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全ての人類に絶望を。  作者: うまい棒人間
侵略者は頭を抱えて、疫病神は恋をする。
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深夜のお話②

これで番外編は終わりです。お疲れ様でした。

次からは本編をちゃんと書きますので今しばらくお待ちください。

 俺はロリっ子に家と反対方向の路地裏にまで引っ張られた。


 最近の女の子、腕力強すぎないですか?


「ねぇねぇ!もしかして魔法とか使えるの!それとも身体能力が凄まじいとかあるの!?」


「…くっ」


 正直に言っていいのだろうか…?でも、きっとこいつは俺みたいな存在をずっと信じてきたんだろうな、宇宙人はいるだとか魔法は存在するだとか。


 その夢を壊していいのだろうか…。


 俺みたいな存在を信じるということは、小学生でもバカにされる行為だ。わかりやすく言えばとある作品の言葉を使うと「ほんとにトトロいたんだもん」だ。


 そして俺の存在を自分だけが分かろうものならば、きっとこいつは今日の出来事を忘れることはない。そして今日の出来事と共にこれからを生きることになってしまう。


 そうなったらこいつはただの痛いヤツ、そして永遠に友達ができないままだろうな。


「まぁ、初対面のヤツにそこまで気を回さなくてもいいか…」


「どうしたの?」


「ん?あぁいや、なんでもない」


 こいつはまだ小さい。夢ぐらい見せてやってもいいじゃないか。


 さっきの俺の考えはこいつに理解者がいなかった場合の出来事、もしかしたら同じ思想を持つ人間に会えるのかもしれないしな。


「よし、今からお前に俺の異世界魔法を見せてやる、だが条件があるぞ?」


「じょ、条件って…?」


「まずお前は今から起こることを誰にも言わないこと」

 

「うん、分かった」


 即答、目に迷いが感じられない、むしろはよはよと俺を急かしているみたいだった。


 目が輝いていても生意気なところは変わらないようだ。


「はい!約束の指切り!」


 にこにこしながらその少女は俺に向けて小指を差し出してきた。


  「…なんだ?指切りって?」


 お前のその小さい指を切断すればいいのか?


「地球人は約束する時はこうやるんだよ!ほら異世界人さんも小指出して!」


「お、おう」


 小指を出すとその少女は自分の小指と俺の小指を絡めた。そして何やら怪しげな呪文を唱え始める。


「ゆーびきーりげーんまーんうーそつーいたーらはーりせーんぼんのーます!」


「は?」


「指切った!」


 最後に思いっきり指と指を切り離す。ていうかさっき恐ろしい事言ってたな、ハリセンボン飲ますとか拷問じゃねぇか。


 そしてこの少女は分かってんだろうか?俺は別に破る約束をしてないからどう足掻いてもハリセンボンを飲むことになるのはお前しかいないんだぞ?


 別にそんなこと教えても俺には何の得もないから黙っておくけど。


「よし、それじゃあ見せてやろう、驚いて腰抜かすなよ?」


「早く早く!」


 俺はグローブをつけて自分の魔力を引き出す準備をする。半分以上森谷朱里に持っていかれたが大丈夫だ、ちゃんと作動するし魔法が使えなくなった訳では無い。威力が格段に落ちて俺の身体能力も激しく低下したぐらいだ。


 それを致命傷と言うのだがな。


「いでよ!我が魔剣!」


 俺の掛け声とともに俺は自分の魔力を固めて剣の形にした。ちなみに俺の魔法は魔力を固めるだけなので掛け声とかそんなものは必要ないです。


「フッフッフ、どうだロリっ子、かっこいいだろう?」


 俺の中で渾身のデザインである。最近読んだ本の挿絵を参考にして作り上げた「えくすかりばー」さんだ!


「えぇ…?」


  盛り上がる俺を尻目に、このロリっ子のテンションはガクッと下がっていた。


「おい、なんだよその反応は、言いたいことがあるなら言ってみろよ」


「なんか思ってた魔法と違うんだけど…もっとこう、炎とか水とか出せないの?こんなのつまんない」


「ごふっ…!」


 こ、コイツゥ…痛いところつくじゃねぇかこんちくしょう。俺のトラウマを引き出しやがって。


 俺は魔力が果てしなく多い代わりに魔法が使えない。今行っているのは自分の魔力を固めて剣の形にしているだけ。これは魔法とは呼ばないのだ。


 たしかにこの世界の魔法といえばこの少女の言う通り炎とか水とか手から出るやつのことを言うのだろう。そう考えれば俺が見せたやつなんて地球人の言葉で言うと「月とすっぽん」とかいうやつだろう。


「はぁ…なんか思ってたのと違うからショック…」


 さっきまでの煌めく瞳はどこに消えたのか、最初にあった頃のくすんだ瞳に悲劇的アフタービフォーしている。


「なんかこう、ないの?炎がぼーん!みたいな?」


「…ごめんもう一回やって?」


「え?なんで…ぼーん」


「いや、さっきはすっごく体全体で爆発を表現してたじゃん、魔法にはその表現力が必要なんだよ、だからもう1回、いやあと3回やってくれる?」


 ちなみに嘘です。


「うう…は、恥ずかしいけど…!」


 俺の嘘にまんまと騙されて顔を赤く染め恥ずかしながらもこのロリっ子は手をギューッと握ってエネルギーを貯め始めた。


 深呼吸を1つして、爆発する。



「ぼーん!ぼーん!!ぼーん!!!」



 …そうだな、うん可愛い!それだけ!


 最初にあった時「こいつ嫌いだ…」とか思って悪かったな。こいつ可愛いなおい。


「ど、どう!出来そう?異世界人さん!」


 テンションが壊れたか、すごい目を輝かせながら顔を俺の顔と接触するギリギリまで近づけてくる。


 くっ!負けてられるか!俺にはレストちゃんがいるんだ!


 惜しかったな、俺にレストちゃんという妹がいなかったら俺が今まで出会ったちっちゃい女の子で一番可愛いのはお前だったよ。


「ねぇ!早くやってよ!魔法!」


「悪いな、あれは嘘だ」


「え?」


「表現力が必要なんだっていうの、あれは嘘だ」


 ロリっ子は硬直した。石のように固まった。


 動き出すまでにかかった時間は…数えてねぇよんなもん。


「ひ、酷い!」


「クックック、俺の魔法にケチをつけるからだ」


「むーきー!!」


 顔を真っ赤にして半泣きで俺にぽかぽか殴りかかってくる。いやぁなんと軽い拳だ、そのへん含めても可愛いなこいつ。


 これが森谷朱里だったら「ぽかぽか」じゃなくて。「ドゴォ!ドゴォ!」って感じだからな。今の俺じゃ死んでしまうレベル。


 何分か経ってようやく連続パンチがやんだ。心も落ち着いたようだし言葉も通じるだろ。


「悪かった悪かった、でも俺はこれしか使えないんだ、それでも汎用性高いんだぞこの力は」


「はんよう…?」


「使い勝手がいいってことだ、だからあんまり馬鹿にするなよ?」


 自分の非を認めたのか、ロリっ子は俯いて消え入りそうな声でつぶやく。

 

「…ごめんなさい」


「おう、ちゃんと謝れるのはいい子だ」


 俺から褒められたのが嬉しかったのか、にへらーっとした表情でえへへと照れくさそうに笑った。年相応な感じがしてよいよい。


「じゃあさ!異世界人さん!次は…」


 ぐぅー


 なにか言おうとしたロリっ子から間抜けな音が腹部あたりから聞こえてきた。


 顔を見るとまた赤くなっていた。


 腹減ってんのかコイツ…仕方ない、なんやかんやで寂しい夜をこいつのおかげで比較的楽しく過ごすことが出来た。お礼にくれてやるか。


「ほれ、これやるよ」


 俺はピザまんをこの腹ペコ幼女に与えた。


「あ、ありがとう…」


 そして受け取ってすぐに貪り尽くした。その間約…だから数えてるわけねぇって。


「ありがとうございました!異世界人さん…いえ、ししょー!」


「は?師匠?」


 急に何言い出したのこのロリっ子、頭に支障きたしてんじゃねぇの?それはもはや死傷だな。


 うん、つまらん。


「…急にどうしたの」


「いえ!尊敬する人にししょーと言って何がいけないのでしょうか!」


 尊敬…か、昔の俺から見れば師匠なんて呼ばれるなんて夢にも思わなかったな、落ちこぼれだったし。


 人間に呼ばれてるとは言っても悪い気はしない。むしろ頑張った自分が報われたみたいでいい気分だ。


「…そうだな、それじゃあお前は俺がこの世界にいる間俺の弟子にしてやろう!」


  「ほ、本当!?」


「おう、本当本当、人が嫌いで魔法に興味があり、そして何よりここまで慕ってくれるやつも珍しかったからな」


 まぁその理由は俺の友好関係の狭さにあるんだけどな…。

 でもこうして省かれている者同士集まるというのも悪くない。


「よし、それじゃあ弟子よ、今日のお話はこれまでだ」


「えー!?もっと聞きたい!」


「駄目だ、弟子になる以上いうことは聞いてもらうぞ?」


 時刻は4時頃、下手したら森谷朱里が起きてしまっている時間帯だ、もし起きてたら大変なことになってしまう…!


「むー…分かった、じゃあまた明日!」


「おう、また明日」


 そして名前も知らない俺の弟子は手をぶんぶん振りながら暗闇の中に消えていった。


 俺もまた、腰を上げて森谷朱里のいる今の俺の家に向かって歩き始める。


「名前、聞いときゃよかったな」


 夜に楽しみが増えた喜びからか、俺の心は少し弾んでいた。


 当たり前だった「家族」という存在に会えなくなって、俺は自分が思っていた以上に寂しかったのかもしれない。


 だから、俺は今とても嬉しい。


「家族がいなくなるって、こういうことなんだろうか…」


 帰り道、ふと森谷朱里の言葉を思い出す。


 彼女は家族を俺たちに殺されたと言っていた。


 俺はその言葉を聞いた時「俺達の方が多く殺されているから俺達の方が辛い」だなんてことを思っていた。俺達が被害者だと声を荒らげていた。


 恥ずかしい。


 戦争なんて、始まった瞬間からいいやつも悪いやつもいない。


 両方が加害者で、両方が被害者だ。


 家族がいなくなるという辛さを、今俺は少しだけ味わっているが、森谷朱里が感じている寂しさや孤独感はこれをはるかに上回っているだろう。


 俺は、何も知らないくせに彼女を否定していた。


 俺は、そんな無知な自分がとても嫌いだ。


 そんなことを考えていながら歩いて行くと、すぐに家にたどり着くことが出来た。真っ暗だった夜も、少しずつだが明るみを帯び始めている。


 家に帰ったといっても、これは始まりの「ただいま」エピローグだ。俺の1日はまだ始まったばかりなのだから。


 まだ起きていないことを願いながら、窓を開けた。


 さぁ、また長い一日が始まる。

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