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全ての人類に絶望を。  作者: うまい棒人間
狂ってしまった生き方と偏見と忍者とロリコン
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トラウマ忍者

 結局、俺達は眠れなかった。


「ぐすっ……」


 延々と彼女の泣き声が寝る前から目覚ましとしてなり続けた。


 もう森谷朱里の目は腫れている。痛々しい。


「……ごめん、今日はごはん作れる気がしない……」


「昨日あんなの見たら、そうなるわな……別に謝んなくていい」


「ん……ありがと……」


 とてもこいつらしくない、こんな素直だったかコイツ。


 いつもならご飯作らない程度でこいつは謝罪しない。人格が変わるほど怖くて、嫌だったんだろうなぁ……。


「今日、学校休むか?」


「……いや、行く」


 死にそうな声でそう言うと、ふらふらと自分の部屋へ歩き出した。


 でも、延々とここで泣き続けてたのか。自分の部屋に戻る力すらなかったのかな?


 ……もしかして、慰めて欲しかったとか?


 それはないか。


 俺が眠れなかったのは森谷朱里が泣き続けた、というのもあったけど、あの忍者が頭から離れない。というのがメインだった。


 目を閉じると浮かんでくるんだ。


 覆面をした黒服が。


 荒い息遣いでカワイイカワイイと連呼して。


 更に素早く手を動かし、悪寒を発する挙動をする様が……。


「ヒィィ!?」


 想像するだけでおぞましい。カワイイカワイイと言われていたのが俺であったらまず精神崩壊するレベル。


 森谷朱里は目を瞑る度にカワイイカワイイと言われていたのだろうか。今回だけはあいつに同情する。原因俺みたいなところあるし。


 よし決めた、あの忍者の事は『シノビゴキブリ』と言うことにしよう。


にんGジャーという訳だ」


 寝てないから全然頭が回んない。こんなつまんないことしか言えないぐらいに。


 そもそも「ジ」ですらない、Gなんだから「ヂ」だろが。


 でも結局容姿、行動がゴキブリなんで命名は変わらずシノビゴキブリ。ここは譲れない。言い難いという点を除けばバッチリなネーミングと思ってる。


 あいつは俺の、いや俺達の忍者のイメージをぶち壊した。罪は重い。悔い改めろ。


「今日は俺が先に行くわ、マジで辛かったら連絡しろよー。俺伝えといてやるから」


 そう言って俺は学校に向かう。


 俺も俺で、調子が狂ってるな。





 ✖✖✖





 教室の扉を開ける。今日もうちのクラスは賑やかだ。


「おっ! 林田おはよう!」


「おはよう、えっと……早坂だっけ?」


「そうそう! やっと名前覚えてきたな! 」


 テストの件を終えて、俺は何故か最近クラスで有名人となっている。


 そもそも、転校生という時点で本来有名人になるはずなんだけど、俺自身それを望まずぽつんと過ごしてきた。


 しかし、テストの点数開示の際に、遂に俺の名前が公の場に出されてしまった。しかも二位というかなり上位の場所に。


 そしてその日から俺はクラスメイトによく話しかけられるようになったのだ。男女問わず人気者になってしまったらしい。……地獄かっ!?


「なぁ林田! 今日の一時間目なんだっけか!?」


「ん?あぁ、一時間目は現代文だ、というかいい加減覚えろ、毎日聞きにくんな」


「お前だってそろそろクラス全員の名前ぐらい覚えろって!」


 さっきからグイグイ話しかけてくる男は「早坂」という名字だ。そう、名字しか知らない。ごめん実はお前の名前すら覚えてないんだ。あと覚える気もないんだ。俺、君みたいなエンドレスハイテンション野郎は生理的に受け付けない。


 でも悪いやつではない。あまりにも俺と付き合う人人間がいい奴ぞろいなので、人間がクズという俺の考えは偏見だったのかもしれないと時々思う。


 でも、何度も言うが、こいつらが地球を、俺達の世界を間接的に滅ぼそうとしているのは事実。


 どんな事があっても最終的な目的は変わらない。


「ん? どうした林田? よく見りゃ顔色とか悪く見えるけど」


「気にすんな、セミの鳴き声がうるさかっただけだ」


「今6月ぐらいなんだけどセミいるのか!? そっか……じゃあな! 」


 別れの挨拶を済ませて、早坂は別の友達の所に向かった。


 これでやっと一時の一人という自由が……。




「は、林田くん、おはようございます!」


 ……あぁ、忘れてた。毎日欠かさず挨拶してるくせにぎこちない挨拶しかできない学年トップの学力を誇る俺と森谷朱里の唯一の友達を。


「ん、おはよう萌花」


「おはようございます、き、昨日貸したラノベ、どうでした?」


 こいつはよく俺に本やマンガを貸してくれる。そのおかげで俺は地球の、いや日本の文化を学ぶことが出来た。


 素晴らしい文化だと思ってる。アニメとかアニメとかアニメとか。


「あぁ、いい内容だったんじゃねぇの? 何よりヒロインが妹という点が素晴らしい」


「はい!喜んでくれたみたいで嬉しいですでも、林田くん、妹以外も可愛い作品も読んだ方がいいですよ?」


「勘違いしないでほしいんだけどさ、俺は妹キャラが好きなだけで、他のキャラが嫌いというわけじゃないんだ」


 ただ他を凌駕して妹が好きというだけで……。そう言うと結城萌花はあんぐりと口を開けて「意外」とそう言った。


「てっきり、禁断の恋にしか欲情しないシスコンだと思ってました……」


 酷い言われようだ。


「お前、やっぱりおかしいよ」


「えへへ……」


 褒めてねぇから。それぐらいお前なら分かるだろ?ちゃんとお前の目を見てるからな俺は。


 そんないつも通りの朝のやり取りを交わしていると。これまた朝の日課である、激しい教室の扉の開く音が鳴り響いた。


 そしていつも通り静まる教室。負のオーラを纏った森谷朱里クラスのドンのお出ましだ。


 気をつけろよクラスメイト共。今日の彼女はいつもより機嫌が悪いぞ?


「お、おはよう! 朱里ちゃん!」


「……うん、おはよう、萌花ちゃん」


「ど、どうしたの?すっごく機嫌悪そうだけど……」


「気にしないで、ちょっと昨日色々あってね」


「はぁ……? 」


 ゲッソリとしている森谷朱里に心配をしながらも、何があったのか気になるご様子。


「ごめん、萌花ちゃん。喋るのすら辛いから。今日は放課後まで放っておいて……」


「は、はいわかりました」


 そしてそのままふらふらと自分の席について、突っ伏して、二秒と待たずに彼女は眠りについた。


「ど、どうしたんですか?」


「……放課後話すよ」


 あのシノビゴキブリを退治するには、また彼女の力が必要だからな。


 キンコンカンコンと、チャイムがなる。また一日、学校生活が始まってしまう。


 恐ろしく、眠い授業の始まりだ。


次回は火曜日です

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