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全ての人類に絶望を。  作者: うまい棒人間
君のための2週間
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番外編 ある日の漢字練習

作者の欲望で作った番外編です、出来る限り面白く書きました。

「はい、じゃあこの漢字はなんと読むでしょうか」


 そう言って森谷朱里に漢字が書かれたノートを見せられる。彼女はひとつの漢字を指さした。これを読めということだろうか。


「出納」


 なんだこれ舐めてんのか?さすがの俺でもわかるわこんなの。


「しゅつのう」


「馬鹿者!」


「ぶへぇ!?」


 怪力に定評のある森谷朱里さんのノート全力投球が俺の顔面にぶち当たった。痛みはあまり無いけど驚きが隠せない、しゅつのうじゃないのこれ!?


「これは『すいとう』!そんなんじゃテストの時漢字全問外すわよ!」


「ば、馬鹿な…!?これどう見たってしゅつのうだろ!?何で『すい』なんて読むんだこの漢字!そんな読みねぇだろおい!」


「まずしゅつのうっていう言葉はこう書かないわ」


 クソッ…!


 こんな下らない漢字練習、本来俺がするはずもないのだが…。


「じゃあ二回連続で間違えたからお吸い物、ふりかけ抜きね」


「て、テメェ…急に勉強誘ってきたから一緒にやってやったのに俺の食事をゲームに使うなんて…!」


 外道、外道すぎる。


 そんな俺の恨みを完全に無視して投げたノートを拾い上げてシャープペンシルでサラサラと何かを書いた。


「じゃあ次ね、これはなんて読むでしょうか」


 そこには『百足』と書かれていた。


「ひゃくそ…!?」


 まて、落ち着け。


 こいつがこんな簡単な答えを用意すると思うか?


 これはあいつのストレス発散、俺が絶対に答えられないように設定されてある問題なはず。


 じゃあシンプルな回答は通用しない。もっと頭を回して…それっぽい答えを探すんだ。


 百の足…か。まずそんな生き物いないよな。俺の頭から生き物が正解という考えを消去する。無駄なことに頭を使ってなんかいられない。


 じゃあ何か?多分ヒントは足の点にある、百は数を表すから必然的に足が百本あるものを指すはず。


 生物以外の百の足を持つもの…。


「ひゃくそく!」


 俺はまたノートを顔面にぶち込まれた。


「さっきの考えてた時間は何!?」


 分かるか!この地球のことで知ってるのは人間の生態ぐらいだけだわ!


 もうそれしか考えられない!


「答えは『むかで』よ。はいご飯没収〜!残念でした!」


「貴様ァァァァ!!?」


 炭水化物粉砕!というか答え生き物じゃねぇか!最初に潰した時点で俺の敗北は決まっていたのか…。


 この時点で俺の食べ物がすべて消えた。問題は残り一問、三問形式にしない辺りまだ優しさというものが少し見える。


「ちなみに四問連続で外したら明日の朝ご飯抜きね!」


「チリ一つの優しさもねぇ!」


 やはり鬼畜!人を苦しめるプロ!根っからのSですわこの女。


 畜生…!もうダメなのか…!やっぱりこの家から出ない限り俺は死んでしまうんじゃないか…!?


「それじゃあ最後の質問ね?」


「あぁもう!来いよ!俺の負けは確定だ!なんでもいいから早く出せ!」


「その生きやよし、それじゃあ最後の問題オープン!」


 ででん!と言って感じの書かれたノートを見せつける、さぁ俺の食生活に致命的な一撃を加える漢字様は一体どんなもので…?


『鬼灯』


 そこにはそう書かれていた。


「…え?」


「どうしたの?早く珍回答してよー!」


 めっちゃウキウキしてやがる。やはりこの女が優しいのは人間だけ、俺にはなんの慈悲もない。


 でもこの漢字…?え?答えていいの?


「…『ほおづき』」


「はいどんまーい!正解は…え?」


「だから、ほおづきじゃねぇの?この漢字」


「な、何で…分かったの?」


 森谷朱里が目をぱちくりさせてる。何でか…と言ったら…。


「以前結城萌花から借りた漫画に鬼灯っていう漢字があった」


「くっ!何やってるのよあの子!」


 悔しそうに恨めしそうに机をドンドンと叩き始める。さすが結城萌花。唯一俺が信頼できると思ってる人間である。


「さて、約束だ一品返せ」


 俺は森谷朱里に向けて手のひらを差し出した。


「うう…しょうがないわね、分かったわよ」


 よっしゃ、とりあえずこれで今日の夜と明日の朝の食事は確保できたぞ。ひとまず安心といった所だろうか。


 問題も四つ終わったし、これ以上何も望むまい。これ以上何かを求め続けて失敗したら目も当てられない。


 今回当てたのは偶然、自分の実力は分かっているつもりだ…。




「───はいどうぞ、ふりかけ」




 俺の差し出した手のひらにサラサラと音を出してふりかけが掛けられた。


「どうやらお前とはマジで殺り合わないといけないらしいな…?」


「え?なんで?一品返したじゃない」


 なんも悪びれもなくきょとんと「何言ってんだこのバカ」言ってるような顔で煽ってきた。


 どうしよう、顔面が凹むぐらい殴ってやりたい。


「んー?これ以上欲しいとなるとまだ問題を続けなきゃいけないわね〜?」


「ち、畜生…!!」


 これが、目に見える敗北…!負けると分かっている戦い…!


 俺は悔しさのあまり机をドンと叩いてしまった。ついにモノに当たってしまうという小物じみた行為。俺が最も嫌いとする行為である。


 な、なんだ…涙があふれる…!俺はここまで弱い人間だったのか…?


「そ、そんなに悔しがらなくても…わ、分かったわよ、アンタがなにか問題出しなさい、それで私を負かしたらご飯あげるわよ」


 俯いた俺に、俯かせた女の救いの声が聞こえた。


「…言ったな!言ったからな!」


 これがラストチャンス!ここを逃せば俺は空腹で目が回りそうになってしまう!


「ただし!私が答えたらそのふりかけ残さず食べなさいね」


「え?それだけでいいのか…?分かった!」


 しかしそれだけと言っても、ふりかけだけを食べる男子高校生なんてものをこいつに見せたらT〇itterとかに動画投稿されて大変なことになってしまう。


 俺にだってメンツ、プライドはある。守りたいものもある。


 だからこそ勝ちに行く!こいつがわかりにくそうな問題…漢字を提出する!


 思い出せ…この地球に来てから見た全ての漢字を…そして書け!奴に一撃喰らわせろ!


「喰らえ!」


「ふふん?人間サマに漢字テストで勝てるわけ…な…い…?」


 俺の書いた文字に森谷朱里は凍りついた。この世の終わりのような表情だ。


「…や、やったか!」


 実はそこまで自信なかったけど意外といけたぞ!


「あ、あんたその漢字…どこで…!?」


「え?あぁ、そういえばお前のノートに書いてあったなこれ」


「う、嘘!?あのノート…見たの!?」


「え?もしかして見ちゃいけなかったのかあれ」


 なんだこの焦り方…?漢字ってここまで動揺するものなのだろうか…?


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


「ど、どうしたぁぁぁぁ!?」


 急に椅子から転がり落ちて頭を抱えて呪われたかのように叫び声をあげ始めた!


 めっちゃ説明口調になったけどこうする他この状況を表現出来ない!


「おい大丈夫かよ…?」


「やめてぇぇぇぇぇ!!そのノートを見るのをやめてぇぇぇぇぇ!!」


 よく見ると顔が真っ赤になっていた、あんな奇声をあげたんだからそうもなるわな…。


「わ、分かったよ、見なきゃいいんだろ見なきゃ」


 ここでこいつを更に苦しめるほど鬼にはなれなかった。一応ほんの少しではあるがお小遣いとご飯を提供されてる身だ、その事は弁えないといけない。


「しかし…」


 不思議に思って俺がノートに書いた漢字を見る。


「…こんな読み方も、あるんだな漢字って。少し興味が湧いてきたわ」


『永遠力暴風雪』


 そこにはそう書かれていた。


 初めは当然のごとく『えいえんりょくぼうふうせつ』と読んでいたがそれとはまるで似つかない読みに俺は驚愕を隠せなかったの思い出す。


「あ、ちなみにこの漢字の変な読みの答えはエターナル───。」


「そ、その顔で変な読みとか言うなばかぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「うおっ!?な、なんだいきなりお前!」


 急に泣き出して殴りかかってきやがった!


 痛い!お前のその普通の女の子なら「ぽかぽか」って効果音が出そうな攻撃をやめろ!お前の場合それやると骨が砕けるんだよ!


「やめろ!おいやめろ!痛いから!」


「うるさい!うるさい!うるさい!!」


 うるさいのはどっちだこの女!


 俺の静止の声も届かず彼女は怒りのまま拳を振るい続けた。だが、そんな直線的な攻撃が通じると思うなよ、一発目は少し油断して喰らったが、怒りに任せて振るわれる攻撃が冷静に対応できる人間の上位互換に当てられるわけないだろ!


「死ねっ!死ねっ!」


 遂に、可愛げすらなくなった。


 まだ最初は「ぽかぽか」感のある攻撃だったが、もう既に人を殺すぐらい振りかぶって殴ってくる。強烈なストレートが無情にも襲いかかる。


 だが、そちらの方が俺としては好都合、攻撃とは威力と精密性が反比例するもの。攻撃力の高いストレートより隙のないジャブの方が当たるのと同じだ。


 彼女の攻撃は怒りのせいでとても直線的になっている、そんな攻撃躱して下さいと言っているようなもの。


 もはやガードで腕に衝撃を与える必要も無い、ただただ腕の位置、角度からどこを狙っているのかを予測し躱す。俺の得意技だ。


「フーッ!フーッ!」


「もはや野獣だな…」


 ただでさえイラついているのに攻撃を難なく躱されて相当お気に召していないようだ。だからといって殴られる訳にはいかない、痛いもの。


「おい!そもそも何でそこまできれてやがる!俺はただお前のノートに書いてあった小説みたいなものを読んでその中にあった漢字を書いただけだろうが!」


「…!?う、うわーん!ばかぁぁぁぁ!!」


 俺の言葉にビクンと反応して急に激しく泣きだし自分の部屋に駆け込んだ。


 なんだあの精神異常者は…?病院にでも連れていった方がいいんじゃないだろうか、情緒不安定すぎでしょ。


「た、耐えた…?」


 奴のラッシュを耐えて俺の骨に何の異常もない。珍しい。


 しかし分からない、どうしてあんなに取り乱すのか?


 まぁ、明日になれば機嫌も治ってるでしょ。


 俺は無視することにした、勉強に移行する。


 しかし彼女は、次の日の学校を休んだ。

あと一話続きます。

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