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全ての人類に絶望を。  作者: うまい棒人間
君のための2週間
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信友

もしかして三日連続投稿になるのかこれ…?

 彼女のやり方は、恐ろしく残酷なものだった。


 幸せになるかそうではなくなるか。そのどちらかしか選べない過酷なやり方だ。


「い、いや!!…です」


 結城萌花がその提案を激しく拒絶した。身を抱え、震える。


「お願い…萌花ちゃん」


「だって、だってもし、心では友達に戻りたいなんて思っていなかったら、わたし、どうすればいいんですか…?」


「…そうなったら、確かに傷つくのは萌花ちゃんだよね、でも私は本当のことを知りたいの」


 本当のこと、というのは森谷朱里が結城萌花のことをどう思っているかということだろう。


 そしてその後も同じような会話が続いた、「心読んで」「いやです」の繰り返しだ。


 自分の意思をぶつけ合ってそれを否定していく。「友達」というどちらも根っこは同じはずなのに、ここまで食い違いがあるのか。


 いや、もしかしたら根っこが違うのかもしれない。


 憶測だが森谷朱里は本当の友達になりたいから心の中を見てほしいと思っている。


 結城萌花は嫌われたくないから心の中を読みたくないと思っている。


 好かれたいと嫌われたくないは、意味は似てるが別物だと俺は思っている。新たなものを求める者と今を求める者、と言えば分かりやすいだろうか。


 …こうなった原因は、俺にもあるな。


 あの日、俺はこいつの友達になることを拒む結果となった。


 それが彼女にとっていい事だと思っての行動だったが今、そのことが裏目に出てる。


 結城萌花は現状維持を求めた、それはもう諦めたということになる。友好関係のこれからも。


 そうさせてしまったのは紛れもなく俺だ、そう思うと心が苦しくなった。


 だからだろうか、体がまた勝手に動いた、かつて森谷朱里を助けた時のように。




 ✖✖✖




「…え?」


 急にカーテンから姿を現し自分が言うのもなんなのだが、どうしてそうしたのか俺もよくわからなかった。


 当事者が分からないのだ、俺の方を見てぽかんとしている女二人にわかるはずがない。こいつら否定のしあいで俺がこの部屋にいること忘れてたな…?


 何故出てきたのかは分からないが、出てきてしまった俺がこの場で何をするべきかは分かっている。


 今はただそれに従おう。人間のように後先考えずに今だけを見て。


「さて、一連の話は聞いた」


 俺が二人に近づこうとすると森谷朱里が俺をに体を向けて叫んだ。


「な、なんで出てきたのよ!これは私の問題!あんたには関係ない!」


 余裕のない表情でそう言っても扉を指さし「出てって!」とそう言った。


 関係なかったら、帰りたいところなんだが…。


「あったんだなそれが…」


 森谷朱里の指さす先、扉の方に足を運ぶ。


 一瞬俺の行動に安心した森谷朱里の表情が緩む。だが俺の向かう先は扉の方向であり扉ではない。


 その手前にいる結城萌花がいる場所で、俺は足を止めた。


「…今、言うことじゃないんだろうけどよ、結城…いや」


 森谷朱里から逃げられて、そして俺からも遠まわしに友達になりたくない、と言われた彼女はもう友達を作ろうともしないで、ただひとりで生きていこうとするだろう。


 これが、森谷朱里が恐れていた可能性だ。


「ごめん、萌花」


 俺は深く頭を下げた、いつも結城萌花がやっていたように。強く深く頭を下げた。


「…え?」


 何に対しての疑問符だろうか、いきなりの謝罪か、俺がなんか無意識に名前で呼んじまったことか、いやそれはどうでもいい。


「お前が苦しんでる理由、半分以上は俺のせいなんだ…一番最低で最悪だったのは、俺だったんだ」


「ど、どういう事ですか?」


 結城萌花が問い返す。


 彼女らの会話を聞いて、俺のよくわからなかった心が解けた気がした。


 答えはとてもシンプルだった。俺は既に答えを出していたんだ。


 答えを出しても、それが答えと分からなければ答えじゃない。正しいけれど正解ではない。


 俺はようやく掴めた、正しい答えを。


「俺はただ…お前に嫌われるのが嫌だったんだ」


「へ?」


 森谷朱里の情けない疑いの声が聞こえた、表情は俺が頭を下げているから見えない。だがきっととても驚いているだろうな。


 でもこいつらの話を聞いて、俺もちゃんと伝えなきゃいけないことを伝えたいと思ったんだ。


「萌花、俺はお前にとんでもない隠し事を一つしている」


「は、はい…?」


「それは、俺が知られたくないことだ、もしそれが知られたら俺はもうお前と仲良くすることなんて出来ない」


 誰も人を殺すために転校してきた男を好きになるやつなんていないだろう。


 それが怖かった、とそう伝える。


 所詮、俺も小さい生き物だったというわけだ。これまで仲良くしてくれた存在、例えそれが忌むべき人間だとしてもそれに嫌われることが怖かった。


 だか俺は俺の正体を知ってしまって俺のことを嫌いになる結城萌花を想像して、怖くなって突き放した。


 俺も、森谷朱里と同じことをした。


「そ、そんな…それでもわたしは林田くんと友達に……」


 不安な表情で俺に訴えかけてくる。


「でももし、そんなやばい隠し事があったとしても、俺と友達になりたいって言うんなら…」


 俺も彼女も同じことを諦めていた、最も簡単で、最も難しい人間にしか出来ない決意を。


 改めて、思う。俺達はよく似ていると。


「信じたいと思う、お前を、結城萌花を」


 俺達は裏切られ続けて信じることを無意識にやめてしまった。心から人を信じることをやめてしまった。


 でもそういう事じゃなかった、信じるというのは信じるに値する出来事であるかそうでないかで判断するものじゃない。


「俺はここまで仲良くしてくれたやつのことを、俺のことを思ってくれたお前を信じたい、信じたいから信じる」


 それがきっと信じるということなんだと思った。


 真っ直ぐに結城萌花を見つめる、今になってようやく気がつく事があった、あの俺の心を読んだ日から彼女の前髪は少し短くなっていた。


 その本の少し短くなった前髪のおかげで、今まで見えなかったものが見えている。


 いつも見てきたもの、結城萌花の泣き顔だ。


「裏切られるのは怖い、俺だって怖かったさ、でもな萌花、怖くなって何もしないのは『テストで悪い点数をとるのが怖いから何もしないで言い訳をする』のと同じだってさっき気がついたんだ」


 村上の弱さが、俺にそこまで気が付かせてくれた。


「それでも怖くて出来ないってんなら、俺が保証してやるよ。『森谷朱里はお前のことが大好きだ』ってな」


「うっ…ぐすっ…は、はい…」


 涙でぐしゃぐしゃだった。


 だがそれは悩んだ証だ、考え抜いた者にしか出来ない事だ。


 涙は弱さの表れではない、成長への、心身を向上させるためのスイッチだ。


「…森谷、さん」


「…大丈夫?」


「はい、こんなわたしをここまできにかけてくれた人のためにも、あなたの心を聞かせてください」


 涙は止まる、スイッチは押された。


 あとはお前の心次第だ、森谷朱里。


 ここまで人前で恥ずかしいことを口にしたのは初めてだ。これでお前の本心が言葉と違っていたら絶対に許さないからな。


 俺と友達になりたいと願ってくれた「友達」を悲しませるんじゃねぇぞ?



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