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全ての人類に絶望を。  作者: うまい棒人間
君のための2週間
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番外編 ある日の漢字練習②

明日出します(大嘘)

本当にすみませんでした

「…ということがテスト期間中にあったんだけど…どう思う?」


「ど、どう思うも何も…?」


 時は現在に戻って図書室。テスト期間中に起きた出来事でどうにも納得出来なかった要件を森谷朱里に話すことにした。


 当然同居していることは隠している。それがバレたら大事件になってしまうからな。


「それは林田くんが悪いと思います…」


「な、何故!?」


「こ、声が大きいですよ!図書室なんですから…」


 しまった、つい納得いかず大声をあげてしまった。


 でも何故だ?どうして自作小説を読まれたぐらいであそこまで悶え苦しまなきゃならないんだ?


「それはですね…例えるとしたら、林田くん?」


「あれ?あ、あぁどうした?」


 何も喋っていないのに会話が進んでいることに一瞬戸惑ったが、立て直す。彼女の力は自然に発動するもの、俺達が合わせてやらなきゃならない。


「もし、林田くんに好きな女の子いて…あっ!も、もしもですからね!」


「はいはい…で?何?」


「え、えっと… 彼女にドン引きされるような趣味を書いたノートが彼女に見られた時…どう思いますか?」


 どう思うか…?俺は少し考えたがどうやっても答えは一つだろうと確信し答える。


「自殺を考慮する」


「…そ、そこまでいくんですね…でもそういう事なんですよ」


 当たり前だ、好きな(いもうと)にそんなの見られたら生きていける自信ない。


「つまりあの古びたノートはあいつにとって誰にも見られたくないものだったってことか?」


「そう…だと思います」


 …でもよく分からねぇ、小説書くってことは誰かに読んでもらいたいっていう思いから書くんじゃないのか?見せたくないものを書くなんてちょっとおかしいと思う。


「そこんところどう思う?お前は」


 思ったことが伝わるというのはいいことだ、こうやって喋らなくてもいい、コミュニケーション障害の人に優しい能力。


「んん…たしかそのノート、古びてたんですよね?」


「あぁそうだった。あと字がすごい汚かったからあれは結構昔に書かれてたやつだな」


「林田くん…禁忌を犯しましたね…」


「へ!?」


 急に結城萌花の表情が真っ黒くなった。やばい、なんか変なスイッチ入れちまったか…?


「はぁ…懐かしいなぁ…わたしも書いたなぁ…ダークサンシャイン…アルティメットバスター…ふふふふふふふ…そしてそれをクラスメイトに見られて…クラス中に晒されて…ふふふふふふふふ」


「や、やべぇ…」


 いろんな意味で。目が虚ろだし体も筋肉を失くしたかのようにだらけてる。不気味な笑いが図書室中に響き渡って利用者が困惑してる!


 そんな苦痛の時は何分か続いた。彼女の真っ黒な記憶の断片を見せつけられた俺は森谷朱里もこんな気持ちだったのだろうか…と思った。


 結城萌花は黒歴史の恥ずかしさを落ち込むことで表現したが森谷朱里はそれを怒りで表現しただけ。


 取り敢えず、彼女に恥ずかしい思いをさせたのは紛れもなく俺だ。これは一応謝っておいた方がいいのかな…あいつはもう記憶から消去してるだろうけど。


「ふぅ…収まりました…」


 当の彼女は語り終えてスッキリしていた。色々心に穴が開くような呪いをかけられた気がするが。


「既にこの図書室は収まり用のない状態になってるがな」


「す、すみません…」


「でもまぁ、何をするか決めれたよ、ありがとな」


「え?あ、はい…えへへ、ちゃんと心と言葉が一致してるのは嬉しいです」


 …そういうこと言われると照れちゃうからやめろ。


 恥ずかしくなってつい目を背ける。ちらりと横目で彼女を見ると本当にニコニコしていた。愛いやつだけどどこか怖い…そんなやつとの会話は実は俺の楽しみでもあった。




 ✖✖✖




「おっす、ただいま」


 初めは困惑していたこのただいまも今ではなんの苦もなく言うことが出来る。


 当然寂しくもあった、でも慣れてきたということだ。決して悪い傾向ではない。


「あれ?今日遅かったわね?なんかあったの?」


 そんな俺を迎えてくれるのは、黒歴史を覗かれ発狂したことを記憶から除外した女として俺の中でブレイク中の森谷朱里。いつも通りのエプロンと三角巾を付けて晩御飯の用意をしてくれている。


「…ちょっと図書室で本読んでた」


 嘘はついてない、そもそも本を読むために来た所に結城萌花が急に話しかけてきたんだ。そしてそこからあの話になった。


「ふーん、最近いつも行ってるわね…」


「あ?なんか悪いか?」


「…べつに」


 少しムスッとした表情になった。そして何事も無かったかのように料理に戻る。


 でも今俺が伝えたいことはそういうことじゃあ無い。


 リビングにあるボロボロのソファーに座り、覚悟を決める。


 俺は今からあの女に謝らなくてはいけない。それがとても悔しい、苦しい、辛い。


 でも俺が悪いと俺が決めた以上、謝らなくては俺の気が収まらない。


「おい」


「なによ?今忙しいから後で…」


「お前の黒歴史ノートの事なんだけど…!?」


 やばい地雷踏んだ、と思うより先に森谷朱里のキッチンの方に向いていた体が恐ろしい速度で俺の方に向き変わった。


 だが、俺の「やばい」という思考速度を上回ったのはそこまでだ。ここからはイーブンである。


 俺は彼女を怒らせると即攻撃に移るというスズメバチのような特性をちゃんと理解してる。だから彼女の攻撃を避ける場合、まず最初に見るのは手元!


 俺と森谷朱里にはキッチンからソファーという距離が存在している。よって攻撃方法は投擲物に絞られてくる。


 何を投げてくるかで対応が変わるから最初に見るのは手元なのだ。そしてやつの手元には菜箸が握られていた。


 よし、あれなら平気だ、包丁とかならヤバかったけどあれならどうとでもなる。


 考えることは簡単だが時間が止まっている訳では無い、ここまでの思考を一瞬で行わなければならないのが難しい。


 でも結局は慣れ、殺気を感じた時にのみ集中する能力、それが俺には備わっている。


 普通の人間ならば痛くも痒くもない攻撃だがあの女となると別。一撃必殺級の宝具にもなる。だからこそ俺がさっきを感じ取ることが出来るのだ。それが躱すことのできる要因のひとつ。


 そして、賽は投げられた…!菜箸もまた投げられた…!


 真っ直ぐこちらに向かってくる。おかしい事に箸がドリルのように回転して襲いかかってきてる。普通の投擲であんな回転するはずがない。やつの腕は拳銃かなにかなのか?


 あれを手で払うのはちょっと気が引ける。速度からいって俺の手に貫通する恐れがある。


 だから──。


「盾を出す!」


 帰宅してすぐなのが幸いした。俺の手にあったバッグを盾にする。中にはノートがたくさん入ってるから貫通とは行かないだろう、どこかで落ちるはず。


 恐ろしく長い思考を一瞬で終え、ついに俺のバッグと菜箸が衝突する。


 弾丸のように迫り来る菜箸…文字にすると笑いがこみ上げてきそうだが今は笑ってる場合でもない。


 音を立てて衝突する。そしてその音もおかしい。「コツン」とかいう優しい音ではなく何かを削るような激しい音。効果音で表すと「ドシュッ」突き刺さる音だ。


「うおっ!?」


 恐ろしい事が起こってしまう。俺のノートが何冊か入ってるバッグを貫通し菜箸の先端が顔を出した。


 だが、そこまでだった。煙を出しながら箸は進撃を止めた。


「冗談じゃねぇぞこれ…」


 突き刺さった箸を抜き取ると、とても綺麗な穴が空いていた。ただの箸ですらこの威力。恐らく遠距離戦になったらこいつに負けるかもしれない。


 冷や汗が流れた。もうこいつを普通の人間とは思うまい…。


「…で?なに?」


 料理を一旦止めて俺の方に歩き出す。


 やつの菜箸弾から生還した報酬に、どうやら話を聞いてもらえるようだ。


「お前の黒歴史の事なんだけどフッ!?」


「に、ににに二度と口にするなバカァ!!」


 ゆ、だんした…。


 彼女の腹パンがクリーンヒットした。こいつの一撃…うちのねぇさんよりも数段…強い…。





 ✖✖✖





「一瞬気を失ったんだが」


「罰よ罰、女の子の過去に触れると死ぬわよ、覚えておきなさい」


 それが本当だとしたら俺はもうテスト期間中に結城萌花に殺されていると思う。でもここで言い争っていては何も進まないので黙っておくことにした。


「で?やっと本番だ、あの黒歴…いやあの痛々しい小説…違う、待ってそれらしい言葉を見つけるから包丁を取りにキッチンに向かうなそれはマジでやばい」


「はぁ、もういいわよ、痛々しいのは知ってるし…そもそもその小説の痛々しい部分書いたの私じゃないし…」


「え?あれ書いたのお前じゃないの?」


「それはどういう意味!?」


 俺の発言を何か勘違いしてくれたみたいだ、また席から立ち上がり「中華包丁どこやったっけ」と言いながらキッチンに向かい始めた。


 キッチン以外でしか使い道のない包丁系統をいったいどうやってなくすというのか、そもそも中華包丁って何なのか、いろいろ疑問が飛んで出てくるが分かっていることは一つ、止めなきゃ誤解で殺される。


 俺は森谷朱里の腕をつかみ引き止める。


「深い意味は込められてない!だってよく考えてみろよ!俺がこの家に来た時この家にはお前しかいなかったんだぞ!?そう思うのは普通じゃねぇの!」


「む…確かにそうね…わかったわ、だからその…手を放してほしいんだけど、痛いし」


「ん?あぁすまん」


 思ったより強く握りしめてたみたいだ、でもそれぐらいで痛いとか、さっきお前に腹パンされて気絶しかけた人の前で言うセリフ違う。


「コホン…あの小説は、私とお兄さんで書いたリレー小説なのよ」


「へぇ…じゃあ改めて聞こうか、どうしてお前が書いたところでもないのに!テメェがキレて俺が殺されかけられなきゃなんねーんだぁ!?あぁん!?」


 そろそろ殺されたいみたいだなおい!


「…嫌だったのよ」


 嫌?


「嫌って何がだよ。あの「えたーなるふぉーすぶりざーど」の宛名考えたのお前じゃないなら別に良いじゃん」


「違うの!そういう事じゃない!」


「じゃあ何なんだよ!?」


 珍しく、彼女が口ごもった。言いたい言葉があるのにそれを言えない、と言った感じだ。


 うううと唸って、ついに口を開いた。


「…その顔で、お兄ちゃんの小説に出てくる言葉を言うあんたが、嫌だったのよ」


「顔?どういう事だ?」


「…うぅん、何でもない、ごめんなさいね、なんか勝手に怒っちゃって…よく考えたら私の方が悪かったわ!」


 無理している笑顔だった。


 言いたいことがあるけれど言えない。そういった感じだ。


 森谷朱里はそのまま晩御飯の準備を続ける。


「…なぁお前」


「なに?」


「あんまり無茶してんなよ」


 パリンと、森谷朱里の方から音がした。そして彼女が恐怖に満ちた顔でこちらを見ている。


 俺自身なぜこんなことを言ったのか分からない。だから俺も超怖い。


「ど、どうしたのあんた…?」


「お、俺も何でもないっ!」


「えぇ…?」





 その後は、特に何もなく晩ご飯の準備も整い、いつもと変わらない食卓が囲まれた。


 ただ、ひとつだけ気になることがあった。


 彼女が食事中にボソリと「やっぱり…」と言っていた。


 続きの言葉があったように思えたがやっぱりしか聞こえなかった、いつもの俺ならこの続きが気になるところだが、今回はなにか、俺の心の持ちようが違った。


「知りたくない」「知っちゃいけない」と思ったのだ。はっきり言って、こんな気持ちを抱くのは初めてかもしれない。


 まるで別の自分がいるような、そんな感覚を覚えた。


 また俺がいつものように悩み始める、自分でも思うがちょっと気にしすぎだ。でもこの性分は変えられそうにない。


 その時いきなり俺の後頭部に枕が投げられてきた。


「クフッ!?」


 いきなりだから何が起こったのかよくわからないまま外れかけた首を必死に後ろに回す。


 するとそこには森谷朱里が偉そうに二人用の対戦ゲームを持って立っていた。


「勝負よ!」


「まず謝れ!いきなり無防備の男に枕を叩き込んだことを謝れ!」


「私に勝ったら謝罪してあげるわ!その代わりあんたが負けたらその回数食事抜きね!」


「またかよ!クソッ!やりゃあいいんだろ!?ゲームでも俺の方が強いってことを証明してやるぞこのゴリラ!」


「ようやくいつもみたいに切れたわね!そっちの方がいいわよ!私的には!」


「あ、あぁどうもありがとよ!悩んでるのがアホらしくなってきた!」


 森谷朱里からコントローラーを奪い取り、ビデオゲーム機に接続する。その後の操作は森谷朱里がやってくれた。


「おい、森谷朱里」


「なに?言いたいことがあればおはやく!」


「このゲームやってる時はなんか気分が高まって正常じゃいられないから今のうちに言いたいことがある」


「だから何!前置きはいいから!私は早くあんたのご飯を抜きにしたくてウズウズしているの!」


 やっぱりクズだこの女!いくら俺が敵だって言ってもそのやり方はひどいと思う。


 でも言わなきゃいけないことはちゃんと伝えなければな。


「ありがとよ」


「…!?ふ、ふんっ!そうね!もっと私に感謝するべきよねあんたは!」


 少しだけ上機嫌になった彼女は意気揚々と準備に戻った。


「…さぁ勝負よ!林田真希!」


「上等だ!」


 俺達の戦いが始まろうとしている、俺達の夜はまだまだ続く…!



…これ、番外編でやっちゃいけないやつだ。本編でやるべきだったやつだ…。


さておき次の話から第3話が始まります。どうぞご期待ください。

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