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全ての人類に絶望を。  作者: うまい棒人間
君のための2週間
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最低最悪の相談

 放課後の部室で、綺麗な夕焼けとは裏腹に俺達は絶望に打ちひしがれていた。


「やべぇよやべぇよ…」


「どうするの…私たちにあんなの荷が重すぎるよ…」


 部長の件をこのテスト期間中にどうにかしなければ成績が大変なことになると言われた俺達は、お互いの事が分かってから初めて真面目に会話をしている。


「全く…山本先生はぼっちをなんだと思ってんのよ…」


「同感だ、てかそもそもコミュニケーション障害を持つ人はまず部長になれるわけないんだよなぁ」


 会話と言っても、お互いに愚痴をこぼし合ってるだけ。でも人はキレてる時一番本性が出てくるものだ、俺達は今本音で話し合っている。


「…ねぇ、どうするの?」


「…解決策は2つ」


 俺がそう言うと森谷朱里は真剣にこちらを見つめる、俺を頼りにするなんて…こいつもこいつで相当追い詰められてんな…。


「1つ、俺たち2人で部長する」


 これは、俺達が我慢すれば済む問題である。お互い嫌いあっているがむしろそれが今の俺達の一番の会話相手、1人なら越えられない壁でも2人なら…!


 日曜の朝やってるあの女の子が戦うやつだって初めはふたりで戦ってたって聞いたことがある。


 俺の考えに対して、森谷朱里は。


「論外ね」


 ため息ついでにそう吐き捨てた。


「なんで私の家族を殺したようなやつとこれ以上一緒にいないといけないの?」


 別に、俺が殺したわけじゃねぇんだけどな…。


 そもそも俺にはその十年前までの記憶が無い。


「でもお前の役目は俺の監視だろ?それじゃあ一緒にやった方いいんじゃないのか」


「それは…そうだけど…」


 力なく言葉を返してくる。痛いとこ突かれたみたいだ。


「2つ目は?それがダメならちゃんと考えるわ」


「初めから考えろよ…2つ目は新入部員だ」


「新入部員?」


 きょとん?と可愛げのあるポーズをとる、素が普通に可愛いからかそういう事されると可愛いと思っちゃうからやめろ。馬鹿なままのお前でいてくれ。


「そうだ、出来れば同級生がいい、誰かに入ってもらって部長になってもらう」


「いい案じゃない!流石やるわねこの姑息野郎!」


「フッフッフ、喧嘩売ってんなら買うぞコラ」


「い、今のは普通に褒めたの!ほんとほんと!」


 俺の剣幕に押されたのか急に慌てふためく、というか今のが素直に褒めたのだとしたら、こいつやっぱり何かイカレてる。人間性が欠如している。俺の方が人間に近いレベル。


「でも、それ厳しくない?私たちにそもそも人を誘うなんて出来る気がしないよ?」


「…それ、なんだよなぁ…」


 作戦2の問題点はそこである。結局のところ友達のいない俺達には人を誘うなんてスーパープレイが出来ないのである。絶対に出来ないのである。


「「はぁ…」」


 結局、何一ついい案が浮かばない、そもそもなんであの先生はこんなテスト期間中にこんな話を持ち込んでくるんだ、テストに集中出来ないだろうが。


 …はぁ、もうダメだ、先生の悪口しか出ないようじゃ今日は考えても仕方ない、諦めよう。


 物事諦めるタイミングが肝心だ、絶対に勝てない戦いをすることは「勇敢な行為」ではなく「ただの無謀」である。どっかの漫画でも同じような事言ってた気がする。


 ようは与えられた期間以内にその目的を完遂すればいいだけのこと、その期間は明日や明後日など、あるいは自分が死ぬまでとか、色々ある。


 今回はテストまでの2週間だな。


 そしてその期間以内に目的を達成すればいいのだ、何も今だけ悩む必要は無い。悩んで悩んで自分の脳が考えることをやめたなら、そこが諦めるタイミング。


 思考が止まった頭なんて、考えるふりをさせるだけだ。別のことに労力を使った方が効率がいい。


 別のことをしている時にいい発想が浮かぶということも結構あるからな。


 だから俺は諦める、頭の片隅にだけ置いて、今日からしっかり勉強するんだ。


 つまり何を言いたいかと言うと、息抜きは大切だということだ。


「さて帰るか…」


「そうね、今日は何考えてもいい案が出そうにないし…」


 さっきまで使っていた椅子と机を元の位置に戻して、帰宅準備だ。


 そう思って椅子から立ち上がろうとしたその時。



 コンコン



「なにィ!?」


「う、嘘!?もしかして…相談しに来た人!?」


 ここに来る山本先生はノックをしない、だからこのノックした人はまず山本先生ではない、となると相談しに来た人ぐらいしかありえない。


「クソ…テスト期間中なのに人来るのかよ…!?」


「なんて常識外れなのよ全く」


「森谷朱里、貴様がそれを言うか」


「ちょ、ちょっと待っててくださいね!」


 扉の奥の人に森谷朱里は静止をかけた、向こうの人は「わかりました」と返事をした。


 返事が来るまで待っていたあたり、なかなか礼儀正しい奴だと俺は思った。


 そして俺達の行動は素早かった、森谷朱里と初めてあった時のように椅子と机を用意するカーテンを閉め教室を半分に分ける、これで向こうからもこちらからも向こう側を見ることは出来ない。


「ど、どうしよう…初めてのお客さんだよ…!」


「…そういえばそうだったな」


 俺達が入部してから、客は一人も来ることは無かった、そもそも悩みなんて自分で飲み込むかカウンセリングを受けるか先生とお悩み相談すれば済む話なんだ、やはりこんな部活必要ない。


「は、入っていいですよー…」


 ガラリと扉の開く音が聞こえる、そして元気のいい挨拶が続けて聞こえる。


「失礼します!」


 声から察するにこいつは男だろう、しかもここまで元気がいい挨拶だと運動部の可能性が高い。


 心底関わりたくねぇ…!


「そこにすわ、座ってください」


「はい!」


 うわぁ、無駄にいい返事。向こうの姿は見えないがズズズと椅子を引くような音がしたのでおそらく椅子に座った。


「いきなりですみません、実は相談したいことがありまして…」


 向こうの男は急に話を始めてきた、急だったことでまだ心の準備が出来ていなかったからか森谷朱里の同様っぷりがすごい。


「な、なんでしょう」


「はい、実は自分…勉強のことで悩んでいて…」


「ふむ、勉強ですか…」


 会話はすべて森谷朱里が行っている、というか本来、こういう場に3人以上立ち会っちゃいかんでしょ。ということで俺は今回口を挟まないことにしている。


 てか、勉強程度の悩みで俺達の勉強時間奪ってんじゃねぇよ、悩んでる暇があるなら勉強しろ。


「正直、次のテストヤベェんですよ、赤点とってしまいそうで」


「ふむふむ…」


「そこで…オレは一体どうすればいいんでしょうか?」


「「は?」」


 え?なにこいつ、まさかそんな事聞くためにここに来たのか?


 ふむふむ言って頑張って雰囲気だそうとしていた森谷朱里もこれには絶句、冷や汗がたらりと流れるのが見える。俺だって流れてる。


 高校生にもなって、そんなこと聞く奴もいるんすねぇ…あな恐ろしや人間。



書き溜めました。あと二日持ちます、あとは知らん。

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