別世界にて② 結局まともなやつは存在しない
「あぁ分かったよ、お前らに頼ろうとした俺が馬鹿でした」
リンデンはそういうと一人で考え始めた。
「適当でいいんじゃないの別に、考える必要ないじゃん」
「あのなぁねぇさん、俺は一般人として生きてながら疑われないように人間を減らしていくってのが俺の作戦なの、一般人っぽい名前の方が普通の人間らしいだろ? そういうことだよ」
フォーレの発言に丁寧に答えるリンデン、名前も作戦のうちだと言ってのけた。
けど、彼の頭の中ではキラキラネームばかり浮かんでいるというのはここだけの話である。
「ふーん、ま、頑張ってー」
「おう」
両者適当に流す。
会話が終わり静かになってリンデンも思考を再開しようとしたその時に。
「おいバカ息子」
ウッドルが声をかけてきた。
「なんだてめぇ……こちとら真剣に考えてんだよ、怒らせるのもいい加減にしろよ……」
怒りで口元が歪み始める、握った拳はウッドルをぶん殴るためにしっかりとパワーが込められていた。
「いやいや、お前を怒らせようとしたわけじゃなくてな、ただお前が気に入らなくてな……」
「正直でよろしい、死ね」
ウッドルの首を左ででつかみ、豪快に上へ上げる。
苦しそうにするウッドルをよそに、手の空いている右手でウッドルの腹部に1発1発重みのある拳の一撃を叩き込む。
「ん? どした? ギブアップか?」
「お、俺が悪かった……やめろ、いややめてください」
「よろしい」
左手に込めていた力を抜いて、ウッドルを地に戻す。土に還すという意味ではない、ただ下ろしただけである。
「血の気の多い奴ら……」
そんな光景を見ていたフォーレが、ため息とともにそんなことを言った。
「ねぇさん、あんたも人の事言えないけどな」
「息子に同意」
完全にフォーレはブチ切れていたが、こいつらの思い通りになるか、と思ったのか深呼吸して怒りをなんとか抑えた。
そしてキリッと目を開き。
「じゃあうちの家族みんな血の気の多い奴らってことで終わりにしましょう、これ以上争っても誰かが傷つくだけよ」
そんなことを言った。
「急にクールな参謀気取ってんなよ馬鹿が、俺の3分の1ぐらいの成績を収めてからいうんだな」
「う、うるさい! 真似すんな馬鹿弟!」
「真実だろうが、なぁ親父」
リンデンが悪い顔でウッドルに回答を求めた。
「そうだな、前回の座学の成績はフォーレ、お前はこのバカ息子の4分の1ほどしかなかった」
「い! う! な!」
フォーレの顔面パンチがウッドルを襲った。とても無慈悲なトリプルパンチだった。
ウッドルは今度こそ気絶して、その場に倒れ込む。
その光景を目の当たりにして、リンデンはガタガタと足が震え出した。恐怖を抱きながら鬼のような雰囲気を出すフォーレを指さし。
「マジで4分の1なの?」
「眠って忘れなさい」
クールに、冷静に、フォーレはリンデンの顔面に万力のような力を込めてグーパンを食らわせた。
最後まで立っていたのは、フォーレであった。
ゴングが、鳴り響く。
× × ×
「すまなかったと思ってるわ」
「おう土下座しろよ」
「次は貫通させるわよお父さん?」
フォーレの笑顔にウッドルはひるむ。勝てないと本能で悟ったのであろうか。
「違う! 今は俺の名前考える時間だったはずだぞ!話がそれすぎてもうだるくなってきたわ!」
「確かにね……もう静かにするから勝手に考えなさい」
「言ったな? マジで静かにしろよこの血の気の多い馬鹿ども」
「あんたのそういう発言が友達を減らし私の怒りを買っているのよ……? まぁいいわ、けれどこれだけは言わせてもらおうかしら」
「なんです?」
「あたし達の家族は全員血の気が多いと言ったけれど……例外はいるわよ」
ドヤッ、とした顔でそんなことを言った。男達2人はそれを聞いてはぁ、と呆れたため息をはく。
「「当たり前だろ」」
息ピッタリで、そう言い切る。2人はお互いの顔を見あって、にらみあって、舌打ちをしあった。仲は本当に悪いらしい。
「そりゃあ俺たちとはほんとに血が繋がってんのか分からないぐらいピュアな存在だからな……お、噂をすれば」
パタパタと音を立てて、小さくて可愛らしい女の子がリンデンたちの方へ向かってくる。
すると、先程までのピリピリした空気はどこに消えたか、一瞬にして華やかな空気になり、喧嘩していた3人にも笑顔が戻る。
「ただいま!」
その少女が笑顔でそう言うと。
「「「おかえりぃぃぃぃぃぃ!!!」」」
3人は満面の笑みで少女を迎えた。
あと2話続きます、別に読まなくても構いませんが読んだ方が後の展開を理解しやすくなると思います