生命の危機を覚えるが、どうも彼女を傷つけたくない
ごめんなさい…ポケモンとデュエルリンクスのせいでとても遅れました…きっとこれからも遅れると思います…
これはまずい…!!
今思えばこいつは15分だけしかお前と付き合えないということを事前に説明していなかった…!!
「ふぅ、以上です!ちょっと長い時間取らせてしまいましたね、すみません」
既に俺が結城萌花と行動を共にして30分が経過している。15分の遅刻だ、絶対にあの女怒られるよぉ…!
「さぁ!次はこの作品です!」
実はね、たしかに俺は結城萌花の漫画の説明に興味津々で聞いていた、でも時間を守らないほどの屑ではない。
ちゃんと時計を見て時間を確認していたんだ。でもね…なんかさぁ…。
「あ、ど、どうしたんですか!顔色が少し悪いような…」
メッッッチャ楽しそうにテンション上げて説明してくれるんですよこの女は…!
その中でさ、「時間だから、じゃあね!」なんて言えるか?俺は言えなかった。結城萌花に悲しい顔をして欲しくなかったんや…。
彼女と一緒にいるとなんか心が安らいで心が優しくなるんだよなぁ…。
初っ端からミスってたんだ、「急いでる」だけじゃなくて正確な時間を設定しておくべきだった。いや、でもあの女と一緒にいるから、なんても言えないかな…。
つまり俺は最初から積んでたってわけか…。
俺は結城萌花の笑顔と森谷朱里の笑顔を天秤にかけて、結城萌花を取ったのだ。
森谷朱里にはマジで申し訳ないと思ってる。この際どんな罰でも受けるつもりである、それぐらいのことを俺はしてしまった。
「も、もしかして、つまらなかったですか!?すみませんでしたぁぁぁぁ!!」
うおっ!?なんだか俺が返事ちゃんとしなかったせいで
「ちょっ、ちょっと待ておい!土下座なんかするんじゃない!!恥ずかしいだろうが!」
「ずびばぜんっ!土下座じでずびばぜんっ!」
「土下座について土下座すんな!面白かったから!面白かったからァ!」
床へのヘッドバッドが停止して、彼女は顔をあげる。
「ほんと、ですか?」
「おうおう、俺が考えてたのは別のことだ、気にすんな!な!?」
わかったから泣くな!頼むから泣くな!
「よ、よかった…嫌われたのかと思った…」
ほっと、胸をなでおろす、落ち着いてくれたようで何よりだ。
さてと、そろそろお別れしないとまじであの女に殺されかねん、もうちょっとここにいたいという思いはあったが、背に腹は代えられないように、命が一番大事なんだ。
「あー…なぁ、結城萌花、実はな…」
「あのぅ、な、なんでフルネームなんですか?」
二人とも、やっぱり気にするところはそこなんだな…。別にフルネームで呼んでもいいじゃんか。嫌いなわけではないし。
「いやなのか?」
「い、いえ、いやというわけではなくてですね?なんかなれない呼び名だったので、ちょっと困惑しちゃったというか…」
うんうん、ちゃんとどうしていやなのか説明するというのはいいことだ。あの女にこの子の爪の垢を煎じて飲ませてやりたいぜ。
「じゃあお前はなんて呼ばれてたんだ?」
また彼女の体がびくっと跳ねる。やばい、なんか地雷でも踏んじまったか…?
「ふ…ふふふ…林田くん、なかなかひどいこと聞くんですね…いいですよ、教えてあげましょう。私が言われて嫌だったあだ名ベスト3を!!」
なんだか彼女が燃えているっ!漫画とかアニメの話以外で燃えている!?
でも、なんか冷たい炎だ…理由は分かってる、わかってるよ…。
「わかった!もういい…やめろ…こっちまで泣きそうになってきた…」
泣きながらそんなこと言うなよ…ごめんな…人の気持ちがわからなくてごめんな…。
「…友達がいない人にそんな質問しないでくださいね…」
「心得た」
肝に銘じておこう、今回悪いのは間違いなく俺なのだから。
「じゃあ名字でいいか?結城さんでどうだ?」
「はい、別にそれで構いませんよ、私も名字で呼んでることですし」
ここ!これがあの森谷朱里とこの女の子の違いですよ!俺は森谷朱里のことが嫌いでこんなこと言ってるんじゃないぞ?この結城萌花という人間があまりにも森谷朱里を凌駕しているということを伝えたくてだな…。
「結城さん、実はな、俺今日ある人間と一緒にきて待ち合わせしてるんだわ」
「え!?じゃあもしかしてもうその時間を過ぎてるんですか!?」
そうです、なんて言った日にはこの子は泣きわめくだろうから今回は優しい嘘をつくことにしよう。ダメなのは人を傷つける嘘であり、人にプラスに働く嘘ならきっとついていいと思ってる。
「…あと5分なんだわ」
「よ、よかった…」
さすが優しい俺である。彼女を傷つけることは許さない。でもいつかこの人も殺さないといけないのか…。
そう思っちゃいけないから、学校ではぼっちを貫こうと思ったんだがなぁ。
森谷朱里といい結城萌花といい、なんかこうこの2人はほっとけない。何故だろう?
「と、言うわけだ、今度こそじゃあな、明日楽しみにしてるわ」
くるりと方向転換し、殴られる覚悟と共に俺は集合場所に向かおうとする、が。
「待ってください」
今度は制服を引っ張られて動きを止められた、こころなしかさっきの引き止めより力が強い。
「わ、わたしも行きます!」
「やめとけ殺されるぞ」
俺がな。
「…えっ?一体誰と待ち合わせしてるんですか…?」
正直に言っていいのかな…、まぁ、問題ないか、クラスでも俺と森谷朱里は仲がいい扱いになってるし。
「同じクラスの森谷朱里って奴だ、知ってる?」
「お、同じクラスの人の名前ぐらいは知ってますよっ」
「そいつと待ち合わせしてんの」
「そうなんですか、学校でも仲良さそうでしたしね、もしかして…!」
ぼっ、と彼女の顔が真っ赤の染まる、何を考えてるんだこの女は…?
「悪いが、お前が思ってる事じゃないと思うぞ…?」
「本当ですか?《バキューン》とか《ズギューン》とかしてないですか?」
「…」
この瞬間、俺の彼女に対する評価が下がった。
この女はこの公共の場でどうしてこんなことを言ってしまうのだろうか。羞恥心というものがないの?馬鹿なの?俺の周りには馬鹿しかいないの?
類は友を呼ぶらしいな…。
でもその考えだと俺も馬鹿になってしまう、そんなことは許されない。認めてなるものか。
「…そういう訳だ、じゃあね」
「お、お願いします!謝りたいんです!連れてってください!」
半泣きで服をグイグイ引っ張る。グイグイ来るねぇ…ええい!伸びるだろやめろ!
とりあえずここでこんなことしてても時間の無駄だ、仕方が無いからこいつも連れてくか、言い訳にはなるだろうしな。
「しょうがないな…いいぞ」
「!?…ありがとうございます!!」
なんだ?なんか今こいつの顔がいきなりぱぁっとなったんだが、同行を許されたのがそんなに嬉しかったのだろうか?
まぁとりあえず、向かいますかあの女の元へ。




