集結し終結する勘違いのお話
やっちまったよ。
俺でもわからない、どうしてこんなに早く戻ってしまったのかなんて。俺は壊れた腕時計を見つめながら自分でも分からない気持ちに悩みんでいた。
「これが、人間か…?」
殺人鬼リンデンならばここは絶対に引いた。元の世界に帰って終わりだったはず。
だが、今の俺はリンデンじゃない。
「今の俺は林田真希、人間らしく意味のわからないことをさせていただく」
「えっ…ど、どういうこと?」
あぁ、結局こいつにはバレてしまうか。こうなったらもうこいつと取り引きをするしかない。
「後で説明するから、今は黙って見ててな」
「う、うん」
結局こいつは林田真希にとって捨ててはいけない大切な人間だったということだ。しかも涙まで流すってんならしょうがない。
それにしても異常だ、こいつとは会ってまだ二日しかたってないって言うのに、俺のこの感情は何年も一緒にいたようなそれに近い。
まぁ、これまで生き物の付き合いなんてなかったし、珍しいことだから過剰に反応してるだけなのかもな。
「あっ、危ない!」
「ん?」
森谷朱里が叫んだ、俯いて考え事をしていたから分からなかったが前を見てみるとロボットが残った左手で殴りかかってきていた。
やばい、と一瞬思ったが右腕をぶっ飛ばしたからか動きが遅い、これならふせげる。
奴のパンチを俺は右手で軽く受け止める、やはりさっき俺が吹っ飛ばされたロボットより威力が全然ない。
「終わりだ」
余った左手から魔力を出し剣の形に変化させそのままロボットを真っ二つに一刀両断切り裂いた。
「ふぅ…」
戦いは終わった。さぁ、ここからが問題だ…。
✖✖✖
「…」
森谷朱里は俯いて何も言わなかった。
意外な反応だな…こんなの見たら驚くぐらいな反応を見せると思ったんだけども。
「おい森谷朱里」
「…」
返事がない。なんか嫌だなこいつってこんなやつじゃないだろ、もっとうるさい感じの鶏みたいな奴だろ。
「悪いな今まで隠しててな、でもこっちにも事情があるんだ、取り敢えず俺の話を…?」
なんか手に変な感触が、と思って手元を見ると何故か森谷朱里が俺の手を握っていた。
ただ何故だ?なぜ両手を掴む必要があるんだ?
片手だけならまだわかるけど…、俺にはどうもこの場面で両手をつかむ理由が分からない。これも人間だからで済まされる問題なのか?
「おい、どうし…!?」
俺は慌てて握っている手を振りほどいた。そしてバックステップで距離をとる。だが思うように体が動いてはくれなかった。
理由は、今分かった。この女が原因だ。
「流石ね、林田くん…いえ、なんて呼べばいいのかしら?」
「こっちのセリフだ、お前は一体何者だ?」
くそっ、体がだるくて重い、さっき手を掴まれた時にどうやら俺の魔力が一気に持っていかれたらしい。俺の残量からして軽く半分は消し飛んだ。
…そういえばどっかの誰かが言ってたな、魔力を奪い取られたとしてもその魔力は自分の物、所有権は変わらない。だからその魔力を使わない限り俺の魔力は半分のままだという事だ。
しかも、俺の魔力は俺しか使えないものであるため消費そのものが出来ないのだ。
これは俺だけに大しての問題だがこの魔力を吸い取る力、この能力は俺たちに対抗するために編み出された力と言っても過言ではない。
自分の頭の中で整理する。考えがまとまった時を見越していたのか森谷朱里はふらっと膝をついた俺に鋭く冷たい目線を向けて怒りのこもった口調で叫んだ。
「遂に見つけたわ…この地球の敵!エイリアンめ!」
その叫びは、俺のレオルドに対しての叫びと似ていた。
こいつも、なにか譲れないものがあるのだろうか。でもそれは俺には関係の無いことだ。
「森谷朱里、おまえに何があったかなんて知らないし俺は関係がない。だから俺の魔力を返せ」
「関係がない…ですって…!?そんなことあるわけないでしょ!私は覚えているの!10年前にさっきのアンタが使ってたような力を使って来る奴らが私たちの家族を殺していったのを!」
「…なに?」
…10年前、こいつらの世界の10年前というのは俺らの世界の10年前とは限らないのだが、その出来事には覚えがある。
「確かに、俺たち魔術師は俺が来るより前に1度、地球に降り立ち戦争を起こそうとした…」
俺の言葉に反応し、俺に人差し指を向けて森谷朱里は叫んだ。
「そうよ!その時に私の家族はあんた達に殺されたのよ!私達の平和を奪ったのよ!」
だがその言葉をまさか人間から聞くなんて、思ってはいたが思いたくはなかった。
「…平和を奪った…?」
これだから、俺は人間が嫌いなんだ。
何も見てないで、何も知らないで、自分が被害者だとそう言い切る。自分に存在するかもしれない原因を見つけ出そうともしやしない、そんなの自分にとっての都合のいい真実をただ信じ続ける思考に絡め取られた奴隷だ。
こいつらは、俺達がどうして地球人を滅ぼそうとしているのか知らない、なぜそんなことをしなければならないのかおそらく考えたこともないのだろう。
俺達は何度も忠告したんだ。だが人間共はそれを無視し続けた。聞かないんならもう実力行使しかないんだ。
「…だ」
「何よ!」
「先に奪ったのはお前らだ!!」
「ど、どういうこと?」
さっきまでの俺を殺すぐらいの勢いは少し衰えている、俺の剣幕に押されたのだろうか。だがそんなことはもはやどうでもいい。
「…お前らの世界と俺たちの住む世界は、言ってみれば裏と表そのもの、お前達が楽をすれば俺達が苦しみ希望を持てば絶望する。だが俺達は楽をすることが出来ないんだ」
「…?」
「介入できるのはお前達が住むこの世界だけで、俺たちからは何も出来なかった」
「介入って…?」
「この世界が生み出すマイナスエネルギー、つまり人間に対して害のあるものの殆どが俺達の世界に送られる」
「…嘘」
驚いたような怯えたような、そんな表情で弱々しく否定した。だがなんで嘘なんてつく必要があるんだ?
「続けるぞ、そしてそのマイナスエネルギーって言うのはお前達人間が生み出しているものなんだ」
第一章も残すところあと一話となりました。これからも頑張って書いていこうと思います。




