敗を二度繰り返せば、それは間抜けだ。あいつから見れば俺は三度目の失敗を今しようとしている。


 でも俺は三度目を試みる。シーガの腕を切り飛ばす勢いで剣を振るう。


 だが、ギンという固い音を出しただけで、刃はやはり通らなかった。やつの腕を斬ることが出来ず、腕のところで剣の動きは止まった


「ぐぅ……!」


 まだだ、まだ行ける。早くしなければ、意識も既に朦朧としてきた。


 次は右手の剣を奴の腕に叩き込むが、これもまた音を出すのみ。


「チッ! 嫌いなんだよね、無駄なことしかしないやつってさぁ……!」


 切れたのはシーガの腕ではなく、シーガ自身。しかもプッツンの方。


「がはっ!」


 そのせいか、俺の首を絞める力が強まった。


「お前が何もしなければ大人しく気絶程度で済ませてやるのに、僕を怒らせるからだよ林田真希。文字通り、首を絞める。だな」


「おいシーガ! 殺すなよ、分かっているだろうな!」


 奥から、レオルドの静止の声が聞こえた。


「ふふ、出来れば殺しませんよ」


 本当に、仲悪いみたいだな。聞く気がないみたいだ、奴の言うことなんて。


 ……全く、失礼な奴らだなほんとに。


 勝利でも、確信したのか?


 たしかにこの状況、誰が見ても俺の負け、敗北又は完全敗北のどちらかだ。


 意識はほとんど飛びかかってる。


 でも、俺の思考は止まらない。止めちゃいけない。だって、それが俺の強み、それが俺だからだ。


「ん? こいつ……まだ僕の腕を切ろうとしているのか……?」


 もはや、あと一回が限度。呼吸困難で窒息する。


「全く、学ばないというか馬鹿というか……馬鹿と気づいていない馬鹿ほど頭の悪い奴はいないよな。お前の事だよ、林田真希」


「く、クク……」


「なんだ? 何がおかしい?」


 いやぁ、もはや笑うことしか出来ない。


 奴はやはり気がついていない。


 ふふ、少しもおかしいと思わなかったのだろうか?


 同じ無抵抗の状態の場所に向けた、『同じ力で叩き込む』一撃が、『同じ結果にならない』事を。


「……馬鹿は、どっちかなぁ……!?」


「何……?」


 俺は残る力で奴の腕に剣を当てる。そしてそのまま────



「!?」


 ───振り抜いた。


 固い音すらしない、シーガの腕は、奴の体から切り離された。


「グアァァァァァァァァァ!!?」


「げ、ゲホッ!」


 俺はようやく地に足をつけることが出来た。短い時間であったが、ようやく、と言えるほどこの時間が長く感じられた。


「はぁ……はぁ……ゲホッ! ゴホッ!」


 こ、呼吸が出来る……危ねぇ、マジで危なかった。


「グッ……き、貴様ァ……!」


 俺は少し驚いた。シーガの腕の切り口から血が出ていない。


「……お前、ロボットだったんだな」


「そんなこと、今はどうでもいい……! 何故だ、何故切れた! この時のために手加減したとでも言うのか!?」


「手加減? 違うね、これが俺の力だからだ」



 そう、これが俺の力、考えれば考えるほど強くなる力。


 俺はシーガが初撃で俺の武器を破壊してから、ずっと頭の中で考えを巡らせていた。


 まず最初に考えたのは『折られないためにはどうするべきか』という問題。


 俺の武器は『想像力』魔力を集め、明細で明瞭なイメージを固めてそれを作り出す。


 だからこそ次の武器はさらに硬い剣を生み出した。それが二本目、でもまた折られた。


 三本目、次は折られなくなったが、刃がやつには届かない。


 四本目、まだ明確なイメージがなってなかった。同じく刃が通らない。


 そして、最後の五本目でようやく『奴に折られず、奴に通る剣』を作り出せた。


 そう、俺は同じことを何回も繰り返したわけではなく、違うことを五回行っていたのだ。


 今俺の手にあるのは、『シーガだけを切り裂く剣』他のものを切る力を限りなく無くし、ただ一点、シーがだけを倒すために特化した一振り。


 それを腕に叩き込んだのだ、切れないわけがない。



「お前は気がつくべきだったのさ、俺がお前の腕に最初に打ち込んだ一撃の時に」


 奴の顔が歪む、そうさ、その顔が見たかった!


「普通は気がつくぜ? だって、同じ無抵抗の状態の喉の時はあっけなく折れた剣が、腕の時は折れなかったんだ。おかしいと思わなかったのかぁ?」


「ぐぬぬ……!」


 いいね、その悔しそうな顔。さっきまでのクールな顔と比べると非劇的ビフォーアフターだ。


「さて、そんなお前にある言葉を送ろうか」


 これが言いたかった、シーガが俺のことを雑魚とか言ってくれた時から、この言葉で煽りたかった。


 酸素が足りない、まだ俺も呼吸が荒いからな。いっぱいいっぱい息を吸って、一言一句丁寧にお前に伝えてやるよ、シーガ。





「ブーメラン、乙!」

土曜に投稿(大嘘)


ほんとごめんなさい……これからも遅れることは確定してますが、何卒よろしくお願いします。

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