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全ての人類に絶望を。  作者: うまい棒人間
君のための2週間
63/108

ただ優しかった2人

 1人は終わった。


 あと予定では二人ほど来るはず。


 村上がいつ来るか分からなかったけど残り二人には時間指定をしてあるから次に誰が来るのかは分かっている。


 分かっているからこそ、隣の森谷朱里はガクガク震えている。


「…お前揺れすぎ、怖い」


「…ま、まだ揺れは強くなるわよ…」


 初期微動かな?まだ主要動が残されてるとかこいつどんだけ体を早く動かせるんだ…?


 ドリル、チェーンソーに続くあだ名はシンプルにバイブでいいや。


「ん?来たんじゃないか?」


 こいつの振動とは別にこちらに向かって廊下を走る音が聞こえてくる。


「う、嘘っ!心の準備が…!」


 森谷朱里の心の準備なんて無視するかのごとく、足音は近づいてくる。


 音が一瞬止まる、しかし扉を開く音がする。


 そして、今日来るべき二人目がこの部室に入ってきた。


「あ、あのっ!?私何かしましたか!?気を悪くするようなことしましたか!?」


 多分、涙目になってんだろうな…。二人目というのは今回の件にとても協力してくれた結城萌花だ。


 だが用があるのは俺ではない、隣で震えている…?


「すー、はー…」


 震えは止まっていた、どうやら覚悟は決めたらしい。


 泣きそうだった目のいつも見たいな自身たっぷりの目に戻っている。


 こういう時のこいつは頼もしく思えた。


「え、えっと、萌花…ちゃん」


「も、森谷さん?ど、どうしたんですか?」


 俺は前にこの部活の話をしていた、森谷朱里がいることも伝えてある。だから声だけで特定することも簡単だろう。


 しかし…敬語か。今思うとなんか悲しいな。


「実は私がここにあなたを呼んだのは理由があるの」


 逆に理由がなくて呼ばれたとしたら俺ならこいつを許さない。てか許さなかった。これがあの有名な靴裏画鋲事件である。


 しかし、この森谷朱里の発言…不味いな。


「っ!?や、やっぱりわたし…嫌われてたんですね…?」


 あぁ…やっぱりか…。


「え、ええっ!?どうしてそうなるの!?」


「…えっと、すまん、俺が悪かった」


 結城萌花には聞こえないように森谷朱里に耳打ちする。


「え!?あ、あんたなんかしたの!?」


「えっとそれは…」


 俺が理由を説明しようとした時、同じタイミングで結城萌花がまたしゃべり出した。


「だって…血文字で「果たし状」なんて書かれた封筒が下駄箱の中に入ってるんですよ…?そしてその中身は「今日の放課後5時10分に来い、来なければ命はない、来ても同じだろうがな」なんて書かれてたら…」


 森谷朱里がジャンケンでもしたいのか右手でグーを作った。


 いや待ってほしい、俺にも言い分があるんだよ。


 この話だけ聞いてたらまず俺の悪ふざけに思うだろうけどこれは違う。


 俺は脅されていたんです、この今ジャンケンしようとしてる奴に。


「あんたが提案したんだから、今日萌花ちゃん来なかったら私の覚悟を無駄にした罪で死、または処刑よ」


 イエスかはいで答えろじゃないんだから…そう、俺はこう言われたんですよ。


 つまり命はないというのは俺のことです、血の文字は緊急事態を表すため。来ても同じだろうがなというのはただの嫌味。


 それを伝える前に彼女の拳が俺に炸裂した。


 これマジでキレてる時のやつだ…。


「こふっ…」


「このばかぁ!何してくれてんのよ!?」


 ば、バカはそっちだバカ!そんな事言ったら俺がここにいることバレちまうだろうが!


「あ、あれ?もしかして…林田くんもいます?」


「げっ!?」


 ほらバレた…これは俺のせいじゃないでしょ、絶対お前悪いよね?なんで倒れた俺に蹴りで追撃してくんの?


 しかもお前が悪いみたいな顔しやがって!確かに手紙の内容は怪しかったかもしれないけども俺がここにいることバレたのはお前のミスだろ!


 痛い!痛い!痛いねん!


「やめろボケェ!」


 し、しまった!つい大声で。


「や、やっぱりいたんですね…」


 完全にバレてしもうた。


「うぐっ…」


 き、気まずいこんな思いしたのは久しぶりか、、いや初めてかもしれない。


 でも、今日用事があるのは俺じゃない、森谷朱里の方だ。


 きっと彼女も俺に言いたいことがあるかもしれない、でもそれは後回しだ。


「は、林田くん!実はわたし…!」


「はいストップ」


 結城萌花の発言をなんとか静止させる。


「結城、今回用事があるのは俺じゃない、森谷朱里の方だ。まずこいつの話聞いてやれ」


「え?…は、はい」


 これでいい、そして俺が役に立てるのもここまでだ。


 後はどうなるかは彼女達次第だ。


 結城萌花が許さないかもしれない、森谷朱里が言えないのかもしれない。


 でももし神様がいるのであれば、孤独な彼らに救いを与えてほしいと、俺は願った。


 森谷朱里がカーテンから出る、姿とともに本心をさらけ出すためだ。


「萌花、ちゃん」


「な、何ですか…」


 俺は彼女の姿をカーテンからこっそり覗くことにした。


 最低な行為だなと思った。


 そもそもここにいること自体がナンセンスなのだが、この部屋を出るタイミングを逃してしまった以上、この雰囲気を壊すことだけはしてはいけない。


 でもここにいることで、森谷朱里は逃げることが出来ない。


 適当なことも言えない、伝えなきゃいけないことをはっきりと言うしかないんだ。


「伝えたいことが、あるの」


「ひっ…!な、何ですか…!?」


 結城萌花が怯えていた、真っ直ぐ結城萌花を見つめている森谷朱里に対して彼女は一切目を合わせようとしていない。


 結城萌花は本心を知ることを恐れている、もしかしたらまた嫌われてるのかもしれない、そう考えるだけで怖くなるのだろう。


「謝りたかったの…中学の時のこと」


「ちゅ、中学…?」


「うん、私は萌花ちゃんの友達だったのに、なんの力にもなれないどころか、最終的には怖くなって逃げ出してしまった…本当にごめんなさい!」


「あ、あれは…わたしの…えっと…」


 続きが言いにくそうに口篭る、能力のことを知らないと彼女は思っている。知らなかったらまた嫌われるかもと考えているのか?


 それを森谷朱里が察してくれるか、と思い森谷朱里に目を向ける。


「知ってたよ、萌花ちゃんが不思議な力を持ってることは」


 どうやらちゃんと気がついていたみたいだ、安心した。見守る心配も無いかもしれないな。


「え?そうだったの…?」


「うん、そしてここからが私のお願い」


 両者共に声が震えている、ぎこちなさもあるがどちらもなにかに怯えているように見える。


 理由は、おそらく両者ともに違う。


 秒にすれば5秒ほど、空いた時間は短くも長い。


 すぅ、と息を吸い、森谷朱里は結城萌花に「私の心を見てほしい」と、そう言った。

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