友達だろ?
重い足取りで、俺はついに部室にたどり着いた。
扉を開けるとそこにはいつもの二人組……二人!?
森谷朱里復活早いな……。人間を超えた頑丈さといっても過言ではない。
そんな俺の視線を感じたのか、保健室で少し眠ってちょっとは楽になったはずの目元がまた大きくゆがむ。
朝のころと何一つ変わらん、でも憎しまれるようなことした覚えないんだけど。
だから無視しよう。俺は意識して森谷朱里との視線を外す。
「悪いな、少し遅れた」
「ぜ、ぜぜぜぜぜぜぜ全然大丈夫ですよ?」
ん? なんか結城萌花の返事がぎこちない。いつものことだけど今回は明らかにおかしい。
「ヒューヒュー」
その隣で冷や汗を滝のようにかいて吹けてない口笛をしている森谷朱里。
身体中震えている。かつて見た初期微動のように震えている。
こいつまたなんかいらんこと言ったのか?
「まぁ、いいや。さて、今日お前をここに呼んだのは……」
「わ、分かってますっ。アニメのブルーレイディスクを貸して欲しいんですよね、ロリアニメの!」
「お、おう……そうなんだが……」
……待てよ?何でこいつはそれを知ってるんです?
森谷朱里が言ったんなら、森谷朱里に渡せばいい。
森谷朱里がそのことを喋っていないなら知っているはずがない。
こいつが知っていてなおかつ俺に対してもそのアニメのブルーレイディスクを貸してくれる。それは、つまり……。
「森谷朱里……まさか、お前……!?」
俺は再び森谷朱里に視線を合わせる。目が合うと同時に彼女は手を合わせて謝ってきた。
「どどどどどうしたんですか林田くんんんんん? そんなこの世の終わりみたいな顔おおおおおおして」
お前もこの世の終わりみたいな喋り方してるけど……いや違う!
だが、俺の思っていることが勘違いという可能性だってある。そしたらもう自滅だ、目も当てられない自滅だ。
確認のため、森谷朱里にこっち来いと手招きする。
森谷朱里は少し唸っていたが、すぐに収まり俺の元に歩み寄ってきた。
「……萌花、少し待ってな」
「な、内緒のお話……! いいですよ! 存分に!」
お前が思っているメルヘンチックなものじゃないから。
許可は得た。俺と森谷朱里は部室から出る。
「さてと……反省会しようか……」
「待って、言い訳させてください」
誰がさせるかこの野郎。
もうこの時点で彼女が何をしでかしたのかはもう分かった。いや、いつもみたいに悪い予感とかそういうのじゃなくて、今回は確信があった。
「同居がバレたみたいだな」
「ううう……ごめん」
「はぁー……」
ため息しか出てこねぇ……。マジ使えねぇこのポンコツチビ。
「でも、それだけならまだどうにでもなる」
問題は俺達の関係性までバレているかどうかだ。
バレてたらどうすることも出来ないけど、バレてなければまだどうにか出来る。
「どこまでバレたんだ、この無能チビ」
「ぐっ……多分、私とあんたの関係性はバレていないと思う……」
「証拠はあるか?」
「……目と目があって、最初に彼女が言ったのが「えっ!? 一緒に住んでるの!?」だったから」
なるほど、俺との関係性に関してのことの心の声を聞かれたというのであれば、まず一番最初に驚く点は俺の正体のはず。というのが森谷朱里の考えのようだ。
その意見にはまぁ、俺も同意だ。
少なくともどっちにしろ、俺達は結城萌花に口止めをさせなきゃいけない。
そうしなければここには居られなくなってしまう。
俺が関わっていない事件を見るのは好きだ。でもそこに俺が関わると話は別。しかも今回は原因はほぼ俺にあると言ってもいい。
自分が原因で森谷朱里に何らかの影響がかかるのは流石に気分が悪いというもの。
「……どうすっかなぁ」
バレたのが結城萌花、というのが本当に不味い。
彼女の心の声が聞こえる力にかかればどんな俺達の嘘でもバッチリと見抜いてしまう。そうしたらまた面倒なことになってしまう……。
「どうしよう……」
「もうどうしようもねぇな。結城萌花が深入りしないことを祈るとしよう」
「うん……」
ガックリとうなだれ、森谷朱里は今にも泣き出しそうになった。
さて、彼女は結城萌花の力に向き合うと決めた。でも今その力によって高校生活が崩壊しようとしている。
萌花を責めれば解決はしないが多分楽になれる。むしろその行動こそが人間と言えるものなんだと俺は思う。
でも、彼女は約束を守ろうとしている。今度は裏切らない友達になると。
そして友達として、自分よりも結城萌花を優先しようとした。
「そんなしょげた顔すんなって、大丈夫だよ」
「なんで、そう言えんの」
理由は二つあった、一つは簡単だ。萌花がその情報を漏らす友達がいないということ。
流石にこれを言うと真剣に悩んでた森谷朱里に怒られてしまいそうなので言わない。
だから二つ目の理由だけを言う、理由というには程遠い、理解し難い感情論を。
「友達、なんだろ? お前らは」
「う、うん! 」
きっと、向こうだって森谷朱里を悲しませるような行為はしようと思わないだろう。
二人が本当の友達でお互いを思いあっているというのであれば、この件の決着は「何も無い」で終わるはず。
「だよね、友達なんだから、きっと分かってくれるよね! 信じるよ! 萌花ちゃんを!」
「んじゃ、行くか」
「あ、ちょっと待って!」
は? 今度は何? トイレか?
「あ、あー……えっと……」
妙に口篭るな、なんか言いにくそう。もじもじしてるのはなんかこいつらしくない。
「……言いにくいなら言わなくてもいいぞ」
「え、そ、そう? あ、ありがとう。じゃあいいわ! また今度ね!」
「なんか調子狂うな……」
先程思いっきり閉めた扉を今度はゆっくりと開く。
ハッタリはあまり得意ではないんだけどな……。




