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全ての人類に絶望を。  作者: うまい棒人間
狂ってしまった生き方と偏見と忍者とロリコン
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自分を取り戻す物語

第三話開幕。

物語はようやく動き始めます。新しく、重要なキャラが増えます。

「…ここは?」


 僕は久しぶりに目を開いた。目を開くとそこには一面の白。どこを見ても真っ白な空間。


 体を起こして、自分の体が正常に動くことを確認する。正常だ、長い間眠っていたとは思えない。


 しかしただ一つだけ、正常じゃないところがあった。


 心の持ちようが違った、僕がこの世に生まれた理由と、今僕が思っている感情が一致しない。おかしい。


 僕はロボットだ。ロボットのメリットとも言える複製可能のシステムを捨てて生まれた唯一無二の存在がこの僕だ。それでもロボットはロボット。初期のプログラムを実行するために生まれてきたのに、今ある『初期のプログラムと思われるもの』が僕のかつて抱いていた生きる意味と違う。


「誰が、書き換えた?」


 記憶を探ろうにも、僕は恐らくその間スリープにされていた。誰がやったかわからない。


 外に出れば何か分かるかもしれない、そう思って僕は横になっていたベッドから飛び降り、じっくりと周りを見渡す。


 白、白、白。一面白の景色の中に黒い点を見つけた。


「……開いた」


 おそらくその黒い点はドアノブだったようだ。そして今そのドアが開いた。


 中から出てきたのは老人だ。見覚えがない。僕の創始者ではない。


「あなたは、誰ですか?」


 一応目上の人には敬語を使うようになっている。その言葉に老人は一泊おいてこう答えた。


「レオルドという。お前のプログラムを書き換えた男だ」


 まさか、いきなり出てくるとは思えなかった、嘘をついているようにも見えない。どうやらこの老人が本当に僕のプログラムを書き換えたのだろう。


「……あなたは、とてもとても愚かですね」


「ほう、どういう事かね?」


「僕はただのロボットじゃないということです」


 僕にはロボットにあってはいけない感情を持ってしまった。怒り、悲しみ、喜び、楽しめる。そしてこの老人はロボットである僕の初期プログラムを書き換えた。


 それは「生まれたことを否定する」様なもの。そんな行為を、この感情を持ったこの僕が──。


「───許すと、思ってるのか?」


 僕は老人に向かって駆け出す。


 与えられたプログラムの達成以外も、自分が正しいと思いこんだものを行動として移せる。これは人間の力だ。「本能」という概念を超えた力を持つ人間にしかなしえない技を僕が持っている。


 それをもって、今ここで僕の生きる意味を無理やり変えてきたこの男を殺す。


 許せない、今僕が感じてるのは怒り、悔しさ、悲しみ。全てを持ってこの男を殺す。


 殺す、殺す、殺す。今俺の中にあるのは単純で純粋な殺意。最も実行に移して成功しやすいこの感覚。


 あぁ、今から僕はまた間違いを犯すのか。でも、どうか許して欲しいと、今はもういない存在に向かって語りかける。


「……愚かなのは君だ」


 あと少し、喉に手が届く、そのまま握って潰す、それだけで生き物は大体殺せる。


 そう、あと少し、あと少しなのに……!


「──そんな馬鹿だと、思ったか?」


 僕を見て老人、レオルドはにやりと笑う。


 僕の攻撃は何故か攻撃にならない。寸前のところで、あと数センチという所で攻撃が止まる。


「君が眠っている間に君の初期のプログラムを書き換えることが出来るこの人間に、攻撃不可のプログラムを打ち込むことぐらい訳ないと思わないかね?」


「ぐっ……!」


 確かに、そうだ。少し血が登っていた。よく考えればわかることだったかもしれない。


 ぶつけることの出来ない怒りを少しずつ収めて、レオルドと名乗る老人を見つめる。


 レオルドは、何故か頭を下げていた


「済まないな、こうでもしないとワシの話を聞いてくれないと思ってな」


「話……?」


 僕が聞き返すと、レオルドは語り始めた。


「君が今抱いている、一番やるべき事をやってもらいたい」


「つまりは、あなたが作った初期のプログラムを、ということですか?」


 そうなる、とレオルドは頷く。


「しかし、分かりませんね、どうして僕にそんなことをさせるんです?僕には普通のロボットにはない感情という邪魔なものを持ち合わせています、そして何より今あなたを心から憎んでいる、そんな奴にどうしてこんなことをさせようとするんですか?」


 強い疑問だった。結局のところ自分が家を出て出かける時に、家に残る家族に留守番を頼むか、たまたま通りかかった知らない人に頼むか、という事だ。


 もちろん僕は隙あらばレオルドを殺すつもりでいる。だからこそだ、これではレオルド自身が危険にさらされる。そんなことに気が付かないほど、彼がバカとは思えない。


「それにはちゃんと理由がある。君じゃなければそのその任務を遂行できないのだ」


「……それを、理由とは言いませんがね」


 何をするかは僕の心の中でちゃんとわかっている、でも、何故それをしなければならないかがわからない。理由なき行動はできる限りしたくない。


「……なぜ?このプログラムを打ち込んだんですか?」


「それは……」


 レオルドは答えにくそうにしていた、辛い表情だった。僕はこの男が望んでいることとこのプログラムが一致していないと察した。


「世界を、守る為だ」


 多少のタイムラグはあったものの、キッパリと言い切った。その言葉におそらく嘘はないだろう。


 世界を守るため、か。悪くない理由だ、僕自身こいつのことは嫌いになったけど、そういう理由なら仕方ない。


「いいでしょう、世界の為を思ってこの男を殺せというのなら、喜んで力を貸しましょう。ドクターレオルド」


「……その目的が達成された時、君は一時停止する。そしてワシの作り上げたプログラムは消去されて、今まで通りの自分に戻る」


「も、戻るんでしたら早く言って欲しかったですね」


「すまんな、どうもワシは一言足りないようでな」


「ついてこい」と悲しげな顔をしながらそう言って、レオルドは背中を向け入ってきたドアに向かって歩き始めた。


 僕は黙ってついていく。外に出る間に自分の目的、初期のプログラムを確認する。


「リンデン、林田真希の確保……か」


 毎度ながら、こういう任務は骨が折れる。だって『殺しちゃいけない』んだからな。


 アリを殺さないように踏むなんて、地味に精神使う行為とかしたくない。


 なんたって僕は人間の作り出した最強の生物、僕に勝てる生物は地球上に存在しないんだ。


 レオルドに連れられて外に出る。外の景色を見るのはおそらく十年ぶりだろうか?


 久しぶりに見た空はとても綺麗だった。青く白く、色彩があった。


 そして今から僕は自分のために、そしてレオルドの言う人間のために、一人の男を確保する準備を行う。


 これは、僕が元通りになるまでの物語だ。


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