忍者さんとの決着
リビングに鋭い音が鳴り響く。
「ど、どっち……」
森谷朱里が顔を寄せて場に出ているカードを見ようとしてきた。
しかし結果は、俺達はとっくに知っている。
「上にあるカードは……!?」
「チッ」
忍者さんが悔しそうに舌打ちをした。
でもこの状況でどうして舌打ちが出来るのか俺には理解が出来ない。
「上にあるのは……嘘、7……?」
上にあるのは俺のカード。つまり早く出していたのは忍者さんであり、この勝負は悔しそうにしている彼が勝利していたのだ。
「さすが忍者さんだな」
あぁ、負けた。忍者という生き物はどうやら俺よりも早く動けるらしい。もっとも6を置くタイミングを自分で知っていたから、というのももちろんあるだろうがそれを差し引いてもきっと彼の方が早かった。
「……おい、林田真希」
少し、嫌な雰囲気を感じた。ここに来てゲームに初めて勝ったのだからもっと喜ぶかと思ったんだが、忍者さんの表情は暗かった。いや、何か少しイラついているようにも見える。
「はぁ、何ですか?」
「ふざけるなよ!?」
ドン、と力強く机を叩いた。その衝撃は森谷朱里のよくやる机ドンとは比にならない。叩いたところから真っ二つに机が割れた。
この机もついに寿命ですか……。
「僕は本気で来い、と言ったんだが?」
「え?いや、本気だったよ?思いっきり腕振ったし」
「嘘をつくな!」
さっきから何言ってんだこいつは……?俺は嘘なんかついてない、容赦なんてせずにフルパワーでスピードをやった。だと言うのに、こいつは否定ばっか。しかも本気を出さなかった程度でここまで切れるもんなのか?
なんかムカついてきた。忍者は好きだけどこいつは嫌いになりそうだ。
「じゃあ聞こうか忍者さん?俺が本気を出していないとして、本気を出していない理由がお前には分かるというのか?」
つい、喧嘩腰になってしまう。
「あぁ、分かる」
……ほう?結構自信満々に返答してくれた。少し意外だな。
「じゃあ聞かせてもらおうか?でもどう足掻いてもお前の回答は正しいものにはならないけどな」
答えは俺自身が知っているのだ。俺自身が本気を出していると自分でわかってる。
これ以上の確固たる理由があるだろうか?
忍者さんは席から立ち、俺を指さして。
「……それは僕に与えられたデータとちごブッ!?」
……なんか言おうとして、スカイアッパーを食らった。彼の体は宙に浮き、そのまま背中から地に叩きつけられた。
「ごふっ!?」
一発KO。
「謝罪もなしとか、アンタそれでも忍者?」
スカイアッパーを放った森谷朱里選手は、負のオーラを纏って佇んでいた。さっきまでの忍者さんのファンとしてのキラキラしていた彼女はもういない。ここにいるのは殺意を持って忍者に接する度の超えたアンチだった。
まぁこうなることは何となく分かっていた。俺自身忍者さんの相手してて頭から飛んでたけど、あの男は森谷朱里の家の家具を破壊した。
それだけで十分だろ、半殺しにされる理由なんて。
「き、貴様ァ……何をするっ!?」
何とか体を起こすも、彼の体は震えている。相当なダメージが入ったと見える。
「何をするっ!? ……ですって?」
やばいオーラが増した。怒りが、怒りが集まっている。殺意へと変貌してる。
ここまで来た彼女を止める方法なんて、もはや無い。
「こっちのセリフよこのショタ忍者、アンタ一体何様のつもり? 」
「だ、誰がショタ忍者だ! そもそも僕はお前達と遊ぶためにここに来たわけじゃない! 僕はな……」
「だからまずは謝れって言ってんでしょうが!」
森谷朱里の握りしめていた二つのフォークが忍者さんに向かって放たれた。
両方とも忍者さんの頬をかすめ、床に深く突き刺さった。
いつも思うが、こいつの投擲物、強すぎ……?
「すみませんでした」
「最初からそういえばいいのよ、全く……」
忍者さんはまさに日本の象徴であるDOGEZAを披露してくれた。少しだけ肩が震えている、おそらくスカイアッパーの時の衝撃とは別の震え。恐怖によるものだろう。
ちなみに俺も今震えてる。恐怖によるものだ。
やっぱりこの森谷朱里という女は、天敵だ。
次は土曜日に投稿します。




