意外な再会を果たし、ただのポンコツに成り果てる
熊にあったら死んだフリ、熊と出会った時の対処法はそう言われている。
だがそれは間違っている。根拠はあるぞ?
たった今、失敗したからな!!
やはり実体験に勝る学習はないと思う、習うより慣れろ、百聞は一見に如かず、偉い人の残した言葉だ。
そんなこんなで俺は熊から逃げ続けています。
いやね、熊を倒すことは出来るのよ、ただ初めて熊に出会ったからビビったというか……。
「つ、次は大丈夫だ、次会ったらぶっ殺してやる」
取り敢えず俺に牙を向けたことを後悔させてやらなければなるまい……まさかこの地球に来て初めての殺しが熊とは。
「もしかして俺って相当運が悪いのでは無いだろうか?」
自分でそんなことを思いながらいやまさか、と自答する。そんなことあるはず……ないよね?
もやもやが残る中、俺は裏切り者より先に熊を探すことにして、周辺をがさがさと歩き始める。
問題は時間だ、夜というだけあって暗い。視界が悪ければ勝率は下がる。殺すにしろ逃げるにしろ早くしないといくら俺でも手こずるかもしれない。
さっさと見つけて潰す、そしてその後改めて裏切り者を探す。
決意を固め、俺はまた森の中を進む。
✖✖✖
「……」
…外に出れてしまった。
適当に歩いてたらこの雑木林のそとに出ることが出来てもうた。
つまりだ、最初っからこの一帯には魔法なんかかけられてなかったということで……。
「俺はただ迷ってただけかよ!!」
怒りのままにずっと握りしめていたペットボトルのキャップを思いっきり地面に叩きつける。クソが!!
あんな真面目に考察していた俺を殺してやりたい、楽にしてやりたいいいいい!!!
結局、裏切り者を見つけることも熊に復讐することも出来ないのか……。
「はぁ……」
全てを諦めて自分の住む世界に帰ろう……。なんかもう、今日はダメだ、ダメな日だ……。
腕時計の力を使って、自分の世界に帰ろうとした、まさにその時だった。
「た、助けてくれぇぇぇぇぇ!!!!」
「え? ごふぁ!?」
俺の後ろからいきなりがさっと音がしたと思って、振り向いた瞬間に見覚えのねぇ爺さんが転がり落ちて俺に衝突してきた。
何を言ってるのかわからねぇと思うが、俺も何言ってんのかわかんねぇ、意味不明な状況に巻き込まれて今までのイライラと合わせてもう頭がパンクしそうなまである。とにかく俺はそのままその爺に押しつぶされてしまった。
「す、すまん、大丈夫か少年」
に白鬚、まさに見るからに爺さんと名乗るにふさわしい
「大丈夫だと思うかよ爺さん……くっそ、あいつに踏まれたところもろに打った……痛い……あっ!?」
こ、壊れたか!?今ので!?
この爺さんにつぶされたときにこの腕時計を思いっきり地面にたたきつけちまった。俺は急いで壊れてないか確認してみる。
「ん、んー……よくわかんね……」
「どうしたのだ? もしかして今のでその時計……壊してしまったのか?」
このじじぃ……人が必死に元の世界へ帰るための往復切符がまだ使えるかどうか検討してるっていうのに、アホズラをひょっこり出してきやがって……近いんだよ、その距離を保っていいのは俺の妹並みにかわいい女の子だけだ。つまり妹だけだ。
「あー……気にしないでください糞爺、別にお前のせいで壊れちまったじゃねぇか地獄に落ちて俺に詫びろなんて思ってませんから、だからせめて地底にお戻りになってください」
「意味は同じだと思うんじゃがのう……」
ほう、この爺なかなか察しがいいじゃんか。
「ま、かしてみぃ、幸いわしは機械に強い。こんなもんすぐ治せるわい」
「え? まてちょ、ちょっとまてよ爺触んなぶっ殺すぞ老い先短いんだから残りの人生楽しく歩もうとか考えないの?」
「く、クソウザいガキじゃのう……直してやると言ってるんじゃから従え……」
「チッ」
くっ、無理やり取られた……。
なんだろう、ここまで初対面の奴に悪口吐いたの初めてだぞ……? ま、そこまでイライラしてるってことだろうな。
このスーパーマシーンもただの人間から見れば時計以外の何物でもないしな。どうせ直らないんだからさっさと諦めて返しやがれよ。
の思いもむなしく、この爺さんは嘗め回すように俺の時計をいろんな視点でじろじろ見つめる。
「この時計……」
何かに気が付いたように驚いた顔で今度は俺の顔を見つめてくる。
「どうした爺さん?」
「いや、そうではないが、フッ……そうか、なるほどのう……」
「はぁ……?」
俺の顔を見て不敵に微笑み、また時計と向き合う。さっきまでのしかめっ面が変わり、少し穏やかな表情になっている。
「……んん?」
……というか待て、普通に秒針動いてんじゃねえか、時計としては壊れてないのにこの爺さん何見てんだよ、ボケすぎだろ。
何時気がつくかな…なんて考えているうちに、時計は俺の目の前に渡されていた。
「ホレ、特にどこもやられておらんかったぞ?」
「ケッ、気づくのおせぇよ爺秒針普通に動いてたじゃねぇか」
「ほっほっほっ、今度は大切にしなさいよ? これがないと、お前は元の世界に帰れないんだろう?」
……は?
「なぁ、おい爺、お前今なんつった?」
「なんじゃ、若いふりして難聴じゃのう、もう一回言ってほしいか?リンデン?」
「!? て、てめぇ…!?」
俺は慌てて距離をとる。まさか、顔をここまで変えてくるとは思わなかった、もはや俺と話していたころの奴とは声も体つきも顔も何から何まで違う。そうか、今目の前にいるやつこそが。俺の捜していた男。
「さっきお前は気づくのが遅いよといったな? その言葉、そっくりそのままおぬしに返してやろう」
「ケッ、ムカつく爺だと思ってたらそういうことだったのか、納得したよドクターレオルド」
「ふん、わしもムカつくクソガキじゃと思ったよ。まったく、昔はあんなにかわいかったのにのう…」
「て、てめぇ…どの口が…!」
こいつのせいで俺たちの世界は…お前の裏切りでどれだけの人が悲しんだか…!!
もうこいつと話す時間は必要ねぇ、ぶっ殺してやる、死んで償え!
俺が奴にとびかかろうとした瞬間だった。
「待て、リンデン!!」
「あぁん、なんだ命乞いか?」
「違う、お前に忠告してやろうと思っているのだ」
忠告? 所詮命乞いの一種だろ、でもこいつと俺は昔は仲も良かったからな……仕方ない。
…まぁ、あんたを殺すことなんて一瞬で足りる、聞いてやるよ、最後の言葉だ、必死に選びな」
「…もし、ワシを殺そうというのなら、それで構わないがもしワシを殺すのであれば、殺したらすぐに元の世界に帰るんだな」
……は?
そ、それだけか?てっきり命乞いでもするのかと思ったよ」
「あぁ、それだけだ、なぜなら命乞いなどする理由もないからな」
「まぁ、そうだな、どっちにしろ俺はあんたを許しはしない、何を言っても無駄だからな」
「そういう意味ではない、ワシはまだ、ここでは死なんからな」
「あ? 何言ってんだお前?」
「……若造が、ワシを簡単に殺せると思うなよ?」
ニヤリと、奴が笑って、ポケットから取り出したリモコンのスイッチを押した。
「来い! 我が兵隊よ!」
暗い森の中からガササッ、と何かが飛び出す、月の光によって怪しげな黒い光を放つ二足歩行のロボットが現れ、俺の前に立ち塞がった。
「ひぃふぅみぃ……8体か、上等だ!!」
だがそれがどうした、今となってはそんなこと関係ない。憎いから殺す、嫌いだから潰す、気に入らないから叩きのめす。逃れられぬカルマに従って、俺は今からこいつを潰す!
「その兵器で、平気な顔してられるのも今のうちだぜ!」
「上手いことを言うようになったじゃあないかリンデン! 殺しはしない! 半殺しにして元の世界に戻してやる!!」
暗い暗い夜に、俺の地球での初めての戦いが始まる。不思議と身体は高揚していた。
レート1500に戻したので今年中になんとしても次の話出します。




