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全ての人類に絶望を。  作者: うまい棒人間
狂ってしまった生き方と偏見と忍者とロリコン
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二度目の同じ過ち

「えーっとねー……こっから右行って二つ目の信号を曲がると到着みたい」


 歩き始めて二十分ほど、どうやらあと一息で辿り着けるらしい。


 俺が今心配してるのは帰り道だけど、そこは俺の有能な弟子一号が歩いているルートをペンでなぞってくれているから安心した。


 ほんと有能、してほしいことが分かってる、殺すのがおしい。連れて帰りたいレベル。


「ししょー、このへんでいい?」


「ありがとな、この辺でいいよ。お前凄いな、この辺の地理全部頭に入ってんじゃないか?」


 歩き始めて、何分も立たないうちにこの弟子は全く地図を見ないままここまでたどり着いたのだ。


 ものすごい暗記力、又はこのへんの地理が頭に入ってないとできない芸当だ。


 よしよしと弟子一号の頭を撫でた。


「……ふふーん」


 自慢げな顔をしていた。褒められたのが嬉しかったのだろうか、とても可愛い。


(無い)胸を貼るその仕草は森谷朱里を沸騰とさせたが、こっちの方が断然いいな、良さ味が深い。


 森谷朱里はなんて言うかこう……可愛いんだけど……俺達の関係が邪魔してるのか、好きになれない。嫌いじゃないけど好きじゃない。


 それでも、なんかこういつも森谷朱里を比較に出す辺り、気になって入るのだろうか……?


「ししょー……そろそろわしゃわしゃするのやめて欲しい、照れる」


「え? あ、わ、悪い」


 考え事していると周りが全く見えなくなってしまう。悪い癖だ。


 戻った視力で弟子一号を見ると、暗闇でよく見えなかったが、とても恥ずかしそうな顔をしていた。


 ちょっとだけ申し訳ない気持ちになった。


 さて、馴れ合いは終わりだ。ここから先は侵略者リンデンとして行動しなければならない。


 目を閉じて、深呼吸を一つして、ゆっくりと目を開く。


 スイッチを入れる。景色が変わった気がした。


「……じゃあ、行ってくるな。来るなよ、絶対だぞ」


「……ふり?」


「マジ! 冗談抜きで来るなよ!」


「わ、分かってるって!」


 全く……ふざけるなよ、お前のためにも言ってやってんだから。お前が来たらお前も殺されるかもしれないんだぞ?




 ……景色が、戻った気がした。




 ✖✖✖




 どうも締まらない雰囲気のまま、俺は弟子一号に説明された通りの道を進む。


 深夜というのもあって、この辺の通りはとても嫌な雰囲気に包まれてる。路地裏、とでも言うべきか。後ろから不良が襲いかかってきそうな感じがする。


 街灯も無いことも無いが、少ない。暗闇が際立つ。


 虫の鳴き声も聞こえる。夏も近づいている証拠だ。


 ……こんな時に、何考えてるんだ俺、気に止めるな、そんなこと。今考えるべきなのは、そういう事じゃないだろう


「ここか」


 遂に到着した。レオルドの本拠地。


 大きな倉庫のような外見をしていた。シャッターが閉められてる。


 シャッターは外からのアクションをカットするものだと俺は思っていたが、ここにレオルドがいるとなると話はまるで変わってくる。このシャッターは内部の情報を遮断する防壁だ。


 そのシャッターの前に立つと、音を立てて上に上がっていった。センサーやカメラでもついているのだろうか。あたりを見渡すが、暗くてよく見えない。


 シャッターが俺の身長ぐらいまで開いた。中を見ようとしても、これもまた暗くてよく見えない。


 でもここにレオルドがいると思うと、動こうとしても動けない。


 ガタンと最後の大きなおとがなり、唸りが止まる。全て開きった。罠の危険性も考慮しつつ、俺は倉庫に足を踏み入れた。


「よく来たな」


 聞き覚えある声が聞こえる。低い男性の声。その男の名を声に出す前に、真っ暗な倉庫に光が点いた。


 少し眩しくて目を細めた、その細めた目には異様な光景が映っていた。


 真っ暗な時は何も無い空間が広がっているイメージがあったがそれを大胆に裏切ってきた、ここは既に奴の研究所と化している。見たことのないような機械、道具が転がっていて、その中心には、俺を呼んだ張本人、レオルドが座っていた。


 その姿は明らかに無防備。俺とレオルドの間に遮るものが何も無い。


 でも、何も無いのはありえない、あの狡猾なジジイが俺に殺されるための滑走路を作るわけがない。


 何かあるのは分かった。突撃は危険と判断した俺は、まず会話を試みる。


「レオルド、久しぶりだな」


 距離は遠かったが、レオルドの意外そうな表情は見えた。


「……ふん、貴様のことだから声をかけた瞬間に攻撃でも仕掛けてくると思って色々な罠を仕掛けておいたのだが、無駄になったようじゃな」


 やっぱりか。


「ほんと、隙のないクソジジイだな」


「一言多いぞクソガキ、目上の人には経緯を払わんか」


「分かったよクソ」


「……ふむ、儂も改めなければならないようだなクソ」


 どうやらあちらも沸点は低いようだ。イライラが伝わってくる。


 ……向こうから襲ってくれば、正当防衛で殺せるんじゃないか?


「はい! そこまでそこまで!」


 しかし、そんな餓鬼と爺の暴言合戦のヒートアップを後ろの女性の声が止めた。


「ブランシュ、お前も来てたのか」


 後ろには今日俺をここまで連れてこさせた女性、麻枝寧々ことブランシュがいつの間にか立っていた。


「一応ね、いざとなったらおじいちゃんを守らないといけないし」


「……結局、何一つ信用されてないのね、俺は」


 殺さないことを了承してるからこそここに来てるんだ、なのにこの女はそれすら信じていないという。どうすりゃいいねん。


「当たり前じゃない、今日まで殺すことしか頭になかった男が、そう簡単に心を入れ替えるわけないでしょ? そして、何より今あなたはここにいる誰よりも殺気を放っている」


 マジか、自分では意識していなかったけれど。やはり殺意というのは垂れ流れるものなんだな。


「さて、そろそろいいかなリンデンよ」


 その声によって、ブランシュとの会話のために後ろに向けていた顔を倉庫の奥にいるレオルドに向ける。


「罠はもう発動しないわ、近寄って大丈夫よ」


 ブランシュはそう言ったけれど、信じていいものか。


 でもここでグダグダ言ってても仕方ない。罠がそこにあったら回潜ればいいし、俺にとってはレオルドを殺すための言い分になるから逆に嬉しいまである。


 歩いてレオルドに近づく、何も起こらなかった。


 俺は安心と失望のため息をこぼす。


「それでは、お前に伝えようか……」


「待てレオルド、その前にちょっと聞きたいことがある。それについて教えてほしい」


「何?」


 言葉を無理やり遮ってしまったからか、少し不機嫌な様子だった。


「そこにいるあんたの孫から色々言われたんだ、俺は何も知らないってな」


 だから知りたい、多分彼女が言っていたことは俺が知っておかなきゃいけないことだろうから。


「……それは、ワシの話を聞けば自ずとわかる」


「そうか、分かった」


 それならもう言うことは無い。俺の役割は聞くことだけになった。


 さぁ、聞かせろ、と思ったが、今度はレオルドが煮え切らない。


「すまんリンデン、最後に確認させてほしい」


「何をだよ」


「覚悟だ」


 覚悟、とな。それは一体どんな覚悟が必要なのかな?


 絶望に勝つ覚悟か?


 怒りに耐える覚悟か?


 何にしろ、そんな物あるはずがない。


「無いね、でもそんなのは関係なくあんたが伝えたいんだろ? レオルド」


 結局のところ、覚悟なんざあろうがなかろうが、ここに来た時点で聞かなきゃいけないことになっている。


 強制イベントなら、従うさ。


 何よりこいつが俺を呼んだんだから。


 俺のその答えに、レオルドは鼻で笑って少しだけ口端を歪めた。


「……毎度毎度、人を怒らせることしか出来ないやつだ」


「聞かせてもらう、俺の知らないこと全てを」


 やっと聞くことが出来る。知らないことすら知らなかった謎を。


 これを聞くことで俺の心の何が変わるのか。知りたい、ここで知らなきゃ多分何も始まらない。


 いや、おそらく俺は始まってすらいなかったのかもしれない。


 俺は新たな知識を得られる。


「あぁ、まず全ての始まりは……」





「誰だッ!!!」





「!?」


「し、侵入者!?」


 全ての始まりがブランシュの声に遮られた、誰かが、この倉庫にいるはずの無い四人目が現れたからだ。


 レオルドも驚いた顔をして俯きがちだった顔をすぐさま上げる。


 俺も後ろを振り向く。


 そこに居たのは。



「……なんで?」



 あぁ、そうだ、忘れていた。忘れてしまっていた。


 知ってたじゃないか、こういうことになることぐらい予想できてたじゃないか。


 この地球に降りてきて、俺を困らせた出来事の再来じゃないか。


 同じ失敗を二度した。


 人間はどうして……来るなと言われれば、来るのだろうか。


「し、ししょー……?」


「なんで……なんで来た……?」


 そこに居たのは、有能な弟子一号。


 いや、訂正しよう。元有能な弟子一号。

テスト終わったらペースを戻す努力します。

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