別世界にて 世界も家族も腐っている
別世界にて、リンデンの家族のほんわかな日常です
空は黒く、雲は赤く、絶望を色で表すとこうなるよと言わんばかりのまさに地獄のような世界があった。
世界というよりかは、大きい島という表現の方が正しいのかもしれない。
その島にはその島には何本かの塔が建てられており、人々はそこで生活をしたり、勉強をしたりしている。
リンデンもこの世界で育っていた。
この世界の住人は、人の形こそしているものの、それは人間とまるで違う生き物だ。だが、住人全員地球のことは知っている。
そして、彼らにも当然家族も家庭も存在している。
リンデンは地球での地球人との会話を終えて、今帰宅した。
教室から姿を消したのは、自分の住む世界へとワープしたからだった。ただそれはリンデンの力ではなく、左腕につけた腕輪のおかげである。
この腕輪があれば、どんな時でも自分の世界に戻れることが出来る。
(……最初っからこれ使えばよかったんじゃねぇか?)
今更気がついても遅かった。
「ただいま、クソ親父」
「おお、バカ息子、生きて帰ってきてしまったか」
リンデンがクソ親父と呼ぶ男、彼の名前はウッドルと言った。
男性にしては少し長い黒髪を後ろで束ねており、黒い顔からはあまり剃っていないであろう髭がちょびちょび出ている。悪く言ってしまえば情けない印象のある男性だった。
「なぁ親父.俺日本に降りたんだけどさ、リンデンって名前日本じゃおかしいんだよ、だからあっちで名乗る名前一緒に考えてくんねぇか?」
「けっ、どうして男のおまえの名前を考えてやらなけりゃならねんだ、もし考えて欲しかったら雌にでも生まれ変わりやがれ」
「こんのクソ親父が…‥」
「まぁ、今日はお前も頑張ったみたいだし、手伝ってやるよ」
「お、親父……!」
ウッドルがそう言うと、リンデンはほんの少しだけ感動してしまった。頑張りをこの女にしか興味の無い親父が認めてくれたのだ、嬉しくてたまらない。
「そこにいるフォーレがな」
「えっ!? はぁ!?」
ウッドの発言に異様に反応した彼女は、フォーレといった、形式的にはリンデンの姉にあたる存在である。
彼女も長い黒髪で、髪をポニーテールでまとめていた。身長は女性にしては高く、そのつり目は彼女の勝気な性格を表していた。
「なんであたしがそんなことしなければいけないのめんどくさいんだけどまじやめてほんとに」
「おいねぇさん、そこまで嫌か」
「嫌よ、勝手にやってて、あたしにはカンケーないし」
「弟の頼みなんだけど」
「人類滅ぼそうとしているのはあんた、あたしじゃない、だからどうでもいいって言ってんの、適当に考えなさいよ。そうね、でもあたしの友達の人数の3分の1ぐらいの友達があんたに出来たら手伝ってもいいわよ」
ぼっちに対してなんてことを、リンデンはそう思った。なんとも性格の悪い上2人、弟のピンチに手を貸してやろうという気は無いのか。
「くっそ、1人以上か、厳しいな…」
「…どうしてあたしの友達を3人しかいないものだと思ってるの?」
「…たしかによく考えればねぇさん抜いたら俺と妹で2人だな。ごめん間違えた」
「そういうことじゃあない!」
「痛い!」
リンデンがバシッと1発ビンタをもらった、怒りがこもっているせいか、音も大きくリンデンの頬はまたもや赤く染まっていた。
「ちょっ、そこさっき人間に殴られたとこなんだよ! 家でグータラしてるねぇさんとクソ親父は頑張ってこの世界を救おうとしてる奴を労わるとかいう気持ちはないのか!?」
「ない」
まずはフォーレが。
「ない」
次にウッドルが。
「「ありません」」
そして 二人揃って言い切った。
「なんだその息の合い方は……逆にキモイ」
呆れた顔でリンデンはそう呟いた