知らねぇよ
「な、何故わかったの、私がその友達だって…」
「悪いな、こういう話を読み解くのは得意なのさ」
最近小説とか読んでるからな、なんかお話の重要な部分を読み取る力が上がってる。これをなにかに生かしたいところよ。
「じゃあ、わ、私が…仲直りしろというの!?」
コップを握る力が更に強くなる。そろそろ割れるな、あのコップ…。ヒビ入ってんもん。
「そもそも!仲直りという言葉が間違ってんだよ、そもそもお前ら喧嘩とかしてねぇだろ!」
話しを聞いて思ったのは「誰も悪くないということ」誰も悪くないならそれでいいじゃねぇか!
「はっきり言ってやるよ!あいつはお前のこと嫌いになってねぇし今でも友達だと思ってんだよ!」
「…え?」
「あいつもお前と同じこと言ってたよ、嫌われる原因を作ったのはわたしだってな」
「な、何でよ!萌花ちゃんは何も悪くない!悪いのは見捨てたあたしに…」
「ちなみに結城も同じこと言った。「朱里ちゃんはわるくないんです」ってな」
みんなして偽善ぶっこいてる。
だが偽善じゃない善はない。すべて自分のためであり自分が守りたいもののために何かをするんだ。
「お前は見捨てたって言ったけど…それなら俺に頼るのは違うんじゃねぇか?」
「で、でも嫌われてるわよ!」
「…それが間違いだと一番知ってるのは、仲のよかったお前じゃないのか?」
「…!」
大切なことなので何回も言うぞ。
こいつら2人は優しいんだ、だからこういうことが起こってしまう。
そしてその優しさは誰からも理解されないものだった、お互いのたったひとりの親友ですら理解されないものだった。
じゃあ知るにはどうすればいいのか?
簡単だ、もうひとりいればいい。
お互いの気持ちが噛み合わないのであれば、中継を入れてやればいい。気持ちがちゃんとお互いを向いてさえいれば少し手を加えるだけで思いは繋がる。
彼女らがずっとすれ違ってた原因は優しさと不器用さ。どちらもぼっちで中継する相手がいなかったことだ。
それが、今は俺だ。
俺が友達になることは少し厳しいものがある。でも人間同士付き合えば何の問題もない。
これが俺の至った結論である。
「異論は?」
「…明日、テスト終わったら本音を伝えてみる」
その言葉に嘘がないことを信じよう。
「あぁ、きっと俺より結城はお前を求めてるだろうよ」
「うん…ありがと」
半分泣いていた、何故か懐かしみを覚える泣き顔だった。
「ほれ、勉強すっぞ勉強。悪い点数取っちまったら言い難いだろ?」
「ねぇ…」
教材を取りに行こうとして立ち上がったところを裾を掴まれて止めてくる。この仕草もなんだか懐かしい。
「どした。俺はもうこのシリアス空間に耐えれる気がしないんだが」
頭ぐちゃぐちゃだ、勉強でクリアにしたい。
「なんで、そこまでしてくれるの?」
「…ふっ」
つい、笑いが込み上げてきた。
この問は、何度も何度も頭の中で繰り返してきた問だからだ。もしかしてこの2週間はこいつの答えを出すための時間だったのかもしれない。
森谷朱里を助けて、先生の心配をして、一人の男子生徒を助けるためだけに労力を使った。結城萌花の為を思っての発言行動もしていた…。もはやご飯の欲しさじゃ説明がつかないほどだった。
答えはひとつだ。
「知らねぇよ」
物事は知るべき時がある。
きっと中学の時に森谷朱里にこの話をしても信じてはくれなかった。
あの男子生徒を助けるための作戦だって事前に説明をしてしまえば失敗するのは分かってた。
きっと知るべき時が訪れる。それまで俺はこの問を頭の片隅に残して放っておこう。
だってそもそも、人類がいなくなればそんなの考える必要もねぇしな。
だから答えは、「知らなくていい」だ。




