落ちこぼれの戦い
「魔術師」と言っても、魔法しか使わない非力、という訳では無い。
「魔術師」が不思議な力を覚えたのは、接近戦に限界を覚えたからだ。
そしてそこから俺達の戦い方は距離をとって戦うものへと変化した。
だが、それは優れた力を持つものだけに与えられた特権のようなもの。センスのない者は今まで通り接近戦に応用するようになった。
その戦い方を最初にあみだした奴が、レオルドである。
そしてそれは落ちこぼれの魔術師に希望を与えた。
そして、奴はその希望とともに、消えていった。
✖✖✖
「タンク」
これが俺のあだ名だった、まさにそのとおりだったと思う。
俺は魔法を放つ時に使うエネルギーのようなものの量が半端じゃないほどある。だからこそ俺は自信を持って魔法の訓練を行った、自分が強くなることがほとんど確定していたようなものだったから。
でも、俺は力を使えなかった。
他の人は炎を出したり、水を出したりする中、俺は何一つ力を出せなかった。
どうやらこの力には「種族」というものがあるようで、その種族ごとに発生する力が違うらしい。
赤なら炎、青なら水、黄色なら電気。というように分かれている。そしてその色が濃いほど力は強い。
だが俺は、色と言えないほど薄い、とても薄い黄緑のような色をしていた。当然力は何も発生しなかった。
俺はただ力を持て余してる「タンク」と化したのだ。
悔しかった、悔しくて悔しくて、俺は1人で頑張って特訓した。それでも力は出てこなかった。
そんな時に俺に新しい戦い方を教えてくれたのがレオルドだったのだ。
そしてその特訓で、俺は自分の能力を理解し、強くなった。
だか、一番褒めて欲しかったその男は、既にこの世界から消えていた。
俺は、それが一番許せなかった。俺が強くなったところを一番見て欲しかったのに。
✖✖✖
「おい、レオルド…」
「なんじゃ?」
「お前、俺の力を知ってるか?」
「知ってるとも、タンク、じゃろ?」
…やっぱりな、こいつは俺が自分の力を理解する前にいなくなった。だから俺の力を知らない。好都合だ。
「それがどうしたのじゃ?」
「いや?知ってたら、こんなことにはならなかったのにな、と思ってな」
「?何言ってるか知らんが…これで終わりじゃ!!」
レオルドの声に反応し、7体のロボットが俺に向けて一斉に腕をこちらに向ける。
「…時間掛けすぎだ、さっさとバルカン弾ぶち込めばよかったのに…」
俺はポケットにしまってあったグローブを取り出して装着する。これで、俺の勝ちは決まった。
やつの勝ち目はひとつだけだった、俺がこのグローブをつける前にバルカン弾をぶち込めば良かったんだ。
やれる時にやらないと後悔する、それを今から見せつけてやる。
「さらばじゃ!リンデン!」
ロボットが一斉に砲撃を仕掛ける、7体の同時砲撃、が襲いかかる。
逃げ場をなくすためだろうか、今回の砲撃は奴らのいでの向き的に7体全員俺を狙ってはいない。
広範囲にここまで撃ち込まれてはまず躱すことは難しい。レオルドは俺が傷ついた状態でも何かあると踏んで弾幕を俺にだけに集中させずにしたのだろう。
「好都合だ」
俺の両手のグローブが淡く白く光る。そしてその光は形を変えて剣となった。
「なっ…!?」
レオルドが驚いた顔をした。そうだよ、俺はずっとその顔が見たかったんだ!
「ウラァァァ!!」
両手の剣で俺に当たると思われる弾丸だけを切り飛ばす、ある時は躱し、ある時は切る。それを繰り返し少しずつロボットへの距離を縮めて行く。
いくらバルカン砲と言えど残弾数に限りはある。一瞬リロードするはずだ。しかも奴らは同じロボット、残弾数は同じだと思う。
それまでひたすら斬る、斬る、躱す!
「な、なんじゃ?あの力は…?」
「よし、攻撃がやんだ!」
俺は全速力でロボット目掛けて突っ込む、それと同時に剣はまた光となった。
そしてその光はまた形を変えて短剣になった。
そう、俺の力は「形態変化」自分の力の形を変えることの出来る能力だ。俺は今まで能力を使うための力を引き出すことが出来なかったが、それは俺の作ったこのグローブによって解消できた。
このグローブはつけているだけで魔力が自然にたれ流れる道具だ。本来これは力を常に放出した状態で戦うという特訓用の道具だった。
通常の魔術師ならばこれをつけたら2、3分でぶっ倒れる。だが俺はこれに改良を加えて必要な分だけ魔力を出し、蓋を蓋を出来るようにした。
そしてそのたれ流れた魔力を「形態変化」させ、俺は今剣を作ったというわけだ。
固くすることも、色を変えることも出来る。
これが、俺の能力だ。
「くっ…!リンデンを止めるのだ!」
もう遅い、その指示通りに動く前にロボ共を潰す。
「3、4、5」
1体は胴を切り裂き、1体は頭を潰し、1体は体を真っ二つに切り裂く。一瞬で3体を葬り去った。いやロボットだから葬り去ったというのはおかしいか。鉄クズに変えてやった。
「おのれぇ…!」
残り4体のロボットのリロードが完了したらしい、腕をこちらに向けてきた。腕の向きからして確実に全員俺を狙っている。しかもご丁寧に奴らは一直横並び。
「壊してくださいってか?」
だが流石に同士討ちを警戒しているようで一番端のやつは崖のギリギリに位置している。横並びだからといってさっきみたいなロボ同士に撃たせることは出来ない。
じゃあどうするか?簡単だ。
「俺はタンクだって言ったろ!」
手を天空に掲げ、次に作るのは…。
「な、なんじゃあありゃ!?」
「全員まとめて叩き潰す」
作ったのは巨大なハンマー。バルカン弾射出の前に奴らめがけて振り下ろす。
「オッルァァァァァァ!!!」
ドスン…。と無情な音が響く。ハンマーを魔力に戻すとそこには綺麗にガラクタと化した元ロボットが並んでいた。
「さて、終わりだなレオルド」
「くそぅ…!」
どうやらレオルドはあのポンコツロボットで本気で俺を倒すつもりだったらしい。いくら弱かった俺しか見てこなかったとはいえ流石に舐めすぎではないだろうか。
「最後だ、俺の話を聞けレオルド」
「…最後になるつもりは無いが、なんじゃ」
「俺は、ここまで強くなったよ。あんたのおかげでな」
確かにこいつは裏切り者だ、今更こいつを殺すことに何のためらいもない。でも俺の師匠だ、一言欲しいんだ、こいつの口から一言だけ、褒めて欲しい。
「ありがとうございます、師匠」
「…あぁ、よく頑張ったな…リンデンよ」
「うん、それが聞けただけで満足だ、じゃあな、死んだらカマキリにでも生まれ変わってな、飼ってやる」
「…ワシはなリンデン」
「なに?」
「ここでお前と会う前にに1人の人間と会った」
…?いきなりどうしたんだ?この爺
「おい、それがどうした」
「ワシは見つからないように走って逃げた、そしてその時に不覚にも転んでしまい、お前のところに落ちてきたというわけじゃ」
「……」
「そいつは誰かを探していたよ誰かの名前を呼びながらな」
おい…。
耳を澄ますと後ろから声が聞こえてきた、やけに聞き覚えのある声だった、
「確か…なんて言ってたかな…?」
なぜ来る?来んなっつったじゃねぇか、
「林田くん林田くん、と言いながらな」
「くっ…!!」
間違いない、森谷朱里だ、あいつ俺を追いかけて来たんだ、きっとさっきまでの戦いの音を聞いてもうすぐそこまで来てる、どうする、こいつを殺して死体を隠す暇がない…!
落ち着け、落ち着きながら素早く頭を回せ!
取れる行動は2つ。
①こいつを置いてここから逃げる
そうすればまず俺は平気だ、森谷朱里とは後で落ち合えばいいしレオルドだって人間との接触は避けたいはず、ここから逃げてしまうだろう。
だが、おそらくこれを逃せば奴とはもう接触するのは難しくなる。
②森谷朱里を殺す
それならこの場は切り抜けられる。目的を果たし、甘い自分にもケリをつけられる。
…でもダメだ!結城萌花がいる!
最後にあった人物として俺が疑われる可能性が高い!そうなったら準備が足りない状態で地球と戦うことになってしまう…流石にそれは危険だ。
くそ…どうする…、もう時間が無い…!
そろそろ1章が終わる…かな?




